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6 調教
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「口ごたえするな。ここにあるのは、性処理の道具だ。道具が喋るな。お前ら頭の悪い道具が喋っていい言葉は「ご主人様、嬉しいです」だけだ。言ってみろ」
「ご主人様、嬉しいです」
「そうだ。ちゃんと出来るじゃねぇか」
メロニスにしか褒められたことのないウェルニーは、嬉しくてちょっぴり気恥ずかしく、エヘヘとはにかんだ。
「馬鹿は道具くらいにしか使えねぇ。道具は馬鹿で愚かな方がいい。賢いのはうざったくて駄目だ。馬鹿は何も考えないから、簡単に支配できる。与えられるものを何の疑問も持たず受けるだけだからいい」
ウェルニーには難しくてわからない話だったが、ウェルニーみたいなのがいいと選ばれた気がして、ますます嬉しくなった。言うことをきけば、褒めてもらえる。
「ご主人様、嬉しいです」
「それだけをずっと言っていればいい」
「ご主人様、嬉しいです! ご主人様、嬉しいです!」
言葉の意味も考えず、嬉しそうに繰り返した。
「肉が付いてきてマシになった、馬鹿で愚かなお前にいいものをやる」
男に渡されたのは、先が丸く加工された木の棒だった。大きさ違いで、幾つかある。一番太いものは、ウェルニーのほっそりした足首ほどもあった。
「ありがとうござ……いっ!」
いいものと言ってくれたのだから、きっとそうなのだろうと感謝を口にしたら、肩を蹴られた。
「道具が喋るな言っただろ!」
仰向けに倒れたウェルニーの肩をめがけ、何度も踏み降ろされる。四つん這いで逃げようとすれば、足を踏み潰され、指の骨が軋んだ。
暴力以上に、体格のいい男が恐ろしかった。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「何度言っても分からねぇ馬鹿だな! お前が口にしていい言葉は一つだけだ!」
「わ、わかんな……痛い!」
「「ご主人様、嬉しいです」だろうが! この、低能なクズが!」
「ごめ……!」
「違うつってんだろ!」
「ご主人様、嬉しいです! ご、ご主人様、嬉しいです!」
ぼろぼろ泣きながら言えば、踏み降ろされていた男の足が止まった。
「最初からそう言えばいい」
「はい。ぎゃぁっ!」
容赦なく踏みつけられた。
「学習しねぇ馬鹿だな」
「ご主人様、嬉しいです!」
「ふん、まあいい。今渡したそれを、舐めてくわえろ。決して傷つけるな、少しでも歯を当ててみろ。テメェの細っこい手指がグチャグチャになるまで踏み潰してやる」
脅されて震えた。言う通りにしなければ、酷い目に合うと信じた。
藁の上に座りなおし、木の棒と向き合う。男は服を着ているのに閉じ込められた自分たちが裸でいるのも、閉じ込められた裸の男たちがほど動かずに幸せそうに微笑みながらいつも寝ているのも、何を食べさせられているのかも、張型を舐めなければならない意味も考えることない。
そういうもの、言われたから従わなければならないと、与えられる暴力に恐怖で震えながら、口に入りそうな一番細い木の棒をとる。
踏みつけられた痛みに、涙で顔をべちょべちょに塗らし、ペロリと舐めた。ほんのり木の味がするだけで、何というものでもない。
わけも分からず舐めていたら、色々と説明された。いっぺんに言われても、ウェルニーは理解できない。とにかく一生懸命に、ベロベロ舐めて唾液まみれにするのが精いっぱいだ。
男の眉間にシワが寄る。強面の顔が余計に険しくなり、恐ろしかった。
「下手くそだな」
逆らってはならない、命令に従がおうと、パカッと大きく口を開け、頬張ろうとする。
下手くそと言われても、よくわからないウェルニー。だけれど、聞き返せば踏みつけられることくらいは分かっていた。
カチンと歯が木の棒に当たった瞬間、頭を蹴られた。棍棒で殴られた衝撃と同じだった。一瞬、視界が暗くなり、意識が飛んだ。
「歯を当てるなって言っただろうが!」
倒れるウェルニーの手に足が踏み降ろされる。
「ごめ……いっ!」
「頭の足りねぇゴミが! 喋ってんじゃねぇ!」
「ご主人様、嬉しいです! ご……いっ! ご主人様、嬉しいです! ご主人様……ごぁっ! ご、ご主人様、嬉しいです! ご主人様、嬉しいです! いぁああ!!」
許されたい一心で、教わった言葉を必死に繰り返す。涙と鼻水と唾液で顔をグチャグチャにしながら、懇願するように言い続けた。
「逃げんじゃねぇ!」
与えられる痛みと恐怖にたまらず、這って逃げようとすれば、髪を引っ張られた。引きちぎられるような力に、手足をジタバタさせ抵抗する。
木の棒は、きっと大事なものなんだろうとウェルニーは思った。少しも傷つけてはいけないのだから。舐めるのは、木の棒に対するキスみたいなもので、愛情表情じゃないかと考えた。
大事なものを「いいもの」と言って譲ってくれたのに、不器用なせいで傷つけたから、ウェルニーは怒られた。
――傷つけてごめんなさい。痛い思いをさせてごめんなさい。
男の大事なものを傷つけたから、殺される。
