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二.魔法使いと共同生活
25.魔法使いの子供の頃の夢は
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朝、洗面所で顔を洗っているとどこからともなく焦げ臭さが漂ってきた。
――まさか、火事か!?
この小屋は不思議で理解できないものが沢山ある、前触れなく発火してもおかしくない。
慌ててリビングへ出る。空気に薄っすら煙が漂っていた。煙の元を辿ると、どうやらキッチンからきているようだ。
キッチンからゴソゴソと動く人の気配がする。
「カデル!」
「ケホッ、あはは、失敗した」
煙にまかれて咳き込む金髪美人。
キッチン台の上、鉄製のトレイがあり、その上に真っ黒な岩石が乗っている。それが、この臭いと煙の元だ。
「魔法の実験?」
「いや、パンを焼いていた」
「パン!?」
改めて見てみる。
その黒いのがパン……には見えない。どう見ても、岩石。ゴツゴツとした質感、モクモクと黒い煙を上げ、今、噴火口から飛び出してきたばかりの風貌をした、火山弾。再現力なら素晴らしい出来栄え。
パンとしては、ただの炭。
「焦げた部分を取り除けば……生焼けだ、これは食べられない」
ナイフで炭を半分に切ったカデルがしょんぼり肩を落とす。
そこまで真っ黒に焦げたのなら、中が無事にパンになっていたとしても、焦げ臭くて食べられたものではないのだが。
昨日、カデルの実家からパンの材料が一式送られてきたため起きた騒動だ。
「パンを焼くのは初めて?」
「実家で手伝ったことはある。けど、それも数えるほどであったし、分量を測ったり、焼けたパンを店に並べる程度の軽いものしかやらせてもらえなかった」
捏ねる段階や成形、焼き段階はやっていないのか。
「朝食に、アイクにウチの味を食べて貰いたかったのだが」
「材料はまだあるし、その内食べさせて貰うよ。今日は、差し入れの朝食を食べよう」
若干元気のないカデルを連れてリビングに戻る。窓を開け、換気も忘れない。
フワフワの白パンに、鶏肉と玉ねぎとキャベツの入ったトマトスープ、それから黄色い果物をテーブルに並べて、本日の朝食だ。
「そういえば、軟らかいパンが多いな」
「この辺はそうだな。僕の出身の方は、歯ごたえがあって小麦の香りがする素朴な味わいのパンが多い。でも甘いパンもおやつに人気だ。スパイスを効かせたべたべたパンがウチでは人気だった」
「スパイスの効いた、べたべた?」
「お茶やホットワイン、お菓子作りに使うスパイスだ。たっぷりのパターと砂糖を折り込んで焼くから、食べるときに溶けた砂糖とバターで手がべたべたする」
お菓子作りに使うスパイスというのは、シナモンかな。ということは、べたべたパンとはシナモンロールのことか。カロリーは高そうだが、美味しそうだ。
「まずは、バゲットを作りたい」
「エルフが惚れたパンの味か……気になるかも」
「お祖母様も、お祖父様に習ってたまにパンを焼いてくださる。「ワシにはパンの精霊さまが憑いておる」と言って。そうして焼き上がるのは、それはそれは見事な溶岩石だ。こう、表面は黒々として、破れ目から赤々と燃える炎が見えて」
祖母のモノマネらしい台詞を言って、イタズラっぽく笑った。
カデルのアレの上をいく溶岩石再現力だ。あの黒焦げの塊はエルフの血筋の仕業だろうか。
「寿命が違い過ぎるのに、よく結婚したなぁ。寂しくないのかな」
「祖父はもう亡くなっているよ」
「え?」
「常世には行かず、精霊となって祖母の側に居るんだ。祖母が亡くなったとき、一緒に逝くと言っていた。魔力の強いエルフが為せる技だな」
言っていたって、亡くなった人と話したのか。悲しい別れの話かと思いきや、別れていなかった。亡くなった先、何千年と変わらず側に居てくれるなら寂しくはない。
