一なつの恋

環流 虹向

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やばいって…。

俺は1人悶々としながら音己ねぇの寝相ではだけてしまうガウンを必死に整えて、零れ落ちそうな胸と脚グセの悪さで裾が乱れまだ見てはいけないものが見えそうなのを必死で隠す。

2人でホテルに来たのは思ってたより終電が早く終わってしまうあの路面電車と、音己ねぇの『帰りたくない』を聞いてしまったせい。

だけど、ずっと好きで今も“好きだった”から“好き”になりかけてる音己ねぇの体と俺の体を合わせる勇気なんかなくて、ただいつも通り寝てたけどこの状況はかなりきつい。

いつもなら寂しいから人の体温を感じたくて抱いていたけど、初めて好きだから抱きたいと思ったからこの衝動の止め方が分からない。

こんなことなら風呂に入んないでそのまま寝ればよかったと思いながら、俺は音己ねぇの下敷きにされた布団を音己ねぇが起きないように少しずつ取り出していく。

昨日寝ずに枯れるまでやっとけばよかったと俺が男として後悔していると、また音己ねぇは動き出した。

俺は下手に音己ねぇに触れないように手を離すと、音己ねぇは眠りながらガウンの紐を解き始めた。

一「…ちょっと。それは無理。」

俺は独り言を漏らしながら音己ねぇの手を掴み、これ以上はだけさせるのを止める。

するとその腕に音己ねぇが抱きついてきて体全部で俺の腕を赤ん坊のように包み込み、動きを止めた。

今この時、俺は悠の抑えられなくなった衝動にとてつもなく共感を得て、腕の下にあるガウン1枚で隠れた音己ねぇの脚を直に触れる。

…やっぱ、触るんじゃなかった。

俺は音己ねぇの太ももの付け根にある少し肉感が盛り上がっている脚をそっと触りながら、俺の顔すぐ下にある音己ねぇの頭をもう片方の腕で引き寄せて匂いを嗅ぐ。

…もっと音己ねぇを感じたいけど、さすがに寝込みは襲えない。

俺は少し湿り気が増した太ももから手を離し、音己ねぇを胸元に抱き寄せて自分の欲のピークが過ぎるのを待つ。

この間は紛れる話題があったから小さくなったけど、今は自我でなんとか小さくしないといけない。

俺は音己ねぇと一緒に見たホラー映画のグロ映像を思い出そうとするけど、魅惑の太ももが俺の手を挟んできてそれどころじゃない。

これで男を知らなくて夢見の中なんて誰が信じるんだろうか。

俺は自分の欲望に屈し、第2の胸とも呼んでいい膨らみをまた揉んでいると本当は触れたい部位側にある指先が濡れたことに驚く。

寝てても体が反応するタイプなのを知り、俺はとっさに手を離すとそれと同時に音己ねぇの頭が動き、バチっと目が合った。

一「…え。いつから起きてた?」

俺は潤んでいる音己ねぇの目に吸い込まれそうになるのを必死で抵抗する。

音己「頭の匂い嗅がれてる時…。」

だいぶ起きてた…。

俺は自分がしたこと大半を音己ねぇに知られて、死にそうになる。

一「ごめん…。勝手に触って…。」

俺は申し訳なさいっぱいだけれど近距離すぎて目を背けることが出来ず、目を瞑ると音己ねぇがキスをしてきて俺の耳元で一言を捧げた。

音己「触っていいよ。」

俺はその一言で今までの理性がぶっ飛び、悠がおもちと言っていた所を手でも唇でも舌でも触れていき、音己ねぇの初めて聞く声をたくさん出させながら体いっぱいにキスしていく。

音己「あ…、ちょっとまって…っ。」

俺が音己ねぇの体温が1番感じられる肌に指を這わせようとした時、手を掴まれ止められた。

俺はそれで失っていた理性を取り戻し、音己ねぇを見ると俺の事を感じすぎたのか息切れが激しい。

一「…いったの気づかなかった。」

音己「ご、ごめん。止めちゃダメなの分かってるけどこれ以上は怖くて…。」

一「止めていいよ。音己ねぇの体と気持ちが大切。」

俺は音己ねぇに抱きつき、少し火照った肌で音己ねぇを感じる。

音己「…お詫びね。」

と、ずっと熱を帯びて音己ねぇを感じようとしていた俺の肌に音己ねぇは両手で触れて優しく包み込む。

一「いい…、いいって。あとで自分で抜くし。」

そう言うけど、俺の腰は小刻みに動いてしまって嘘がバレバレだ。

音己「これはしたことあるから。」

と、音己ねぇは謎の言葉を言って俺を撫で始める。

一「ちょ、ちょっと待って。なっ…、え?誰と?」

俺はびっくりして音己ねぇの腕を掴み、止めてもらう。

音己「…言えない。」

一「奏じゃないよね…?」

音己「違うよ。そんなことしない。」

俺はその言葉の真っ直ぐさに一安心したけど、謎の男が浮上してきてムカついてきた。

一「俺が知ってる人?」

音己「どうかな。」

一「なんで言いたくないの?」

音己「…嫌われたくないから。」

一「そんなので嫌いになるほど、ガキじゃないよ。」

俺は悲しげな顔をする音己ねぇに抱きつき、腕から手を離す。

一「これからはしないで。俺だけね。」

音己「…うん。」

そう頷いてくれた音己ねぇの手から分けられた体温で俺は気持ちの膿を出し切る。

俺は自分の膿がついてしまった音己ねぇの手を拭くためにティッシュを取り、拭こうとすると音己ねぇは俺の膿を口に含んでいた。

一「…え?何してんの?」

音己「え?メディカルチェックって…。」

俺の質問に驚いた音己ねぇがきょとんとした顔で首を傾げる。

一「それ、誰に言われたの?1人?」

音己「え、うん…。1人としかしてないよ。」

良いけど、嫌だ。

彼氏いたことないのになんでそんなこと知ってんだよ。

俺は音己ねぇの手を引き、洗面台で自分の手を使いながら音己ねぇの手を洗う。

音己「自分で洗えるよ。」

一「俺のじゃなくてそいつの落としてんの。そいつとまだ会ってる?」

音己「友達だから…。」

一「それ、セフレだろ。やってるのは気にしないけど、他人の性癖知るのやだ。」

この間、海斗が言っていたのはこの事かと思い、萎える気持ちがよく分かった。

音己「触るだけだから…。」

一「…もうダメ。会うのはいいけど、触り合うの禁止。」

音己「…分かった。」

なんで音己ねぇがそんなに悲しい顔するんだよ。

そいつの方が俺が触れるより、気持ちいいのか?

俺は知らない男にやきもきしていると、音己ねぇは洗い流した手を俺のガウンで水気を取る前に抱きついてきた。

音己「触るだけで全部してない。そういうのは好きな人としたいからしてないよ。」

一「…本当?」

音己「嘘つかないよ。ずっと…、好きな人のためにとっておいた。」

そう言って音己ねぇは自分がやってしまった行動に反省した顔で俺を見つめてきた。

一「…俺?」

音己「一途だって言ったじゃん。」

だったらなんで他の男と触れ合いっこしてんだよと思ったけど、これ以上問い詰めると泣かせてしまいそうだったから自分の気持ちに蓋をすることにした。

一「ゆっくりね。音己ねぇのタイミングでしよ。」

音己「うん…。」

俺は音己ねぇを抱き締め返して、退出時間までのんびりと過ごし仕事の面接に向かう音己ねぇを見送ってから瑠愛くんの家に帰った。




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