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いつものように目覚ましより5分早く起きた私はまだベッドで寝ている昂を起こさないよう、そっと体を起こし洗面台の鏡の前に立つ。
まず始めはヘアセットの準備。
カチカチと170℃に設定してコテを温める。
その間、洗顔代わりの拭き取り化粧水で寝ている時についた埃をコットンで拭き取って今日の肌のコンディションを鏡でじっくり見る。
うん。
今日もニキビは出来てないし、乾燥もない。
やっぱり、高いものが良いってもんじゃないね。
そう思いながら自分に合った保湿液をしっかり塗り、ホワイトニング効果がある歯磨き粉で歯を磨く。
この暇な時間、首をぐるぐると動かしたりむくみを取るようにマッサージするのももう習慣になって何ヶ月目なんだろう。
…そういえば、妹からもらったむくみが良く取れるルイボスティーがあったんだった。
ふと、それを思い出した私は湯沸かしの音で昂が置きないようにしっかりと寝室の扉が閉まっていることを確認してからケトルに水を入れて沸かす。
煮出しの時間はヘアセットとちょうどくらいだから、メイクしながら体を温めてもらおうと思った私は泡で溺れかける口から歯磨き粉を吐き捨て、そのままキッチンのシンクで口を濯いだ。
そしてちょうど1杯分のお湯を沸かしたケトルから昂とお揃いで買った350ml入る大きめのマグにお湯を注ぎ、それと一緒にまた洗面台へ戻る。
ほわほわとまろやかで香ばしいルイボスティーの香りが薬品いっぱいの洗面台を占領していて、いつもより目が冴えてくる。
そんな目にとろんとしたモカブラウンのカラコンを仕込み、将来の自分のために日焼け止めをムラなく塗る。
自分の肌によく馴染むこの日焼け止めは半年近く探してやっと見つけたけど、ドラックストアでなかなか売ってないからこれを見つけてからは大体通販でまとめ買い。
しかも、肌が出ている部分全てに使うから消費が早い。
だからまたそろそろ頼まないと。
そう思っていると、ぷちゅっとすっからかんになった音がした。
その音は元彼の蕾が拗ねた時に口から漏らす愚痴の音でこれからデートだっていうのに顔に色を乗せる気がなくなる。
けど、今彼の昂が好きな私にならないと。
私はまだ煮出しきれていない熱々のルイボスティーを小さじ半分くらいを口に入れて自分を現実に戻し、温められたコテで直毛を歪ませる。
この巻き方、習得するのに3ヶ月毎日練習してやっと出来るようになったのに、1回も褒めてくれなかったな…。
まあ、あの時は私の肌には馴染まないブラウン系のヘアカラーだったし、褒められたもんじゃなかったのかも。
…あ、また考えちゃった。
蕾と別れてもう4年近く経つのに、まだまだ思い出が溢れてきちゃう。
初恋の相手って訳じゃないけど、初めて告白してもらって初めてお付き合いした初めての彼氏。
ハグやキス、手を繋ぐことも小さい頃にパパと何回もしたことがあるのにそれを思い出さないで蕾を思い出しちゃうのはまだ特別な好きが残っちゃってるからだよね…。
うん。
今日、別れよう。
そう思って、前髪を綺麗なアーチ状に巻き終えると寝ぼけた昂が大あくびをしながら私がいる洗面台に吸い寄せられるようにやってきた。
瞳「おはよ。」
昂「おはよー…。きょーもかわいい…。」
と、昂はまだワックスをつけていない不完全な頭をそっと自分の口に近づけてキスをした。
昂「じゅーじ…、くらいにでよっか…。」
瞳「うん。洗面台空けるね。」
私はある程度の身支度が終わったので低血圧な昂に大きな鏡を譲り、リビングにあるソファーに座って集めたメイク用品が入っている宝箱を開ける。
みんなが可愛いって言ってもときめかなかったくせに、自分を可愛くしてくれるって知ると愛着が湧いて可愛く感じる。
けど、この宝物の匂い、嫌いって言ってたな…。
私も嫌いだったけど、いつから慣れたんだろう。
毎日のように繰り返すこの身支度が私に染み付く頃、蕾は私から離れていった。
蕾は優しくてあまり喋らない方だったからちゃんとした理由は言ってくれなかったけど、別れてから昂と出会ってから分かった。
今の私は蕾の好みのタイプではなくなったこと。
中身は当時からそんなに変わってないけど、見た目が変わると外からの反応が今までとは変わってここにいる私じゃない私が勝手に出来上がる。
それのせいで蕾は私の前から姿を消した。
もし、私があのまま“紅芋ちゃん”って言わても気にせず自分を好きでいれば、蕾もまだ私のことを好きでいてくれたのかな。
もうこんなことを何度考えたって意味がないし、顔が完成しても答えが出ないことは分かってる。
だから今日も気晴らしの1日を始めないと。
私は昨日の夜に決めといた服を着て玄関で少し居眠りをしていた昂を起こし、お気に入りの7センチのピンヒールを入ってデートを始める。
昂「手。」
と、昂は私が1日1度はコケそうになるヒールを心配してマンションのエレベーター前で手を差し出す。