「僕の子供の頃の夢はパン屋だったんだ」
「魔法使いじゃないんだ? あ、いや、魔法薬を作っているときとか楽しそうだから」
「うん、楽しいよ。パンの焼けるにおいに囲まれて育ったから、子供の頃は身近なものに憧れたのだ。だけど、僕は生まれつき身体が丈夫ではなかった。パン作りは体力のいる仕事だ、両親の手伝いをしている兄が羨ましかったよ」
「身体が弱かったんだ? 今は平気なの?」
作業のあと床で寝るくらい無精をして身体は平気なのだろうか。
「治療のおかげで丈夫になった。三日徹夜するくらい平気だ」
「常人でも三日徹夜は駄目なので」
「そうだな、気をつける。身体が弱かったのは子供の頃の話でね。あの頃は、パン粥を啜る日が多かった。外に出られなくて、お祖母様がくださった本ばかり読んでいたから、勉強は得意だ」
その幼少期があっての、この天才と変人の紙一重な魔法使いができた。原点を知れて、ちょっと嬉しい愛久だ。
朝食を終え、身支度を整えて斧を取りに四階へ上がる。床の魔法陣はもう光っていないし、並べた素材も綺麗さっぱりなくなっていた。
「強化はもう終わっている。……うん、まずまずだ。アイク、持ってみてくれ」
魔法陣の真ん中に鎮座している木こり斧を拾い上げる。特に何か変わった感じはない。
「違いがわからないんだけど」
「よかった、成功だ。強化して重さや持った感じが変わってしまうと、使い心地も変わってしまうだろう?」
これはこれで成功なのか。何が強化されたのかわからないけど。
「武器自体が壊れない魔法をかけてある。あとは、使ったときにわかるさ」
全ては説明して貰えなかった。変化は特にないし、まあいいか。
二人で小屋を出て、傭兵ギルドへ向かった。この辺りは、魔物も少ないとジャックに聞いた。商人や旅人といったものの護衛の依頼が主らしく、魔物退治は低級なものばかり。傭兵らしき人が二、三人居る程度、傭兵ギルド内は殺ばつがものはない。よそ者を観察する視線は感じたけれど、それくらいだ。
ギルドへの登録は、カデルの信用があってあっさり済んだ。登録料はカデル持ちだ。こっちの貨幣を持っていないので祓いようがなかった。稼いだら返すつもりでいる。
「必ず返します」
「別にいいのに」
「こういうのは、気持ちの問題だから。独り立ちした男としての矜持が」
「そうか。なら、そのときになったら受け取ろう」
理由さえあればちゃんと理解てくれるカデルだ。食事の差し入れの件も、こうやって話せばわかってくれるのではとふと考えつき、後で言ってみようかと思う愛久だ。
「はい。瘴気浄化宝珠と、魔物専用収納キューブね。使い方は魔物の自体に当てればいいの。宝珠なら浄化されるし、キューブなら収納されるから。瘴気を浄化してから入れてね。依頼によって、浄化しないでってのもあるけど、基本的に魔物の浄化は必須よ」
受け付けのお姉さんから丸い玉と、四角いものを受け取った。カデルがいうには、何十年も前からある定番の魔法道具とのことだ。
それから、ジャックが言っていた魔物退治の依頼を受ける。予定は明日とのこと。
ギルドを出て、昼食用にサンドイッチと革袋の水筒に入った搾りたて果物ジュースを買った。
これから行くのは、魔物の森。
「僕から離れないように。はぐれると森からでられなくなる」
ここで迷子は死も同然。注意してカデルについていく。
最初は、身構えて警戒していたが、この森は動物が居ない。はぐれないようにだけ気をつけていれば、安全でのどかな場所だった。昼食も持っているし、うららか日和のピクニック気分になってくる。
「この黄色い果実は甘くて美味しいんだ」
魔物の森でなった果物を食べて平気なのだろうか、と思ったが愛久には馴染みのある果物だった。
「びわ?」
「知っているのか」
「あんまり食べたことはないけど、俺の世界にある果物だよ」
「なら、こっちはどうかな。今はまだ緑色だけど、赤くなると甘いんだ。春に白い花が群がるように咲いて、美しい木なんだ」
