一なつの恋

環流 虹向

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瑠愛くんから携帯1つで完結する仕事をもらって、金を稼ぎながら夢衣と明日出かける場所にあるものを調べていく。

夢衣「無人島初めて行くー♡」

一「俺も。こんな簡単に行けるって知らなかった。」

俺たちでどの海に行くか悩んでる時に悠が助言してくれた、猿島という無人島に明日行くことにした。

夢衣「んー…?無人島だけど、人いっぱいっぽいよ?」

と、SNSでハッシュタグ検索したものを夢衣は見せてくれる。

一「無人島の定義分かんねぇな。」

夢衣「だね。ご飯屋さんもあるっぽいし、普通の島だね。」

一「けど、この廃墟っぽい感じいいよな。」

夢衣「うん!レンガと苔っていいよねー。」

俺たちが猿島のことを話していると、悠が明日家に帰る分の荷物をまとめ終えてリビングに帰ってきた。

一「お疲れ。荷物どんくらいになった?」

悠「そんなに変わんないよ。瑠愛くんの服借りてたし。」

一「そっか。じゃあ手伝いいらないか。」

悠「1人で帰れるよ。」

けど、まだうっすらとある咬み跡が桃汰さんたちの影を思い出して心配になってしまう。

一「まあ、瑠愛くんが送ってくれるよ。」

悠「仕事だから。」

そう言ってオープンキッチンでお茶を淹れる悠はまた拗ねた顔をした。

そんな顔するならもっと甘えればいいのになんでしないんだろうなと思っていると、隣に座ってた夢衣が俺の肩に頭を乗せて拗ねている悠のことを見つめる。

一「眠いか?」

夢衣「ううん。悠ちゃん甘えるの下手っぴだなぁって。」

一「夢衣のは甘えるってよりわがままだけどな。」

夢衣「このお出かけもわがまま…?」

と、夢衣は俺を見て少し心配そうな顔をした。

一「ううん。元から海行こうって約束してたじゃん。」

夢衣「…よかった。一にはもうわがまま言わないようにするの。」

そう言って夢衣は悠を自分の隣に呼ぶと、俺の脚を膝枕にして悠を自分の脚で挟み強制的に座らせてソファーから逃げられないようにした。

夢衣「悠ちゃんは甘えるの苦手なの?」

悠「…瑠愛くんが甘えるの担当だもん。」

悠が少し唇を尖らすと夢衣は愛らしい犬を道端で見つけたように笑う。

夢衣「担当なんかないよ。悠ちゃんが決めつけるだけ。瑠愛くんは今悠ちゃんの彼氏なんだからもっと甘えていいんだよ?」

悠「忙しいよ。」

夢衣「えー…?忙しいから甘えちゃダメなの?」

と、俺が携帯で愚痴聞きの仕事をしている中、夢衣は唇を突き出しながら俺に聞いてきた。

一「どうでもいい奴にダル絡みされたらイラつくけど、好きな人なら忙しくても嬉しいと思う。」

夢衣「私もー。忙しい時ないけど。」

一「大学って夏休みに課題とかないの?」

夢衣「…ないよ!」

一「俺、頭悪いから手伝わないぞ。」

夢衣「えー…。韓国語でレポート20枚書かないといけない。」

一「なおさら無理。」

そう言うと夢衣は悠の腹に脚で抱きつき、俺の膝枕で頭を振って不機嫌を全面に出していく。

一「甘えとわがままは紙一重。夢衣がいいお手本。」

と、俺は悠に向かって伝えると悠は両手で顔の下半分を隠し、顔を赤くして目を潤ませていた。

一「…大丈夫か?」

夢衣「大丈夫じゃないよー。もう単位落とせないよー。」

一「夢衣じゃな…」

悠「夢衣さん。」

と、悠はいつもより少し低い声で夢衣を呼んだ。

夢衣「悠ちゃん韓国語出来る?」

悠「出来ないし、夢衣さん可愛くて集中出来ない。」

夢衣「えへっ♡ありがとう♡」

悠「この脚あと3秒で解いてくれなかったら襲う。」

そう言って悠は早口でカウントダウンを始めて夢衣が驚いて固まっている間に0を迎えてしまった。

悠「私、甘えられないけど積極性はあるよ。」

目が変わった悠は素早く体をねじりソファーの上に膝立ちをすると、脚がゆるく絡んだままになっている夢衣のシャツの下に手を入れた。

夢衣「…え?」

一「ち、ちょっと…、まっ…」

悠「女の子の好きなとこ、私分かるよ。」

悠がそう言うと、夢衣は胸辺りでうごめく悠の手に合わせて恥ずかしそうに声を漏らす。

一「ちょっと…、俺、クラスメイトのそんなとこ見てられないんだけど。」

俺は悠の腕を掴み、1度動きを止めてもらう。

悠「ずっとこのおもち触りたかったし、さっきから私のお腹にずっとある脚綺麗すぎるんだもん。」

悠は今欲求が勝ってるのか少し怒ってるように聞こえる。

一「…綺麗なものを触りたくなるのは分かるけど、これじゃあレイプだよ。夢衣の合意ないじゃん。」

そうだったと悠は言ったけど、少し名残惜しそうにして夢衣の胸から手を離し、ブラを直すとソファーに座った。

一「夢衣も。悠がこの間、ちゅーしたいって言ってたんだから簡単に肌触れ合わせるなよ。こんなの生殺しだよ?」

夢衣「…ごめんね。瑠愛くんを嫉妬させる冗談だと思ってた。」

そう言いながら夢衣は起き上がり、悠の顔を申し訳なさそうに覗き込む。

悠「私は女の子とするのも、男の子とするのも出来る。けど、出来るなら可愛い子のもちもちふわふわの肌触りたいって思うの。だから今度こういうされたら止められないかも。」

