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慾末
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あーあ、あそこと同じトリートメントあるとこ探さないとなぁ。
白波さんと数日前まで毎日のように交わしていたメッセージはあの日から動かないまま。
『今コンビニいるけど、何かいる?』
うん、これでいい。
そう自分に言い聞かせないとまたあの家に行って迷惑をかけちゃうから年末の家が慌ただしくても気にしない。
好きな人と来年こそはクリスマスを過ごしてみたい。
そんな欲が大学受験を終わり、年末調整のためにバイトが大半休みで暇な私を支配する。
だけど、今もなんでもないケイさんに言えないし、卒業論文というなんだかめんどくさいものをやってるとも言ってたから邪魔するわけにはいかない。
はぁ…、今年も嫌いな親戚とだるい年末年始を過ごすのか。
去年はうちの家だったけど、今年はお父さんのお兄さん家で過ごすことになった私は詰めたくない荷物をタラタラとボストンバッグに入れながらイヤフォンから流れる曲を口ずさんでいると突然音が途絶えた。
もしかして。
そう思って手元から離れていた携帯を取ると、試験の追い込みをしていた七星ちゃんから電話がきていた。
優愛「もしもし?」
私は久しぶりに遊びの誘いをしてくれたのか、それとも気晴らしの電話をしてくれたのか、気持ちが高鳴りながら電話を取ると鼻水をすすっている七星ちゃんの息遣いが聞こえて一気に気持ちが静まる。
優愛「…どうしたの?」
七星『んっ…ぐ、…れた。』
喉に言葉がつっかえている七星ちゃんにもう一回聞くのがとても申し訳なく感じた私は言葉が出ず、どうすれば考えていると七星ちゃんはもう一度声を出し言い直した。
七星『別れた…っ。さっきぃ…』
と、七星ちゃんはなんでこのタイミング?と思う元旦前日に電話をしてきて私は一気に背中に鳥肌が立つ。
優愛「どう、えっ…、んっと…そっち行く!」
私は七星ちゃんの返事を聞く前にコートを着てポケットに財布だけ入れ、七星ちゃんと私の家の中間地点にあるケイさん家の最寄り駅で待ち合わせをしてその無人駅に向かうと大きなフードを被っている人影が見えた。
優愛「七星ちゃん…?」
そっと顔を覗くように近づくと、七星ちゃんはハンカチに埋めていた顔を私に見せて一気に目を潤ませた。
七星「うぅ…ゆあちゃん…っ、しにそ…。」
優愛「一旦、深呼吸しよ。」
私は過呼吸気味だった七星ちゃんの背中を撫で、息を整えてもらう。
優愛「…えっと、何があって…そうなったの?」
友達の初めての別れ話、自分は普通の恋愛経験をしたことなかったからちゃんとした言葉をあげれないかもしれないけど七星ちゃんの悲しい気持ちを少しでも和らげたい。
その気持ちを私は目で伝えながら七星ちゃんが話してくれる私の知らない悟さんを教えてもらう。
悟さんは大学生になってからバイト、サークル、勉強にしっかり向き合ってるって話だったけど、桃樹さんが夏と一緒に居なくなってから変わってしまったみたい。
仲良くなかった聖さんとその友達と遊ぶようになってアルコールとヤニ臭くなってきて、言葉遣いも汚くなってしまったという。
桃樹さんが悟さんの親友で唯一と言っていいほどの遊び相手で肝臓みたいな役割だったんだと思う。
だから悟さんは七星ちゃんが好きだった悟さんじゃなくなってしまって、昨日警察官と夜を過ごしたという。
それが別れを切り出すきっかけになったと七星ちゃんは言ったけれど、まだ戻れるんじゃないかなと話を繰り返す。
だけど、今の悟さんといる選択をしてしまった七星ちゃんとは私はこれから仲がいいままでいられるか分からない。
だから私は今の七星ちゃんが好きでこれからも仲良くしたい気持ちを伝えることにした。
優愛「…また付き合うとしてもきっと今じゃないと思う。」
私は箱ティッシュ半分使い切って今にでも連絡しようとしてた七星ちゃんの指先を止めた。
優愛「好きな人を支えるのと見守るのってすごく難しいけど、七星ちゃんなら出来ると思う。」
1時間近く泣き腫らした目からまだ大粒の涙は落ちてきて私も一緒に泣きたくなるけど、言葉が詰まる前に全部言わなきゃ。
優愛「私も悟さんのこと人として好きなとこ、たくさんある。だから、七星ちゃんが…」
私はまっすぐ気持ちを伝えるために七星ちゃんの目から視線を逸らし、姿勢を正して前を見るとそこに見覚えのある背格好と隣の女の人に目がクギ付けになる。
楽しげな女の人の声が音だけ聞こえてそれに合わせてケイさんの相槌のような音が聞こえて自分も七星ちゃんと同じ日に心がポッキリ折れてしまった。
優愛「……わたし、七星ちゃん好きだから…、今の悟さんと同じとこ行ってほしくない…!」
お腹から黒いものを出すように立ち上がり、私は七星ちゃんの手を引き一緒にベンチから立ち上がる。
優愛「悟さんが私たちのこと、もっと好きになってもらうために歌いにいこ!!」
感情のまま、言葉が出るまま、勢いで七星ちゃんをライバルだったカラオケ店に連れて行き、2人でしっとりバラードをお腹から吐き出して6時間後、私は親の口を削ぎ落としたくなるくらい怒られたけどいい忘年会が出来てぐっすり眠ることが出来た。