ゴツゴツした幹は見覚えがあった。
「桜の木だ!」
「どうやら、愛久の世界の植物がこちら側に迷い込んで、この森に根付いたらしい」
そういうことなら、向こう側の世界と繋がる場所がこの森にあるのかもしれない。帰れる希望が見えてきた。
気合いを入れ、見たことのあるものがないかとキョロキョロして探す。と、見知ったものを見つけた。期待していた、向こう側へ帰る手掛かりとは違ったが。
「俺が着ていたパーカーだ」
茶色く染みてカピカピになった血で元の色がわからなくなっているし、ここが愛久が居た日本だったのなら、量産されたジップパーカーが自分のものかどうかなんて見分けがつかなかっただろうが、この世界にはないデザインの服だ、持ち込んだのは愛久くらいしかいない。
「僕がアイクに助けられた場所だな。ほら、ナイフが落ちている」
愛久は、カデルが指差した錆びたナイフを拾う。刃も柄も金属製、細かな紋様が刻まれてきた。粗悪な安物とは違うように見えた。
カデルが僅かに眉を寄せる。
「持って帰ろうか」
ナイフを渡し、散策を続ける。
途中、のんびり昼食をとって、また森の中をひたすら歩き続けた。
そこで、見つけたくないものを見つけてしまう。
「ひぇ」
不気味さに、愛久の口から悲鳴について漏れた。
服を着た木が生えていた。それも、顔らしい窪み、人間だった骨格の名残りの残った木。
後退りする愛久とは違い、カデルは木が着ている服を調べ始めた。
「僕を刺した盗賊だ。ジャックの店で受け取った魔法薬の代金がポケットに入っていた。あのとき、盗られたものだ」
カデルを刺して金を奪ったものの、森から出られなかった盗賊の末路がこの木だ。人間が木になっているのを間近で見て実感が湧き、悪寒が走ってブルリと身震いした。
本日の収穫はそれくらいだった。長居すると、魔物の森の魔力を吸いすぎて森の一部になってしまう。とはいえ、まる一日くらい居ないとならないらしいけど。あの森が、向こう側と繋がっているかもしれないとわかっただけで大収穫だ。
――まさか、火事か!?
この小屋は不思議で理解できないものが沢山ある、前触れなく発火してもおかしくない。
慌ててリビングへ出る。空気に薄っすら煙が漂っていた。煙の元を辿ると、どうやらキッチンからきているようだ。
キッチンからゴソゴソと動く人の気配がする。
「カデル!」
「ケホッ、あはは、失敗した」
煙にまかれて咳き込む金髪美人。
キッチン台の上、鉄製のトレイがあり、その上に真っ黒な岩石が乗っている。それが、この臭いと煙の元だ。
「魔法の実験?」
「いや、パンを焼いていた」
「パン!?」
改めて見てみる。
その黒いのがパン……には見えない。どう見ても、岩石。ゴツゴツとした質感、モクモクと黒い煙を上げ、今、噴火口から飛び出してきたばかりの風貌をした、火山弾。再現力なら素晴らしい出来栄え。
パンとしては、ただの炭。
「焦げた部分を取り除けば……生焼けだ、これは食べられない」
ナイフで炭を半分に切ったカデルがしょんぼり肩を落とす。
そこまで真っ黒に焦げたのなら、中が無事にパンになっていたとしても、焦げ臭くて食べられたものではないのだが。
昨日、カデルの実家からパンの材料が一式送られてきたため起きた騒動だ。
「パンを焼くのは初めて?」
「実家で手伝ったことはある。けど、それも数えるほどであったし、分量を測ったり、焼けたパンを店に並べる程度の軽いものしかやらせてもらえなかった」
捏ねる段階や成形、焼き段階はやっていないのか。
「朝食に、アイクにウチの味を食べて貰いたかったのだが」
「材料はまだあるし、その内食べさせて貰うよ。今日は、差し入れの朝食を食べよう」
若干元気のないカデルを連れてリビングに戻る。窓を開け、換気も忘れない。
フワフワの白パンに、鶏肉と玉ねぎとキャベツの入ったトマトスープ、それから黄色い果物をテーブルに並べて、本日の朝食だ。