夢衣「…触るだけ?」

悠「可愛い子の気持ち良さそうな顔見れるなら全部するよ。」

悠は体が疼くのか、少し腰むずかせて夢衣に怒った。

夢衣「…分かった。ごめんね。」

と、夢衣はずっと怒ったままの悠にキスをした。

夢衣「瑠愛くんといれなくて寂しい時は私とちゅーしよ。」

悠「…いいの?」

夢衣「私も寂しい時ちゅーしたくなるから。口貸して?」

悠「…うんっ。」

悠が少し照れ笑いをしながら頷いたけど、本当にいいのかと俺1人で困惑しているとリビングの扉が勢いよく開き、目が潤んだ瑠愛くんがやってきた。

瑠愛「昨日、いっぱいしたじゃんっ。今日もしたじゃん…。」

悠「やっぱり…、女の子の体好きなの。」

瑠愛「俺は…」

と、瑠愛くんは俺と一瞬目を合わせて外に飛び出してしまった。

一「おい!何やってんだよ。瑠愛くん泣かせるな。」

悠「…だって、だってさ。好きなの…、変えようとしても、変えられないの。」

そう話してくれた悠は泣き出してしまった。

夢衣「…ひーくん。瑠愛くん呼び戻してきて。私、悠ちゃんと瑠愛くんにちゃんと謝りたい。」

一「分かった。」

俺は急いで瑠愛くんを追いかけると、マンションの出入り口にある生垣の影に瑠愛くんは隠れていて、小さくなるように膝を抱え顔を埋めていた。

一「瑠愛くん、ごめん。俺がいたのにちゃんと止めなかったのが悪い。」

けれど、瑠愛くんは首を振り無言のままで鼻をすする。

一「夢衣が瑠愛くんに謝りたいんだって。俺たち瑠愛くんと悠に甘えすぎた。今日はとりあえず将の家に…」

と、俺が家を出る話をしようとすると瑠愛くんが顔を上げて俺の腕を引っ張り座らせた。

一「2人は恋人同士なのに、こんな邪魔者たちいたら嫌だよね。けど、その邪魔者たちのせいで悠と別れようなんて思わないで。」

悠は瑠愛くんが好きだから。

女の体が好きでも、瑠愛くんが好きだから付き合ってるんだ。

瑠愛「…別れないし、同棲するし、結婚する。」

と、瑠愛くんは決意を呟いた。

一「…結婚まで考えてんだ?」

瑠愛「うん…。俺みたいの好きって言ってくれる人あんまりいないし。」

そう言うと瑠愛くんは大粒の涙を流してしまう。

瑠愛「…俺、あいつの弟で全部尻拭いしてきたんだ。そのせいでみんなの嫌われ者。ずっと愛なんかない人生だよ。」

一「俺は瑠愛くんのこと、前も今もこれからもずっと好きだよ。」

俺は小さくなる瑠愛くんに抱きつき、なくならないようにする。

瑠愛「うんっ…。そうやってちゃんと言ってくれるの一くんが初めてだったから嬉しくて好きになったの。けど、やっぱり恋愛感情が大きくなるのは悠ちゃんで女の子なんだ。」

と、瑠愛くんは苦しそうに息をしながら話してくれる。

瑠愛「悠ちゃんの中でもこういう好きの違いがあるって分かるけど、辛いよ。まだ金で体買われた嬢の方がマシだよ。友達とちゅーしてるとこ見たら心臓こそげ落とされるよ。」

俺は瑠愛くんが言ってくれたことでやっと体を買われる理由が分かった。

やっぱり偽愛でも金で買って必要になってしまった時に使うことって大事なんだ。

瑠愛「なんで俺が好きになるのはみんな女の子好きなのかな。本当に神さまってつまんない意地悪好きだよね。」

そう言って瑠愛くんは笑顔を作ったけど、俺は一緒に笑顔を作れなかった。

一「笑顔しなくていいよ。笑ってても神さまなんもしてくれないもん。」

瑠愛「…してないと、何も貰えなかったから癖になっちゃったんだ。」

一「俺の前で笑わなくてもいっぱい愛あげる。ちゅーもしちゃおう。瑠愛くんは幸せが溢れるように笑ってる顔が1番可愛いよ。」

俺は少ししょっぱい唇を食べながら瑠愛くんの辛いのを吸い取ろうと頑張る。

けど、それは悠しか本当は出来なくてやっぱり俺は何もしてあげられないんだ。

瑠愛「ありがとっ。俺、すごい自分勝手なのに好きでいてくれるの嬉しい。」

と、瑠愛くんはいつものようにキスした時の笑顔を見せてくれた。

一「俺の方が自分勝手だから大丈夫。悠と仲直りしよ。」

瑠愛「うん!あ、一くんも夢衣ちゃんも家から出なくていいよ。これは俺と悠ちゃんの問題だから2人が家にいるのは関係ないよ。」

一「…本当に?」

瑠愛「うんっ…。俺、もちもちふわふわになるから!悠ちゃんが初めて好きになる男の体になるよ。」

そう言って瑠愛くんは立ち上がり、俺の手を引いて部屋に戻ると瑠愛くんと悠は同時に謝った。

俺は2人のこれからの話をなるべく邪魔しないようにしっかりと謝罪した夢衣と俺の部屋に行き、明日の話の続きをすることにした。





→ 渇き
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