ピンヒールでおどらせて

環流 虹向

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靴擦れ

Today

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「明日、休みだよね?」

大学時代から3年目、同棲してから1年経っても私の休みを把握している今彼のたかは漫画の世界に没頭していた私に唐突な質問してきた。

昂「ひとみと久しぶりに映画見に行きたいと思ってるんだけど、どう?」

と、畳み掛けるように外デートを誘ってくる昂とあの人を私はまた比べてしまう。

瞳「何か見たいのあるの?」

昂「瞳が好きな俳優がこぞって出てるコメディ映画あるからそれ見たいかなって。」

私を軸にいつもプランを考えてくれる昂は今日もまた自分の好きなものを私に共有してくれない。

…もし、らいだったら。

ふと、また元彼のことを考えてしまう私は昂には似合わない未練タラ女って思われてるだろうな。

まあ、昂には元彼の話を1回もしたことないけど。

昂「…嫌?」

と、私が誘いに乗り気になれないことをいち早く察してしまう昂は、最近よくする悲しげな顔をまたしてしまう。

瞳「ううん。久しぶりのデート楽しみ。」

私はまた昂の気持ちを遠ざけてしまったけど3年も付き合っているから情が湧いてしまったのか、デートの誘いを無下に断ることは出来ない。

昂「明日はのんびり起きてカフェ行って映画見よ。」

瞳「うん。わかった。」

インドアな私を休みの日に引きずり出してくれるのは、自分の妹か昂くらい。

大学時代の友達は就職してからなかなか時間が合わなくて遊ばなくなったし、連絡も頻繁に交わさなくなった。

これが学生から社会人になったことなんだなと社会に飲まれてから2年目だけど、やっと実感出来る休日も貰えるようになった。

けど、疲れは1年目から変わらずあって昂とは大学卒業してから1ヶ月に1回外デートすれば良い方。

この前したのは…、3ヶ月前になるのか。

お互いの業種の違いで休みがなかなか被らなくなったけど、家で会えるからなんとなくこの恋人関係が繋がっていたことを今やっと理解する。

しかも、同じベッドで寝ているのにここ1ヶ月近く恋人らしいことはせずにただ寝ていただけだった。

もしかして、このデートで別れるか別れないかを決めるのかな。

それで別れることになったら、貯金が苦手な私はこの家にひとり残されちゃうのかも。

あの時の居酒屋みたいに。

またふと元彼の蕾との記憶が蘇り、今度は目が潤んでしまうと今彼の昂が過去から私を救い出すように頬にそっと手を置き、絆創膏のように唇を合わせて傷に蓋をしてくれる。

けど、蓋するだけじゃ痛みは取れなくてその傷が疼くたびに思い出してしまう。

きっと、明日のデートもその痛みに加わってしまうんだろう。

だから、明日は昂の好きな私でいよう。


環流 虹向/ピンヒールでおどらせて
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