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俺はみんなが寝静まっている早朝から学校の校門前で姐さんを待っていると、眠そうな栄美先生と海阪先生が一緒に出勤してきた。
一「おはようございます。」
栄美「おはよう。まだ学校始まってないぞー。」
俺がいつも以上に早く来たことを驚く栄美先生は校門を開けてくれる。
海阪「…入らないのか?」
と、まだ外で待ち続けるような仕草を俺がするのを見て海阪先生が不思議そうに質問してきた。
一「はい。友達にJ ORICONNの絵を見せる約束しててここで待ち合わせしてるんです。」
海阪「そうなのか。早めに体育館倉庫開けとく。」
一「ありがとうございます!」
俺は先生たちを見送って何度も携帯の時計とメッセージを意味もなく見返していると、心地のいいヒールが鳴る音が聞こえてきた。
一「おはよう。」
俺は約束通り会いにきてくれた姐さんに手を振り、駆け寄る。
さき「…おはよ。」
一「仕事後にごめん。けど、今日提出しちゃうからこの時間になっちゃった。」
さき「いいよ。一たちの絵見たかったから。」
行こうと言って姐さんが俺の学校を指し、俺がその手を取ろうとすると姐さんは素早く空にあげて自分の背中に隠してしまった。
さき「触るのはダメ。」
一「…分かったよ。」
前みたいに不意に触れても受け入れてくれた姐さんはもうここにはいないみたいだ。
俺はもう戻せない関係に1人寂しがりながら姐さんを体育館倉庫へ案内する。
さき「すごいたくさんの色の匂いがするね。」
一「作品を作っても家に置けない人はここに保管してるんだ。俺のも少しあるよ。」
さき「SNSで載せてない作品?」
一「…え?俺、SNSは大体見る専だけど。」
さき「あ…、そうなんだ。」
そう言って姐さんはこんなにも過ごしやすい倉庫の中で、額に汗をかいて何もない場所を見つめる。
一「俺のアカウント、知ってるの…?」
合宿の時に悠に教えてもらった、フリーで稼ぐための準備は細々とやっていた。
けれど、あのアカウントを動かし始めたのは姐さんの悲しいそうな顔しか描けていない時からだから、姐さんには知られてないはずなんだ。
さき「…知り合いかもで出てきたの。」
…そうか。
俺が真面目に入れた連絡先が姐さんが知っている本アドレスだったから、俺のアカウントを見つけてくれたんだ。
一「俺の絵、見てたの?」
さき「見てたよ。私ばっかり描いてたね。」
一「…俺が好きな姐さんは頭に浮かぶのに、あのスケッチブックに描かれるのは初デートの最後に見た姐さんなんだ。」
俺が姐さんの絵のことを話すと姐さんは黙り込んでしまった。
一「俺、納得いく姐さんが描けたら…」
いいのか?
そう言ったらもう姐さんは俺の前に現れてくれないかもしれない。
けど、このまま好きな姐さんがなくなってしまうのは俺が嫌なんだ。
だから、この願い事だけは姐さんに叶えてほしい。
一「俺、納得いく姐さんが描けたらもうこういうことしないから、もう1回だけデートしてほしい。それで俺の思い出に姐さんを残させてほしい。」
俺がまた動き出せるように姐さんを1度だけ、ほんの一瞬だけでいいから抱きしめさせてほしい。
さき「…来週。」
一「え…?」
さき「来週は…、2連休だからいつでもいいよ。」
と、姐さんはゆっくり俺の方を向き、やっと俺を見てくれた。
…やっぱり、そういう姐さんが好きなんだよな。
一「…2連休?」
さき「うん。秋が始まる前の秋休み。」
一「2日間、姐さんと一緒にいていいの?」
さき「そういうことじゃ…」
一「2日間もあったら姐さんと行きたかったとこ全部行ける。俺が途中で振り返らないように全部一緒に行ってほしい。」
…なんで姐さんがそんなに悲しい顔をするの?