私はその手を取って過ぎ去る今を噛みしめるようにいつもより強く握り返した。
環流 虹向/ピンヒールでおどらせて
まず始めはヘアセットの準備。
カチカチと170℃に設定してコテを温める。
その間、洗顔代わりの拭き取り化粧水で寝ている時についた埃をコットンで拭き取って今日の肌のコンディションを鏡でじっくり見る。
うん。
今日もニキビは出来てないし、乾燥もない。
やっぱり、高いものが良いってもんじゃないね。
そう思いながら自分に合った保湿液をしっかり塗り、ホワイトニング効果がある歯磨き粉で歯を磨く。
この暇な時間、首をぐるぐると動かしたりむくみを取るようにマッサージするのももう習慣になって何ヶ月目なんだろう。
…そういえば、妹からもらったむくみが良く取れるルイボスティーがあったんだった。
ふと、それを思い出した私は湯沸かしの音で昂が置きないようにしっかりと寝室の扉が閉まっていることを確認してからケトルに水を入れて沸かす。
煮出しの時間はヘアセットとちょうどくらいだから、メイクしながら体を温めてもらおうと思った私は泡で溺れかける口から歯磨き粉を吐き捨て、そのままキッチンのシンクで口を濯いだ。
そしてちょうど1杯分のお湯を沸かしたケトルから昂とお揃いで買った350ml入る大きめのマグにお湯を注ぎ、それと一緒にまた洗面台へ戻る。
ほわほわとまろやかで香ばしいルイボスティーの香りが薬品いっぱいの洗面台を占領していて、いつもより目が冴えてくる。
そんな目にとろんとしたモカブラウンのカラコンを仕込み、将来の自分のために日焼け止めをムラなく塗る。
自分の肌によく馴染むこの日焼け止めは半年近く探してやっと見つけたけど、ドラックストアでなかなか売ってないからこれを見つけてからは大体通販でまとめ買い。
しかも、肌が出ている部分全てに使うから消費が早い。
だからまたそろそろ頼まないと。
そう思っていると、ぷちゅっとすっからかんになった音がした。
その音は元彼の蕾が拗ねた時に口から漏らす愚痴の音でこれからデートだっていうのに顔に色を乗せる気がなくなる。
けど、今彼の昂が好きな私にならないと。
私はまだ煮出しきれていない熱々のルイボスティーを小さじ半分くらいを口に入れて自分を現実に戻し、温められたコテで直毛を歪ませる。
この巻き方、習得するのに3ヶ月毎日練習してやっと出来るようになったのに、1回も褒めてくれなかったな…。
まあ、あの時は私の肌には馴染まないブラウン系のヘアカラーだったし、褒められたもんじゃなかったのかも。
…あ、また考えちゃった。
蕾と別れてもう4年近く経つのに、まだまだ思い出が溢れてきちゃう。
初恋の相手って訳じゃないけど、初めて告白してもらって初めてお付き合いした初めての彼氏。
ハグやキス、手を繋ぐことも小さい頃にパパと何回もしたことがあるのにそれを思い出さないで蕾を思い出しちゃうのはまだ特別な好きが残っちゃってるからだよね…。
うん。
今日、別れよう。
そう思って、前髪を綺麗なアーチ状に巻き終えると寝ぼけた昂が大あくびをしながら私がいる洗面台に吸い寄せられるようにやってきた。
瞳「おはよ。」
昂「おはよー…。きょーもかわいい…。」
と、昂はまだワックスをつけていない不完全な頭をそっと自分の口に近づけてキスをした。
昂「じゅーじ…、くらいにでよっか…。」
瞳「うん。洗面台空けるね。」
私はある程度の身支度が終わったので低血圧な昂に大きな鏡を譲り、リビングにあるソファーに座って集めたメイク用品が入っている宝箱を開ける。
みんなが可愛いって言ってもときめかなかったくせに、自分を可愛くしてくれるって知ると愛着が湧いて可愛く感じる。
けど、この宝物の匂い、嫌いって言ってたな…。
私も嫌いだったけど、いつから慣れたんだろう。
毎日のように繰り返すこの身支度が私に染み付く頃、蕾は私から離れていった。
蕾は優しくてあまり喋らない方だったからちゃんとした理由は言ってくれなかったけど、別れてから昂と出会ってから分かった。
今の私は蕾の好みのタイプではなくなったこと。
中身は当時からそんなに変わってないけど、見た目が変わると外からの反応が今までとは変わってここにいる私じゃない私が勝手に出来上がる。
それのせいで蕾は私の前から姿を消した。
もし、私があのまま“紅芋ちゃん”って言わても気にせず自分を好きでいれば、蕾もまだ私のことを好きでいてくれたのかな。
もうこんなことを何度考えたって意味がないし、顔が完成しても答えが出ないことは分かってる。
だから今日も気晴らしの1日を始めないと。
私は昨日の夜に決めといた服を着て玄関で少し居眠りをしていた昂を起こし、お気に入りの7センチのピンヒールを入ってデートを始める。
昂「手。」
と、昂は私が1日1度はコケそうになるヒールを心配してマンションのエレベーター前で手を差し出す。
私はその手を取って過ぎ去る今を噛みしめるようにいつもより強く握り返した。
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