「そういえば、軟らかいパンが多いな」
「この辺はそうだな。僕の出身の方は、歯ごたえがあって小麦の香りがする素朴な味わいのパンが多い。でも甘いパンもおやつに人気だ。スパイスを効かせたべたべたパンがウチでは人気だった」
「スパイスの効いた、べたべた?」
「お茶やホットワイン、お菓子作りに使うスパイスだ。たっぷりのパターと砂糖を折り込んで焼くから、食べるときに溶けた砂糖とバターで手がべたべたする」
お菓子作りに使うスパイスというのは、シナモンかな。ということは、べたべたパンとはシナモンロールのことか。カロリーは高そうだが、美味しそうだ。
「まずは、バゲットを作りたい」
「エルフが惚れたパンの味か……気になるかも」
「お祖母様も、お祖父様に習ってたまにパンを焼いてくださる。「ワシにはパンの精霊さまが憑いておる」と言って。そうして焼き上がるのは、それはそれは見事な溶岩石だ。こう、表面は黒々として、破れ目から赤々と燃える炎が見えて」
祖母のモノマネらしい台詞を言って、イタズラっぽく笑った。
カデルのアレの上をいく溶岩石再現力だ。あの黒焦げの塊はエルフの血筋の仕業だろうか。
「寿命が違い過ぎるのに、よく結婚したなぁ。寂しくないのかな」
「祖父はもう亡くなっているよ」
「え?」
「常世には行かず、精霊となって祖母の側に居るんだ。祖母が亡くなったとき、一緒に逝くと言っていた。魔力の強いエルフが為せる技だな」
言っていたって、亡くなった人と話したのか。悲しい別れの話かと思いきや、別れていなかった。亡くなった先、何千年と変わらず側に居てくれるなら寂しくはない。
「僕の子供の頃の夢はパン屋だったんだ」
「魔法使いじゃないんだ? あ、いや、魔法薬を作っているときとか楽しそうだから」
「うん、楽しいよ。パンの焼けるにおいに囲まれて育ったから、子供の頃は身近なものに憧れたのだ。だけど、僕は生まれつき身体が丈夫ではなかった。パン作りは体力のいる仕事だ、両親の手伝いをしている兄が羨ましかったよ」
「身体が弱かったんだ? 今は平気なの?」
作業のあと床で寝るくらい無精をして身体は平気なのだろうか。
「治療のおかげで丈夫になった。三日徹夜するくらい平気だ」
「常人でも三日徹夜は駄目なので」
「そうだな、気をつける。身体が弱かったのは子供の頃の話でね。あの頃は、パン粥を啜る日が多かった。外に出られなくて、お祖母様がくださった本ばかり読んでいたから、勉強は得意だ」
その幼少期があっての、この天才と変人の紙一重な魔法使いができた。原点を知れて、ちょっと嬉しい愛久だ。
朝食を終え、身支度を整えて斧を取りに四階へ上がる。床の魔法陣はもう光っていないし、並べた素材も綺麗さっぱりなくなっていた。
「強化はもう終わっている。……うん、まずまずだ。アイク、持ってみてくれ」
魔法陣の真ん中に鎮座している木こり斧を拾い上げる。特に何か変わった感じはない。
「違いがわからないんだけど」
「よかった、成功だ。強化して重さや持った感じが変わってしまうと、使い心地も変わってしまうだろう?」
これはこれで成功なのか。何が強化されたのかわからないけど。
「武器自体が壊れない魔法をかけてある。あとは、使ったときにわかるさ」
全ては説明して貰えなかった。変化は特にないし、まあいいか。
二人で小屋を出て、傭兵ギルドへ向かった。この辺りは、魔物も少ないとジャックに聞いた。商人や旅人といったものの護衛の依頼が主らしく、魔物退治は低級なものばかり。傭兵らしき人が二、三人居る程度、傭兵ギルド内は殺ばつがものはない。よそ者を観察する視線は感じたけれど、それくらいだ。
ギルドへの登録は、カデルの信用があってあっさり済んだ。登録料はカデル持ちだ。こっちの貨幣を持っていないので祓いようがなかった。稼いだら返すつもりでいる。
「必ず返します」
