一なつの恋

環流 虹向

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「うひゃー!THE 過疎化!」

と、明が看板の奥に見えるレジャーランドの施設を見て言った。

俺たちは前に道の駅で貰ったパンフレットで決めたレジャーランドに行ったは良いものの、パンフレットに乗っていた色合いとは全く別物の看板がそこにはあった。

夢衣「本当にここ、ぽこもこらんど?」

将「名前的には愛と夢でできた国感あったけどな。」

海斗「ちゃんと住所入れたし看板に書いてある。」

奏「チケットどこで買うんだろ…?」

一「…あそこの1つカーテンが空いてるとこか?」

俺たちがその様子に困惑していると、少し遠くの駐車場に車を停めてきた音己ねぇがやってくる。

音己「入んないの?」

奏「チケット売り場分からない。」

音己「チケットは施設内のアトラクションごとに払うんだ。入場は無料。」

と、言って音己ねぇは1番に入っていく。

俺たちもその後に続いて入っていくと、看板で見た廃れた雰囲気だったぽこもこらんどに少しの色彩が現れる。

「久しぶりの団体様だぁ!嬉しいね、トロルくんっ♡」

キャストとその隣にいた園内キャラなのか、サイのツノのようなのっぽな鼻が特徴的なキツネのきぐるみがふわふわジャンプしながら俺たちに手を振る。

音己「トロルくんだぁ…!奏、写真!」

謎の園内キャラに感激する音己ねぇに全員で驚き、パンフレットを確認してみると金額プランの端っこにいたトロルくんとは全く別の顔をしているトロルくんが嬉しそうに音己ねぇと記念撮影している。

一「トロルくん知ってるの?」

音己「知らないの!?アニメになってましたよね?」

「はいっ!お姉さん詳しいですね!」

キャストの人が嬉しそうに音己ねぇとトロルくんの話をする。

俺たちは置いてけぼりの中、トロルくんと全員集合の写真を撮り、キャストの人にオススメされた5年前に出来た新アトラクションに向かってみることにした。

夢衣「ねねちゃん、トロルくん好きなの?」

音己「面が良いんだよな。奏が生まれる前に1回だけ連れてきてもらった時に知ったんだ。」

奏「どおりで知らないわけだ。」

将「なんで1回だけなんだ?」

その言葉を聞いて音己ねぇは施設内の地図を俺たちに見せてきて、一つ一つ指差して教えてくれる。

音己「延々と上り坂を上がり続けるジェットコースター。」

明「…そんな高いアトラクション見えないけど。」

音己「人が乗るとチェーンが空回る。これは回らないメリーゴーランド。」

海斗「…前に進まないんですか?」

音己「人力で前に進んでた。こっちは置いてけぼり機関車。」

奏「…それも動かないの?」

音己「運転席だけ進んで客は置いてけぼり。あれは登らない観覧車。」

と、歩いていた途中に見えてきた観覧車を指す音己ねぇ。

一「…どおりで誰も来ないわけだ。」

「「「うん…。」」」

みんなが俺の言葉に納得して頷く。

それでも音己ねぇは昔の記憶が思い起こされるのか、1人だけはしゃいで楽しんでいる。

その中でたまに見かけるキャストはヘッドホンをつけてダンスしながら掃除をしていたり、バナナの叩き売りのようにチケットを販売してくる。

その異様さで俺たちは楽しんでいると目的のアトラクションに到着した。

音己「新作のコーヒーカップだって!」

そう言って音己ねぇは躊躇なく俺たち分のチケットを買い、キャストに案内されるまま座らされる。

このコーヒーカップはきっと回ってくれないんだろうなと思いながら俺は奏、海斗、音己ねぇで席に詰められる。

「紳士淑女の皆様!カクテルパーティーにいらしてくださってありがとうございます!」

海斗「湯呑みかと思った。」

一「手抜きか、経費削減か。」

音己「これがぽこもこクオリティ。」

奏「新アトラクション入れるより修理した方がいいと思うんだけどな。」

5年にしては年季が入りすぎているこのコーヒーカップは中古で買ったものなのだろうか、波のような外柄が擦れていて雑な縞模様になっている。

「今日は僕のREMIX聞いていって下さい!」

将「REMIX…?EDM!?」

明「DJ B!ぶちあげろぉ!!」

夢衣「HeartはArt!」

ノリノリな隣の様子を見て俺は携帯を取り出し、動画に取ることにした。

お兄さんがかけた曲はある巨大な夢の国が見せた世界に怒っている内容の曲だった。

けれど、このぽこもこらんどの夢かわ闇かわ雰囲気に合っている曲調でコーヒーカップがゆったりと回り、クラブようなカラフルなライティングで目を眩ませ1曲を終えた。

明「たのぢいぃぃいいっ!」

夢衣「もう一回乗りたい!」

将「お兄さん!まだ曲あるんですか!?」

「あるある!もっと乗って!」

夢衣たち3人は相当ハマったらしくまた乗りに行った。

奏「自由度高い遊園地だね。」

海斗「今日は俺たちくらいしか客いないっぽいしな。」

一「暇を極めたキャストの遊び場だな。」

俺たちは3人がまたカクテルパーティーをしているのを眺めていると、飲みものを買いに行った音己ねぇが戻ってきた。

一「音己ねぇもまた乗る?」

音己「目が痛むから休憩。」

と言って、日に照りつけられて暑くなったアルミベンチに着ていたシャツを敷いてタンクトップ姿になった音己ねぇはサイダーを飲みだす。

音己「好きなの飲め。」

音己ねぇは俺たちにも買ってきてくれたらしく、カバンの中から見たことないラベルの炭酸ジュースを出して俺たちにくれた。

俺たちは3人が戻るまでその様子を眺めていると、お兄さんと何かを話出す明たち。

また別の曲をかけてもらうのかと思っていると、明が俺たちを呼ぶので柵越しに会話をしに行く。

明「ここ宣伝したら生涯フリーパスくれるって!」

何も知らない俺たちはその言葉に驚き固まる。

「いやぁ、ここ1ヶ月の来場者が2桁ギリ超えるかくらいで、いつも近場のお年寄りの散歩コースになっちゃってて稼ごうにも稼げないんですよ。」

と、さっきまで音楽をかき鳴らしてたお兄さんが頭を掻きながら照れ臭そうに言う。

「若い人が来るなんて半年ぶりで今後もしかしたら来ないかもしれないんで、SNSとかに拡散していただけると助かるんですけど…。」

申し訳なさそうにお兄さんは言うけど、それだけで生涯フリーパスをもらってもいいものなんだろうか。

明「俺のアカウントだったら見てくれる人多いから多分来てくれますよ!」

夢衣「私のも!館長さんやトロルくんのためだもん!」

一「館長さん…?」

将「このお兄さんが2代目の館長さんらしい。」

そうなんですよーと腰が低いそのお兄さんは栄美先生と同じくらいの年齢に見える。
そんな年齢でこんな大きい園を任せられてるなんて凄いなと俺は感心してしまった。

音己「過疎ってるぽこもこらんどが好きだけど、金がないと無くなるからやるしかないな。」

音己ねぇは生涯パスポートが欲しいのかすぐに頷く。

「ありがとうございます!僕、全部のアトラクション動かせるんで撮影したいもの教えてください!」

館長さんはぽこもこらんどの案内を俺たちにしながら撮影をして、万垢の明と夢衣のSNSを使って投稿した。

これでどうにかなるといいけど、うまくいかないのがこの世界だから俺は星も降らない空の夕焼け雲にうまくいくように願って俺たちは別荘に帰った。




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