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私の好きな花

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「好きな花ってあるの?」


話題の映画に感化された君は

ふと思い出したのか、そう聞いてきた。


けど、私は


「別に。」


と答えるしかない。


だって今までの人生で惹かれることはなかったし

生活の彩りは君が撮った思い出がくれた。


そう。


だから、今度『好きな花は?』と聞かれたら

『君が摘んだ写真』とでも答えよう。


そんなくだらないことを考えてたけど

今週の君もワンコインの花束を私にくれた。


「どれが好き?」


そう聞いてきた君は期待に満ちた笑顔で

私が指すであろう花束を見つめていたけど

私は別れの準備でもしてるんじゃないかと

勘ぐってしまう。


だから


「特に。」


そう答えるしかない。


だって、あの映画の受け売りを信じるなら

別れた後も不意に思い出される

元彼になるってこと。


それは嫌。


ワンタップで削除

ワンプッシュで焼却

ワンフレーズで破局


それくらい危うかった昔の彼女を思い出す時は

君が思い出を振り返ろうと思った時だけでいい。


これだけは残したいと思ってくれた

花束を見返す時に。


だからこれからも私は

君から受け取った花を写真フォルダに集めて

将来、いなくなった君を思い出す時に

いちばんの花束を自分に買うんだ。


その時はきっと

ワンコインじゃ足りないと思うけど

君のくれた彩りと香りが私を包んでくれるから

1番幸せを感じたこの時を映像以外で感じられる。


それだけのために私は

毎週、花束を買ってくる君を

不機嫌にさせてしまうけど嫌いにならないでね。


私は花なんかより君が好きだから。




環流 虹向/
あなたから貰った花が私のいちばん好きな花

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