「別にいいのに」
「こういうのは、気持ちの問題だから。独り立ちした男としての矜持が」
「そうか。なら、そのときになったら受け取ろう」
理由さえあればちゃんと理解てくれるカデルだ。食事の差し入れの件も、こうやって話せばわかってくれるのではとふと考えつき、後で言ってみようかと思う愛久だ。
「はい。瘴気浄化宝珠と、魔物専用収納キューブね。使い方は魔物の自体に当てればいいの。宝珠なら浄化されるし、キューブなら収納されるから。瘴気を浄化してから入れてね。依頼によって、浄化しないでってのもあるけど、基本的に魔物の浄化は必須よ」
受け付けのお姉さんから丸い玉と、四角いものを受け取った。カデルがいうには、何十年も前からある定番の魔法道具とのことだ。
それから、ジャックが言っていた魔物退治の依頼を受ける。予定は明日とのこと。
ギルドを出て、昼食用にサンドイッチと革袋の水筒に入った搾りたて果物ジュースを買った。
これから行くのは、魔物の森。
「僕から離れないように。はぐれると森からでられなくなる」
ここで迷子は死も同然。注意してカデルについていく。
最初は、身構えて警戒していたが、この森は動物が居ない。はぐれないようにだけ気をつけていれば、安全でのどかな場所だった。昼食も持っているし、うららか日和のピクニック気分になってくる。
「この黄色い果実は甘くて美味しいんだ」
魔物の森でなった果物を食べて平気なのだろうか、と思ったが愛久には馴染みのある果物だった。
「びわ?」
「知っているのか」
「あんまり食べたことはないけど、俺の世界にある果物だよ」
「なら、こっちはどうかな。今はまだ緑色だけど、赤くなると甘いんだ。春に白い花が群がるように咲いて、美しい木なんだ」
ゴツゴツした幹は見覚えがあった。
「桜の木だ!」
「どうやら、愛久の世界の植物がこちら側に迷い込んで、この森に根付いたらしい」
そういうことなら、向こう側の世界と繋がる場所がこの森にあるのかもしれない。帰れる希望が見えてきた。
気合いを入れ、見たことのあるものがないかとキョロキョロして探す。と、見知ったものを見つけた。期待していた、向こう側へ帰る手掛かりとは違ったが。
「俺が着ていたパーカーだ」
茶色く染みてカピカピになった血で元の色がわからなくなっているし、ここが愛久が居た日本だったのなら、量産されたジップパーカーが自分のものかどうかなんて見分けがつかなかっただろうが、この世界にはないデザインの服だ、持ち込んだのは愛久くらいしかいない。
「僕がアイクに助けられた場所だな。ほら、ナイフが落ちている」
愛久は、カデルが指差した錆びたナイフを拾う。刃も柄も金属製、細かな紋様が刻まれてきた。粗悪な安物とは違うように見えた。
カデルが僅かに眉を寄せる。
「持って帰ろうか」
ナイフを渡し、散策を続ける。
途中、のんびり昼食をとって、また森の中をひたすら歩き続けた。
そこで、見つけたくないものを見つけてしまう。
「ひぇ」
不気味さに、愛久の口から悲鳴について漏れた。
服を着た木が生えていた。それも、顔らしい窪み、人間だった骨格の名残りの残った木。
後退りする愛久とは違い、カデルは木が着ている服を調べ始めた。
「僕を刺した盗賊だ。ジャックの店で受け取った魔法薬の代金がポケットに入っていた。あのとき、盗られたものだ」
カデルを刺して金を奪ったものの、森から出られなかった盗賊の末路がこの木だ。人間が木になっているのを間近で見て実感が湧き、悪寒が走ってブルリと身震いした。
本日の収穫はそれくらいだった。長居すると、魔物の森の魔力を吸いすぎて森の一部になってしまう。とはいえ、まる一日くらい居ないとならないらしいけど。あの森が、向こう側と繋がっているかもしれないとわかっただけで大収穫だ。
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