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今日はみんなで家に帰る日。
けれど、みんなは昨日の平和呑み会の余韻に浸ってまだ起きていないようで、別荘の中は何も物音がしない。
こんな時は独りを感じてしまうけど、この1週間の間に独りになれないことを教えてもらった。
だから俺の好きな姐さんにも独りになれないことを知ってほしい。
俺は自分の部屋から静かに出て、朝露が照らすベランダに行き姐さんに電話をかけてみることにした。
出ないことは分かりきっているけれど、会えないのであれば声だけでも聞きたい。
声が聞けないなら言葉だけでも交わしたい。
俺は久し振りに見る数字の列に緊張しながら、携帯を耳に当てて姐さんが出てくれる事を祈る。
姐さんが仕事終わりで疲れているのは知ってる。
けど、昼は開店前準備、夜から朝までずっと仕事を姐さんには今の時間くらいしか電話をするタイミングが俺には見つからない。
俺は長く続くコール音に気持ちが切られそうになりながらも、携帯会社が強制的に切るまで待つとコール音が途切れてしまった。
一「…姐さんに、会いたい。」
俺は耳元で携帯を握り締めながら涙で歪んでいく朝日に話しかけると、
『だめ。』
と、俺の耳元で答える朝日。
俺はその声に驚いて携帯の画面を確認してみると、通話時間が刻々と過ぎていくのが表示されているのに気づいた。
俺は慌てて携帯を耳元に戻し話しかける。
一「…姐さん?」
さき『…そうだよ?一から電話してくれたでしょ?』
俺は姐さんにいっぱい聞きたいことがあるけれど、それじゃあ姐さんの爆発してしまった気持ちのカケラは集めきれないから俺は一呼吸置いて会話を続けることにした。
一「今日は晴れてるね。」
さき『…雨だよ?』
…そうだった。
今、旅先だった事すっかり忘れてた。
一「今、奏たちと旅行来てるんだ。いい感じの写真送ろ…」
さき『電話、なんでしたの?』
俺が今見てる景色を写真でお収めようとすると、姐さんは少し暗い声で聞いてきた。
それは何かを求めてるような声だったけど、俺にはその何かが分かってあげられない。
一「姐さんの声を聞きたくて。」
そのことじゃないだろ、俺。
今、ちゃんと言わないと。
さき『…うん。聞けたね。』
姐さんは声を変えず淡白に答える。
その言葉遣いが俺の知ってる姐さんじゃなくてなんだか怖い。
一「姐さんとまた話したくて。」
そうだけど、違うって。
なんで正直に言えないんだよ。
さき『そっか…。話せたね。』
なんで姐さんは俺にそんなに冷たくするんだよ。
少しでも俺と話そうと思って電話に出てくれたんじゃないのかよ。
嫌だったら電話に出なかったらよかったのに…。
さき『元気そうで良かったよ。絵、楽しみにしてる。』
と、姐さんは電話を切ろうとしているのか話を締めようとする。
一「…姐さん、今ひとり?」
さき『ん?…まあそうだけど。』
脈絡のない俺の質問に姐さんは驚いたのか、話を続けてくれた。
一「俺は姐さんのこと、独りに出来ないよ。」
俺は自分の言葉で姐さんに伝えた。
出会って好きになって、それから“姐さん”を好きになって、初めて自分の心の中で生まれた言葉を姐さんに伝えた。
さき『…ひとりでいいの。』
なんでそんなこと言うんだよ。
寂しいじゃん。
怖いじゃん。
辛い、だろ…?
一「寂しいじゃん。」
俺はいっぱい言いたいことはあるけれど、全て伝えてはまた姐さんが爆発してしまう。
そう思って一言だけ、伝えた。
さき『ひとりがいいの。』
俺は姐さんのこと独りにしたくないんだよ。
なんで俺に頼ってくれないんだよ。
一「なんで…」
俺は姐さんの気持ちが分からなくて聞こうとしたけれど、その前に姐さんは俺との電話を切ってしまって俺の言葉は届かなかった。
なんで自分から進んで独りを選んでしまうんだろう。
ずっとひとりでいるのなんか寂しいに決まってる。
1人になる時間は大切だけれど、それでも孤独には人も時間も勝てない。
だから自分のやりたい事、好きな事、一緒にいたい人といるべきなのに好きと言ってくれた俺とはなんで一緒にいてくれないんだろう。
出会った頃から俺が嘘つきでいなければ姐さんとの関係は変化していたのかもしれないけれど、“嘘つき一”じゃなければ姐さん自身を好きになるあの日はやってこなかったんだ。
全部やり直して姐さんの側にいたいと思うけれど、今の気持ちのままで時間なんか戻ることは出来ないし、どの行動が正解かも分からない。
けど、今の俺には何も出来ることがない。
それがなによりも悔しくて初めて両想いになれた姐さんを孤独から守ってあげられないことに自分の無力さを感じて嫌になる。
俺は雨の降る東京のマンションで1人寝ようとしている姐さんを思いながら自分の部屋に戻り、見えない姐さんを抱きながら眠りについた。