環流 虹向/愛、焦がれ
白波さんと数日前まで毎日のように交わしていたメッセージはあの日から動かないまま。
『今コンビニいるけど、何かいる?』
うん、これでいい。
そう自分に言い聞かせないとまたあの家に行って迷惑をかけちゃうから年末の家が慌ただしくても気にしない。
好きな人と来年こそはクリスマスを過ごしてみたい。
そんな欲が大学受験を終わり、年末調整のためにバイトが大半休みで暇な私を支配する。
だけど、今もなんでもないケイさんに言えないし、卒業論文というなんだかめんどくさいものをやってるとも言ってたから邪魔するわけにはいかない。
はぁ…、今年も嫌いな親戚とだるい年末年始を過ごすのか。
去年はうちの家だったけど、今年はお父さんのお兄さん家で過ごすことになった私は詰めたくない荷物をタラタラとボストンバッグに入れながらイヤフォンから流れる曲を口ずさんでいると突然音が途絶えた。
もしかして。
そう思って手元から離れていた携帯を取ると、試験の追い込みをしていた七星ちゃんから電話がきていた。
優愛「もしもし?」
私は久しぶりに遊びの誘いをしてくれたのか、それとも気晴らしの電話をしてくれたのか、気持ちが高鳴りながら電話を取ると鼻水をすすっている七星ちゃんの息遣いが聞こえて一気に気持ちが静まる。
優愛「…どうしたの?」
七星『んっ…ぐ、…れた。』
喉に言葉がつっかえている七星ちゃんにもう一回聞くのがとても申し訳なく感じた私は言葉が出ず、どうすれば考えていると七星ちゃんはもう一度声を出し言い直した。
七星『別れた…っ。さっきぃ…』
と、七星ちゃんはなんでこのタイミング?と思う元旦前日に電話をしてきて私は一気に背中に鳥肌が立つ。
優愛「どう、えっ…、んっと…そっち行く!」
私は七星ちゃんの返事を聞く前にコートを着てポケットに財布だけ入れ、七星ちゃんと私の家の中間地点にあるケイさん家の最寄り駅で待ち合わせをしてその無人駅に向かうと大きなフードを被っている人影が見えた。
優愛「七星ちゃん…?」
そっと顔を覗くように近づくと、七星ちゃんはハンカチに埋めていた顔を私に見せて一気に目を潤ませた。
七星「うぅ…ゆあちゃん…っ、しにそ…。」
優愛「一旦、深呼吸しよ。」
私は過呼吸気味だった七星ちゃんの背中を撫で、息を整えてもらう。
優愛「…えっと、何があって…そうなったの?」
友達の初めての別れ話、自分は普通の恋愛経験をしたことなかったからちゃんとした言葉をあげれないかもしれないけど七星ちゃんの悲しい気持ちを少しでも和らげたい。
その気持ちを私は目で伝えながら七星ちゃんが話してくれる私の知らない悟さんを教えてもらう。
悟さんは大学生になってからバイト、サークル、勉強にしっかり向き合ってるって話だったけど、桃樹さんが夏と一緒に居なくなってから変わってしまったみたい。
仲良くなかった聖さんとその友達と遊ぶようになってアルコールとヤニ臭くなってきて、言葉遣いも汚くなってしまったという。
桃樹さんが悟さんの親友で唯一と言っていいほどの遊び相手で肝臓みたいな役割だったんだと思う。
だから悟さんは七星ちゃんが好きだった悟さんじゃなくなってしまって、昨日警察官と夜を過ごしたという。
それが別れを切り出すきっかけになったと七星ちゃんは言ったけれど、まだ戻れるんじゃないかなと話を繰り返す。
だけど、今の悟さんといる選択をしてしまった七星ちゃんとは私はこれから仲がいいままでいられるか分からない。
だから私は今の七星ちゃんが好きでこれからも仲良くしたい気持ちを伝えることにした。
優愛「…また付き合うとしてもきっと今じゃないと思う。」
私は箱ティッシュ半分使い切って今にでも連絡しようとしてた七星ちゃんの指先を止めた。
優愛「好きな人を支えるのと見守るのってすごく難しいけど、七星ちゃんなら出来ると思う。」
1時間近く泣き腫らした目からまだ大粒の涙は落ちてきて私も一緒に泣きたくなるけど、言葉が詰まる前に全部言わなきゃ。
優愛「私も悟さんのこと人として好きなとこ、たくさんある。だから、七星ちゃんが…」
私はまっすぐ気持ちを伝えるために七星ちゃんの目から視線を逸らし、姿勢を正して前を見るとそこに見覚えのある背格好と隣の女の人に目がクギ付けになる。
楽しげな女の人の声が音だけ聞こえてそれに合わせてケイさんの相槌のような音が聞こえて自分も七星ちゃんと同じ日に心がポッキリ折れてしまった。
優愛「……わたし、七星ちゃん好きだから…、今の悟さんと同じとこ行ってほしくない…!」
お腹から黒いものを出すように立ち上がり、私は七星ちゃんの手を引き一緒にベンチから立ち上がる。
優愛「悟さんが私たちのこと、もっと好きになってもらうために歌いにいこ!!」
感情のまま、言葉が出るまま、勢いで七星ちゃんをライバルだったカラオケ店に連れて行き、2人でしっとりバラードをお腹から吐き出して6時間後、私は親の口を削ぎ落としたくなるくらい怒られたけどいい忘年会が出来てぐっすり眠ることが出来た。
環流 虹向/愛、焦がれ
応援ありがとうございます!
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