一なつの恋

環流 虹向

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民泊で奏たちやクラスメイト数人と夜を明かし、トイレを済ましたあと朝飯を食べに茶の間に向かおうとすると廊下でばったり悠と出会った。

一「おはよう。泊まってたんだ。」

悠「うん。今日、海で遊ぶから。」

一「永海と?」

悠「ううん。彼氏。」

なんだよ。
友達が辛い思いしてるのに自分は惚気放題か。

悠「永海、見てない?」

と、俺が永海のことを考えていたのがバレたのか、悠はそう聞いてきた。

一「んー…、そういえば昨日の夜から見てないかも。」

悠「私も。…大丈夫かな。」

なんだ。
ちゃんと心配してるんだ。

俺は自分の早とちりを心の中で静かに謝っていると、悠は俺の手を掴み玄関の方へ足を進める。

一「…な、なに?」

悠「ちょっとだけ一緒に探してほしい。」

一「わ、分かった。」

意外と積極的な所があるんだなと驚きながら一緒に外に出て、民泊の周りを探すけど見当たらない。

一「BBQやった店ら辺まで行ってみる?」

悠はあんまり表情に出さないけど、目はとても心配そうに辺りを見渡していて友達思いな事をしっかり教えてくれる。

悠「…行かない。」

と言って、悠は民泊がある家の方角へ戻ろうとする。

一「え?なんで?」

悠「夏くんもいないから。」

悠は少し寂しそうにそう呟くと、俺の手を離し1人歩いていく。

なんで悠が夏にそんなにも気持ちを入れているのか気になってしまうけど、そこまで踏み込んでいいのか分からない。

悠「夏くんと昨日何話したの?」

一「え?」

悠「泣いてたじゃん。夏くんお疲れだからあんまりいじめないで。」

一「いじめてない。けど、嫌なことは言った。」

悠「なんて?」

一「言わない。」

悠「…そっか。」

と、悠は静かに呟きそのまま会話無く民泊の家に戻ると、永海と夏が風呂上がりなのか湿った髪のまま朝飯を食っていた。

悠「おはよ。」

永海「あー!おはよ!」

夏「おはよう。」

2人とも昨日のことがなかったかのように笑顔を見せるけれど、2人には今まで無かった見えない膜のようなものが張ってある気がしてその理由が知りたくなってしまう。

けど、そんな無神経な事は出来ずに俺はそのまま悠と朝飯を盛り付けて4人で一緒に飯を食べる事にした。

俺は永海に気を使い、悠より早く朝飯を盛り付けて夏の隣に座った。

永海「一は奏たちと散策するの?」

一「その予定。永海も来る?」

永海「私は…」

悠「今日は永海に私の彼氏紹介するの。」

と、悠が会話を割って入ってきた。

さっきは彼氏だけと海で遊ぶみたいなことを言ってた気がするけど、違ったのか?

永海「え!やったー!どんな人?」

悠「永海みたいに元気で優しい人。」

永海「なんか照れるな…。」

永海は少し照れ臭そうに笑い、悠が彼氏のことを打ち明けてくれたことを嬉しそうにする。

悠「永海みたいに人の考えを第一に尊重して、行動するの。そういうとこ好き。」

永海「悠から惚気話聞けるとは思わなかったなぁ。たくさんの人から恋人の愚痴は聞くけど、好きが溢れる惚気話を聞く方が私は好きなんだ。だからもっと教えて!」

悠「んー…、でも今のとこそのくらいかな。」

永海「付き合ってどのくらい?」

悠「今日で5日目かな。」

永海「え!?ホヤホヤなのに3つ?」

悠「だって、永海の方が好きだもん。」

永海「なんか彼氏さんに申し訳ないっ。」

永海は照れながらそう言うけど、悠は少し不服そうな顔をしているのが少し気にかかった。

けど、不確かなことに口出ししちゃだめだなと思い、恋話を耳に流していると悠が俺の顔を覗いてくることに気づき、顔を上げる。

悠「一くんは惚気話ある?」

永海「惚気と言うより武勇伝の方がありそう。」

一「俺、顔はいいから寄ってきやすいんだよな。」

俺は適当に会話を流しながら食べ進めていると、夏が愛海たちに呼ばれサーフィンをしに行ってしまった。

…ずっと、無言で食べ進めていたけど何考えてんたんだろうな。

俺は2人の違和感を聞けないまま、予定通り奏たちと散策しに向かった。




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