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Louis
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流行りもののロングワンピース。
流行色のピンヒール。
王道の揺れるイヤリング。
シンデレラストーリーのような夏終わりの文化祭から、冬終わりの春休み。
私はみんなが可愛いと言っている物を買うことに躊躇することがなくなり、欲しい服に合わせて体から肉を落とすようになった。
そのダイエット方法はファッションの流行を調べ始めた私を好きになった妹が私の体に合いそうなダイエット方法や日々のボディメンテナンスを事細かく教えてくれていた。
友達が増え、真逆の性格だった妹と頻繁に連絡を取り合うようになった私に一度だけ蕾が『デート行くの?』と不機嫌そうな声でゲームをしたまま聞いてきたことがある。
その一言で私が蕾の気持ちに気づいてあげられていればよかったけど、一度も可愛いと言ってくれたことがない蕾を不服に思っていた私は『違うよ。』と冷たく言葉を吐いて新しい友達とまたショッピングに行ってしまった。
それから蕾はいつもより言葉を発さなくなり、学校内で私と手を繋ぐことを辞めた。
けど、時たま肩が触れ合う距離にはいたし、私の知り合いの大半が蕾と付き合っていることは知っていたから冗談でも別れたらと言って私の機嫌を損ねることはなかった。
だから大丈夫だと思っていたのに。
大丈夫とタカをくくって、浮ついていた私の気持ちをしっかりと地に落としたのは居酒屋で無理をせずに緑茶を頼んだ蕾の一言だった。
蕾「別れよ。」
私は居酒屋に来たらいつもお泊りコースだったから場所もタイミングも選ばない蕾の言葉に驚き、薄い梅酒サワーが口の中で弾け終わるまで喉を通せなかった。
瞳「…なんで?」
蕾「別れたいから。」
瞳「理由になってないよ。」
突然の別れ話とは思えないほど、私たちの会話は落ち着いていて仕切りのない居酒屋なのにどのお客さんも気づかない。
蕾「一緒にいるのがつらい、疲れる、つまらない。」
瞳「…ひどいよ。」
私は霜が降りているジョッキで顔を隠すように口元に持っていき、ロングヘアになった髪で周りに仕切りを作った。
蕾「僕は瞳には似合わない彼氏だから。別れよ。」
涙なしで言葉をつまらすことなく私を拒否する蕾は揚げたての唐揚げをパクパク食べて私の涙なんか拭いてくれない。
瞳「いつから…、それ、考えてたの?」
蕾「前。」
瞳「それじゃあ分かんないよ。」
私はいつも言葉足らず過ぎる蕾が今何を思って私に別れを告げたのか、全く分からない。
蕾「前は前。前から似合ってない。」
瞳「好きじゃなくなったってこと…?」
蕾「似合ってないの。だから別れるよ。」
そう言って一方的に別れを告げた蕾は誰かに電話してその人を私たちがいる居酒屋に呼ぶと、1万円札と私を自分と趣味が合う唯一の友達に託していなくなってしまった。
それから私は蕾の友達に溢れる涙を紙ナフキンで拭き取ってもらいながら、なんでこうなってしまったのか相談する。
すると、蕾とずっと仲がいい友達は私がいない所の蕾を教えてくれた。
『似合ってない。』
『釣り合ってない。』
『彼氏じゃない。』
それは他人が決めることじゃないのに、周りから陰でそう言われていることに1人で耐えていたらしい。
文化祭のミスコンで顔が知られた私と彼氏の蕾はそばにいることが当たり前なのにずっとそう言われていたという。
その友達はそれを知ってただの妬みだと蕾に助言し続けたらしいけど、蕾は変わっていく私も周りの目も耐えきれなくて別れることにしたらしい。
それを聞いて当時の私は全く納得がいかなかったけど、着飾ってない私を最初に好きになってくれたのは蕾だった。
それなのになんで蕾の声を聞かなかったんだろう。
今でも謝りたいけど、あの日から蕾は友達と一緒に私の前から姿を消して大学の卒業式でも顔を見せることがなかった。
本当にごめん。
他人の意見を取り入れるのが上手かった私なのに、蕾の意見は聞くことも感じとることも出来なくて嫌な気持ちにさせちゃった。