そんな顔されたら期待しちゃうじゃん。
一「ずっと話さなくてもいいから。俺の側に2日間いてくれればいいから。お願い。」
これで姐さんを困らせるのは最後にするから。
この夏で姐さんとお別れして、今の彼女に気持ちを切り替えるから『いいよ』って言って。
さき「…どこ?」
一「ど、こ…?」
さき「待ち合わせ。」
ありがとう。
これで姐さんのことが忘れられる。
一「姐さんの家まで迎えに行くよ。昼ぐらいから出かけよう?」
さき「分かった。」
一「うん。ありがとう。」
俺は姐さんを好きだった人にするために、今も好きな姐さんとやりたかったことを消費していく。
一「これが俺と明たちが描いた絵。『天畔の織星』っていうタイトル。」
俺は倉庫入り口のそばに置いておいた俺たちの作品を姐さんに見せる。
さき「…みんな、こんなすごいの描いちゃうんだ。」
一「うん。花畑は将、夜景は奏、2人の顔は海斗で服は明が主軸になって描いたよ。」
さき「一は…?」
一「俺は2人の構図を考えて、この川の気泡と光と影を主に描いた。」
さき「こんな温かそうな天の川、初めて見たよ。」
と、姐さんは目を潤ませながら俺たちの天の川を見て微笑んでくれる。
さき「一の絵も見たい。」
一「いいよ。」
俺は姐さんに天の川も自分の思い出の雨や孤底神殿の絵たちを見てもらい、俺のことを少しだけ知ってもらった。
→ ラストソング
一「おはようございます。」
栄美「おはよう。まだ学校始まってないぞー。」
俺がいつも以上に早く来たことを驚く栄美先生は校門を開けてくれる。
海阪「…入らないのか?」
と、まだ外で待ち続けるような仕草を俺がするのを見て海阪先生が不思議そうに質問してきた。
一「はい。友達にJ ORICONNの絵を見せる約束しててここで待ち合わせしてるんです。」
海阪「そうなのか。早めに体育館倉庫開けとく。」
一「ありがとうございます!」
俺は先生たちを見送って何度も携帯の時計とメッセージを意味もなく見返していると、心地のいいヒールが鳴る音が聞こえてきた。
一「おはよう。」
俺は約束通り会いにきてくれた姐さんに手を振り、駆け寄る。
さき「…おはよ。」
一「仕事後にごめん。けど、今日提出しちゃうからこの時間になっちゃった。」
さき「いいよ。一たちの絵見たかったから。」
行こうと言って姐さんが俺の学校を指し、俺がその手を取ろうとすると姐さんは素早く空にあげて自分の背中に隠してしまった。
さき「触るのはダメ。」
一「…分かったよ。」
前みたいに不意に触れても受け入れてくれた姐さんはもうここにはいないみたいだ。
俺はもう戻せない関係に1人寂しがりながら姐さんを体育館倉庫へ案内する。
さき「すごいたくさんの色の匂いがするね。」
一「作品を作っても家に置けない人はここに保管してるんだ。俺のも少しあるよ。」
さき「SNSで載せてない作品?」
一「…え?俺、SNSは大体見る専だけど。」
さき「あ…、そうなんだ。」
そう言って姐さんはこんなにも過ごしやすい倉庫の中で、額に汗をかいて何もない場所を見つめる。
一「俺のアカウント、知ってるの…?」
合宿の時に悠に教えてもらった、フリーで稼ぐための準備は細々とやっていた。
けれど、あのアカウントを動かし始めたのは姐さんの悲しいそうな顔しか描けていない時からだから、姐さんには知られてないはずなんだ。
さき「…知り合いかもで出てきたの。」
…そうか。
俺が真面目に入れた連絡先が姐さんが知っている本アドレスだったから、俺のアカウントを見つけてくれたんだ。
一「俺の絵、見てたの?」
さき「見てたよ。私ばっかり描いてたね。」
一「…俺が好きな姐さんは頭に浮かぶのに、あのスケッチブックに描かれるのは初デートの最後に見た姐さんなんだ。」
俺が姐さんの絵のことを話すと姐さんは黙り込んでしまった。
一「俺、納得いく姐さんが描けたら…」
いいのか?
そう言ったらもう姐さんは俺の前に現れてくれないかもしれない。
けど、このまま好きな姐さんがなくなってしまうのは俺が嫌なんだ。
だから、この願い事だけは姐さんに叶えてほしい。
一「俺、納得いく姐さんが描けたらもうこういうことしないから、もう1回だけデートしてほしい。それで俺の思い出に姐さんを残させてほしい。」
俺がまた動き出せるように姐さんを1度だけ、ほんの一瞬だけでいいから抱きしめさせてほしい。
さき「…来週。」
一「え…?」
さき「来週は…、2連休だからいつでもいいよ。」
と、姐さんはゆっくり俺の方を向き、やっと俺を見てくれた。
…やっぱり、そういう姐さんが好きなんだよな。
一「…2連休?」
さき「うん。秋が始まる前の秋休み。」
一「2日間、姐さんと一緒にいていいの?」
さき「そういうことじゃ…」
一「2日間もあったら姐さんと行きたかったとこ全部行ける。俺が途中で振り返らないように全部一緒に行ってほしい。」
…なんで姐さんがそんなに悲しい顔をするの?
そんな顔されたら期待しちゃうじゃん。
一「ずっと話さなくてもいいから。俺の側に2日間いてくれればいいから。お願い。」
これで姐さんを困らせるのは最後にするから。
この夏で姐さんとお別れして、今の彼女に気持ちを切り替えるから『いいよ』って言って。
さき「…どこ?」
一「ど、こ…?」
さき「待ち合わせ。」
ありがとう。
これで姐さんのことが忘れられる。
一「姐さんの家まで迎えに行くよ。昼ぐらいから出かけよう?」
さき「分かった。」
一「うん。ありがとう。」
俺は姐さんを好きだった人にするために、今も好きな姐さんとやりたかったことを消費していく。
一「これが俺と明たちが描いた絵。『天畔の織星』っていうタイトル。」
俺は倉庫入り口のそばに置いておいた俺たちの作品を姐さんに見せる。
さき「…みんな、こんなすごいの描いちゃうんだ。」
一「うん。花畑は将、夜景は奏、2人の顔は海斗で服は明が主軸になって描いたよ。」
さき「一は…?」
一「俺は2人の構図を考えて、この川の気泡と光と影を主に描いた。」
さき「こんな温かそうな天の川、初めて見たよ。」
と、姐さんは目を潤ませながら俺たちの天の川を見て微笑んでくれる。
さき「一の絵も見たい。」
一「いいよ。」
俺は姐さんに天の川も自分の思い出の雨や孤底神殿の絵たちを見てもらい、俺のことを少しだけ知ってもらった。
→ ラストソング
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