ピンヒールでおどらせて

環流 虹向

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絆創膏

Tonight

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「はい、OK。」

コンビニで買った絆創膏を私のかかとに貼り終えた昂はそこにキスをしてピンヒールを履かせる。

瞳「ちょ…、臭いから…。」

昂「瞳は汗もいいにおーいっ。」

酔った口ぶりで誤魔化す昂は私の手を取り、コンビニ前のフェンスから立ち上がらせるととてもご機嫌らしく次は鼻歌を歌う。

瞳「なんの曲?」

昂「映画で流れてた曲。」

そう言ってずっと前に一緒に見たてっぱんラブロマンス映画で流れていた曲を歌う昂は、その曲が浮気の曲とは知らずに歌い続ける。

それが過去の彼氏にずっと浮気し続けた私の罪滅ぼしのように感じて歌いたいだけ歌わせていると、昂は坂上にあるホテル街に入ると人通りも少なくなって解放的になったのか、空いていた私の片手も一緒に握ってぐるぐると道路の真ん中で回り出す。

瞳「…恥ずかしいって。」

昂「いいの。俺も瞳の記憶に残る彼氏になる。」

そんな寂しいことを言う昂に私は抱きつき、胸の中で謝る。

けれど、昂は聞こえてないみたいでそのまま私を抱きしめ返して体を揺らしダンスを続ける。

昂「月が綺麗ですねー。」

瞳「…月。」

私は急に敬語で月を褒めた昂の目線の先を見てみると、綺麗な満月がホテル街のライトと一緒に私たち2人を照らしているのが見えた。

それがまるでダンスホールのように見えて私は思わず笑みをこぼす。

昂「こういう時は俺と見るから綺麗って返すんだよ。」

そう言って昂は片手で私の顔を持ち上げて向こうからやってきたタクシーを気にせず、愛情を渡し合うキスをした。

その映画みたいな空間に飲まれる私は昂のしたいことを一緒していると、タクシーがクラクションを鳴らした同時に昂は私を腰から抱き上げてそばにあったホテルの敷地内に下ろした。

昂「今日は帰らせない。」

瞳「帰る家は一緒だよ。」

冗談を言って笑わせてくれる昂に惹かれるまま、私は過去を道しるべのようにポロポロと落とし、今が見える前だけを見てヒールを鳴らした。


環流 虹向/ピンヒールでおどらせて
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