今は私よりもちゃんと声を聞いてくれる素敵な人に出会えてるのかな。
環流 虹向/ピンヒールでおどらせて
流行色のピンヒール。
王道の揺れるイヤリング。
シンデレラストーリーのような夏終わりの文化祭から、冬終わりの春休み。
私はみんなが可愛いと言っている物を買うことに躊躇することがなくなり、欲しい服に合わせて体から肉を落とすようになった。
そのダイエット方法はファッションの流行を調べ始めた私を好きになった妹が私の体に合いそうなダイエット方法や日々のボディメンテナンスを事細かく教えてくれていた。
友達が増え、真逆の性格だった妹と頻繁に連絡を取り合うようになった私に一度だけ蕾が『デート行くの?』と不機嫌そうな声でゲームをしたまま聞いてきたことがある。
その一言で私が蕾の気持ちに気づいてあげられていればよかったけど、一度も可愛いと言ってくれたことがない蕾を不服に思っていた私は『違うよ。』と冷たく言葉を吐いて新しい友達とまたショッピングに行ってしまった。
それから蕾はいつもより言葉を発さなくなり、学校内で私と手を繋ぐことを辞めた。
けど、時たま肩が触れ合う距離にはいたし、私の知り合いの大半が蕾と付き合っていることは知っていたから冗談でも別れたらと言って私の機嫌を損ねることはなかった。
だから大丈夫だと思っていたのに。
大丈夫とタカをくくって、浮ついていた私の気持ちをしっかりと地に落としたのは居酒屋で無理をせずに緑茶を頼んだ蕾の一言だった。
蕾「別れよ。」
私は居酒屋に来たらいつもお泊りコースだったから場所もタイミングも選ばない蕾の言葉に驚き、薄い梅酒サワーが口の中で弾け終わるまで喉を通せなかった。
瞳「…なんで?」
蕾「別れたいから。」
瞳「理由になってないよ。」
突然の別れ話とは思えないほど、私たちの会話は落ち着いていて仕切りのない居酒屋なのにどのお客さんも気づかない。
蕾「一緒にいるのがつらい、疲れる、つまらない。」
瞳「…ひどいよ。」
私は霜が降りているジョッキで顔を隠すように口元に持っていき、ロングヘアになった髪で周りに仕切りを作った。
蕾「僕は瞳には似合わない彼氏だから。別れよ。」
涙なしで言葉をつまらすことなく私を拒否する蕾は揚げたての唐揚げをパクパク食べて私の涙なんか拭いてくれない。
瞳「いつから…、それ、考えてたの?」
蕾「前。」
瞳「それじゃあ分かんないよ。」
私はいつも言葉足らず過ぎる蕾が今何を思って私に別れを告げたのか、全く分からない。
蕾「前は前。前から似合ってない。」
瞳「好きじゃなくなったってこと…?」
蕾「似合ってないの。だから別れるよ。」
そう言って一方的に別れを告げた蕾は誰かに電話してその人を私たちがいる居酒屋に呼ぶと、1万円札と私を自分と趣味が合う唯一の友達に託していなくなってしまった。
それから私は蕾の友達に溢れる涙を紙ナフキンで拭き取ってもらいながら、なんでこうなってしまったのか相談する。
すると、蕾とずっと仲がいい友達は私がいない所の蕾を教えてくれた。
『似合ってない。』
『釣り合ってない。』
『彼氏じゃない。』
それは他人が決めることじゃないのに、周りから陰でそう言われていることに1人で耐えていたらしい。
文化祭のミスコンで顔が知られた私と彼氏の蕾はそばにいることが当たり前なのにずっとそう言われていたという。
その友達はそれを知ってただの妬みだと蕾に助言し続けたらしいけど、蕾は変わっていく私も周りの目も耐えきれなくて別れることにしたらしい。
それを聞いて当時の私は全く納得がいかなかったけど、着飾ってない私を最初に好きになってくれたのは蕾だった。
それなのになんで蕾の声を聞かなかったんだろう。
今でも謝りたいけど、あの日から蕾は友達と一緒に私の前から姿を消して大学の卒業式でも顔を見せることがなかった。
本当にごめん。
他人の意見を取り入れるのが上手かった私なのに、蕾の意見は聞くことも感じとることも出来なくて嫌な気持ちにさせちゃった。
今は私よりもちゃんと声を聞いてくれる素敵な人に出会えてるのかな。
環流 虹向/ピンヒールでおどらせて
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