家に居たころ、集落の人が大事にしていた犬に、石を投げた乞食が居た。人懐っこい犬だった。石に頭をぶつけて死んでしまった。可愛い犬のため、集落の人たちが怒って、乞食を打ち殺した。
「ご主人様、嬉しいです」
「そうだ。ちゃんと出来るじゃねぇか」
メロニスにしか褒められたことのないウェルニーは、嬉しくてちょっぴり気恥ずかしく、エヘヘとはにかんだ。
「馬鹿は道具くらいにしか使えねぇ。道具は馬鹿で愚かな方がいい。賢いのはうざったくて駄目だ。馬鹿は何も考えないから、簡単に支配できる。与えられるものを何の疑問も持たず受けるだけだからいい」
ウェルニーには難しくてわからない話だったが、ウェルニーみたいなのがいいと選ばれた気がして、ますます嬉しくなった。言うことをきけば、褒めてもらえる。
「ご主人様、嬉しいです」
「それだけをずっと言っていればいい」
「ご主人様、嬉しいです! ご主人様、嬉しいです!」
言葉の意味も考えず、嬉しそうに繰り返した。
「肉が付いてきてマシになった、馬鹿で愚かなお前にいいものをやる」
男に渡されたのは、先が丸く加工された木の棒だった。大きさ違いで、幾つかある。一番太いものは、ウェルニーのほっそりした足首ほどもあった。
「ありがとうござ……いっ!」
いいものと言ってくれたのだから、きっとそうなのだろうと感謝を口にしたら、肩を蹴られた。
「道具が喋るな言っただろ!」
仰向けに倒れたウェルニーの肩をめがけ、何度も踏み降ろされる。四つん這いで逃げようとすれば、足を踏み潰され、指の骨が軋んだ。
暴力以上に、体格のいい男が恐ろしかった。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「何度言っても分からねぇ馬鹿だな! お前が口にしていい言葉は一つだけだ!」
「わ、わかんな……痛い!」
「「ご主人様、嬉しいです」だろうが! この、低能なクズが!」
「ごめ……!」
「違うつってんだろ!」
「ご主人様、嬉しいです! ご、ご主人様、嬉しいです!」
ぼろぼろ泣きながら言えば、踏み降ろされていた男の足が止まった。
「最初からそう言えばいい」
「はい。ぎゃぁっ!」
容赦なく踏みつけられた。
「学習しねぇ馬鹿だな」
「ご主人様、嬉しいです!」
「ふん、まあいい。今渡したそれを、舐めてくわえろ。決して傷つけるな、少しでも歯を当ててみろ。テメェの細っこい手指がグチャグチャになるまで踏み潰してやる」
脅されて震えた。言う通りにしなければ、酷い目に合うと信じた。
藁の上に座りなおし、木の棒と向き合う。男は服を着ているのに閉じ込められた自分たちが裸でいるのも、閉じ込められた裸の男たちがほど動かずに幸せそうに微笑みながらいつも寝ているのも、何を食べさせられているのかも、張型を舐めなければならない意味も考えることない。
そういうもの、言われたから従わなければならないと、与えられる暴力に恐怖で震えながら、口に入りそうな一番細い木の棒をとる。
踏みつけられた痛みに、涙で顔をべちょべちょに塗らし、ペロリと舐めた。ほんのり木の味がするだけで、何というものでもない。
わけも分からず舐めていたら、色々と説明された。いっぺんに言われても、ウェルニーは理解できない。とにかく一生懸命に、ベロベロ舐めて唾液まみれにするのが精いっぱいだ。
男の眉間にシワが寄る。強面の顔が余計に険しくなり、恐ろしかった。
「下手くそだな」
逆らってはならない、命令に従がおうと、パカッと大きく口を開け、頬張ろうとする。
下手くそと言われても、よくわからないウェルニー。だけれど、聞き返せば踏みつけられることくらいは分かっていた。
カチンと歯が木の棒に当たった瞬間、頭を蹴られた。棍棒で殴られた衝撃と同じだった。一瞬、視界が暗くなり、意識が飛んだ。
「歯を当てるなって言っただろうが!」
倒れるウェルニーの手に足が踏み降ろされる。
「ごめ……いっ!」
「頭の足りねぇゴミが! 喋ってんじゃねぇ!」
「ご主人様、嬉しいです! ご……いっ! ご主人様、嬉しいです! ご主人様……ごぁっ! ご、ご主人様、嬉しいです! ご主人様、嬉しいです! いぁああ!!」
許されたい一心で、教わった言葉を必死に繰り返す。涙と鼻水と唾液で顔をグチャグチャにしながら、懇願するように言い続けた。
「逃げんじゃねぇ!」
与えられる痛みと恐怖にたまらず、這って逃げようとすれば、髪を引っ張られた。引きちぎられるような力に、手足をジタバタさせ抵抗する。
木の棒は、きっと大事なものなんだろうとウェルニーは思った。少しも傷つけてはいけないのだから。舐めるのは、木の棒に対するキスみたいなもので、愛情表情じゃないかと考えた。
大事なものを「いいもの」と言って譲ってくれたのに、不器用なせいで傷つけたから、ウェルニーは怒られた。
――傷つけてごめんなさい。痛い思いをさせてごめんなさい。
男の大事なものを傷つけたから、殺される。
家に居たころ、集落の人が大事にしていた犬に、石を投げた乞食が居た。人懐っこい犬だった。石に頭をぶつけて死んでしまった。可愛い犬のため、集落の人たちが怒って、乞食を打ち殺した。
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