→ 雨
けれど、みんなは昨日の平和呑み会の余韻に浸ってまだ起きていないようで、別荘の中は何も物音がしない。
こんな時は独りを感じてしまうけど、この1週間の間に独りになれないことを教えてもらった。
だから俺の好きな姐さんにも独りになれないことを知ってほしい。
俺は自分の部屋から静かに出て、朝露が照らすベランダに行き姐さんに電話をかけてみることにした。
出ないことは分かりきっているけれど、会えないのであれば声だけでも聞きたい。
声が聞けないなら言葉だけでも交わしたい。
俺は久し振りに見る数字の列に緊張しながら、携帯を耳に当てて姐さんが出てくれる事を祈る。
姐さんが仕事終わりで疲れているのは知ってる。
けど、昼は開店前準備、夜から朝までずっと仕事を姐さんには今の時間くらいしか電話をするタイミングが俺には見つからない。
俺は長く続くコール音に気持ちが切られそうになりながらも、携帯会社が強制的に切るまで待つとコール音が途切れてしまった。
一「…姐さんに、会いたい。」
俺は耳元で携帯を握り締めながら涙で歪んでいく朝日に話しかけると、
『だめ。』
と、俺の耳元で答える朝日。
俺はその声に驚いて携帯の画面を確認してみると、通話時間が刻々と過ぎていくのが表示されているのに気づいた。
俺は慌てて携帯を耳元に戻し話しかける。
一「…姐さん?」
さき『…そうだよ?一から電話してくれたでしょ?』
俺は姐さんにいっぱい聞きたいことがあるけれど、それじゃあ姐さんの爆発してしまった気持ちのカケラは集めきれないから俺は一呼吸置いて会話を続けることにした。
一「今日は晴れてるね。」
さき『…雨だよ?』
…そうだった。
今、旅先だった事すっかり忘れてた。
一「今、奏たちと旅行来てるんだ。いい感じの写真送ろ…」
さき『電話、なんでしたの?』
俺が今見てる景色を写真でお収めようとすると、姐さんは少し暗い声で聞いてきた。
それは何かを求めてるような声だったけど、俺にはその何かが分かってあげられない。
一「姐さんの声を聞きたくて。」
そのことじゃないだろ、俺。
今、ちゃんと言わないと。
さき『…うん。聞けたね。』
姐さんは声を変えず淡白に答える。
その言葉遣いが俺の知ってる姐さんじゃなくてなんだか怖い。
一「姐さんとまた話したくて。」
そうだけど、違うって。
なんで正直に言えないんだよ。
さき『そっか…。話せたね。』
なんで姐さんは俺にそんなに冷たくするんだよ。
少しでも俺と話そうと思って電話に出てくれたんじゃないのかよ。
嫌だったら電話に出なかったらよかったのに…。
さき『元気そうで良かったよ。絵、楽しみにしてる。』
と、姐さんは電話を切ろうとしているのか話を締めようとする。
一「…姐さん、今ひとり?」
さき『ん?…まあそうだけど。』
脈絡のない俺の質問に姐さんは驚いたのか、話を続けてくれた。
一「俺は姐さんのこと、独りに出来ないよ。」
俺は自分の言葉で姐さんに伝えた。
出会って好きになって、それから“姐さん”を好きになって、初めて自分の心の中で生まれた言葉を姐さんに伝えた。
さき『…ひとりでいいの。』
なんでそんなこと言うんだよ。
寂しいじゃん。
怖いじゃん。
辛い、だろ…?
一「寂しいじゃん。」
俺はいっぱい言いたいことはあるけれど、全て伝えてはまた姐さんが爆発してしまう。
そう思って一言だけ、伝えた。
さき『ひとりがいいの。』
俺は姐さんのこと独りにしたくないんだよ。
なんで俺に頼ってくれないんだよ。
一「なんで…」
俺は姐さんの気持ちが分からなくて聞こうとしたけれど、その前に姐さんは俺との電話を切ってしまって俺の言葉は届かなかった。
なんで自分から進んで独りを選んでしまうんだろう。
ずっとひとりでいるのなんか寂しいに決まってる。
1人になる時間は大切だけれど、それでも孤独には人も時間も勝てない。
だから自分のやりたい事、好きな事、一緒にいたい人といるべきなのに好きと言ってくれた俺とはなんで一緒にいてくれないんだろう。
出会った頃から俺が嘘つきでいなければ姐さんとの関係は変化していたのかもしれないけれど、“嘘つき一”じゃなければ姐さん自身を好きになるあの日はやってこなかったんだ。
全部やり直して姐さんの側にいたいと思うけれど、今の気持ちのままで時間なんか戻ることは出来ないし、どの行動が正解かも分からない。
けど、今の俺には何も出来ることがない。
それがなによりも悔しくて初めて両想いになれた姐さんを孤独から守ってあげられないことに自分の無力さを感じて嫌になる。
俺は雨の降る東京のマンションで1人寝ようとしている姐さんを思いながら自分の部屋に戻り、見えない姐さんを抱きながら眠りについた。
→ 雨
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