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地下帝国
しおりを挟む中央装置を明るく灯すと、沢山のボタンの上に付いている蛍光塗料が光った。
装置横にあるクリップボードには、チェックリストが挟まれていた。
そこには国中にある防犯カメラの映像チェック欄と、重要監視A.B.Cというチェック欄の項目があり、リストの下には日付と名前が書かれていた。
「このチェックリストの日付は、1年くらい前から書かれていないようね。」
彼女は、チェックリストをランタンで照らしながら、陛下に近づく。
「あぁ。ここはどうやら、国中を監視できるセントラルタワーだったようだ。この【重要監視A.B.C】というのは、一体どこを指しているのか、国内を全く把握できていない俺たちには、検討もつかないな。」
彼女は、中央装置を右から左に、ランタンで照らしながら、装置の上を観察する。
「こういう重要装置には、蓄電能が備わっているはずだわ。監視カメラを使って、国の様子を確認していけば、魔法を使わなくても何かわかりそうね。」
彼女はそう言って、200個以上あるボタンの上に書かれている小さな文字を一つ一つ埃を払いながら見ていく。
陛下は何も言わずに、彼女からランタンを取り、代わりに中央装置を照らす。
「あったわ。」
彼女は、蓄電出力ボタンを押すと、中央装置が『ジーー』という鈍い機械音を出しながら、作動する。
途端に、シースルーであった周囲のガラスに、国中の監視カメラの映像が、1000箇所くらいに隅々に敷き詰めて映し出されて、代わる代わるにいろんな場所の映像が映った。
「映像の街の中はお祭り仕様…ということは、これは現在の街の中の様子のようね。」
「あぁ。だが妙だな。防御を強みとするガーゼアの国王が、この監視システムの場から立ち退き、城の中はもぬけの殻とは。国民を監視する必要はなくなったのか?」
2人は思考回路を巡らせながら、数秒ごとに変わる、監視カメラの沢山の映画を目で追う。
「そうね。この国の国王と兵士や、あなたの兵士たちは、一体どこに雲隠れしているのかしら。」
中央装置のボタンは、同じ大きさで均一に並べられていて、真ん中にはパネルが付いていて、現在映し出されている映像の停止や拡大ができるようであった。
彼女は、もう一度ボタンを見直し、パネル横にあるAとBとCと小さく書かれているボタンを見つける。
「ねぇ、さっき見たチェックリストにある重要監視ABCらしきボタンを見つけたわ。押して見るわね。」
「あぁ。」
彼女は、Aと書かれているボタンを押す。
そうすると、山国にある巨大なシャルターの入り口のような場所の映像が大きく一面に映し出された。
シェルターの入り口には、兵士20名ほどが正方形状で内側に背中を向けながら立っており、バリア魔法を張っているようであった。
シェルターの入り口は、地上に大きく突き出していて、横縦10メートル位である。
シェルター前にある木の上に監視カメラが設置されおり、シェルター前の様子がよく伺えた。
「これはシェルターか?地下に何か隠しているのか。木が周りを囲っているということは、国の1番奥にある山岳地帯のどこかだな。おい、シェルターの入り口を拡大しろ。」
「えぇ。」
シェルターの入り口の頑丈そうな扉には、【開閉時間①6時②18時 それ以外に開けると防犯音作動】と書かれていた。
「シェルターは1日2回しか入れないようね。それ以外の時間に無理に入ろうとしたら、防犯ブザーが鳴って、相手に勘づかれる可能性があるわね。」
「あぁ。この城に王が居ると踏んでいたが、どうやら本命は地下のようだな。城では魔力を発していないし、街に紛れていた粒子の微魔力は他の魔力に紛れていただろうから、まだ俺たちの侵入には気づいていないだろう。明日の開会時間の6時向けて、魔力を使わずにシェルターの所まで移動するぞ。」
「えぇ。ところでBは何かしら。」
そう言って、Bと書かれたボタンを押すと、国境付近が映し出された。
「なるほどね。じゃあCは…。」
Cと書かれたボタンを押すと、生贄台が映し出されて、心臓のところだけ穴が空いた身体が台の上に転がり落ちている映像が映し出された。
陛下も彼女も、ジッと映像を見つめる。
どうやら生贄祭が執り行われ、心臓は観衆の前で身体からもぎ取られた様子であった。
「むごいな。」
「あなたも自国で、沢山奴隷の処刑許可を出して来たじゃない。」
彼女は冷たい言葉で言い放つ。
陛下は返す言葉を失う。
「生まれながらに決められている生贄の死へのカウントダウンと、20年後に起こりうる奴隷の死へのカウントダウン。死への恐怖の最終段階は、時間と共に現れる死の受容によって、恐怖は緩和しうるといわれているから、あなたのがむごい事をしているのかもしれないわね。」
「うるさい。奴隷制度は、俺が産まれる3000年以上前からあった。俺は魔力を持たない無能女は嫌いだが、趣味で奴隷を処刑しているわけではない。奴隷の処刑は、歴史ある国の仕来りでもあり、奴隷制度の強化にもつながる。処刑は仕方ない選択だ。」
「そう。でも、あなたは国王なんだから、いつでもその仕来りとやらは変えられるのよ。命は平等であって、仕方なく消される命はあってはならない。あなたが兵士の命を助けたいという、その命もまた平等の命。私はあなたを軽蔑視している訳ではなくて、繰り返されて来た間違った倫理観を客観視して感じたあなたの今の思いと照らし合わせて、改めて考え直したら、あなたの価値観も変わるかもと思っただけ。気分を害させてしまったのなら、謝るわ。」
そう言って、しばらく無言のまま、監視カメラのCの映像を見つめて、彼女は映像を国中の映像に戻してから、電源を落とした。
「シェルターに向かいましょう。」
そう言って彼女は、蓄電されていた大元の電池タンクを取り出して、エレベーターの上を開けて、エレベーターの主電力へ取り付けて、エレベーターを始動させた。
陛下も彼女の後に続き、エレベーターに乗り込み、下まで降りて元来たルートから出て、城を後にした。
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