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…あ、俺ここで寝ちゃったんだ。
俺は音己ねぇと携帯でホラー映画を楽しみながら寝てしまったらしい。
座ったまま首を寝違えてしまい、刺す痛みを感じる自分の首を擦りながら俺の脚を枕にしている音己ねぇを起こす。
一「音己ねぇ、起きて。脚痺れて動けない。」
音己ねぇの肩を揺らすが奏と似て眠りが深く、肩を揺らす俺の手を叩いて自分の眠りに専念する。
俺は手元にあるあと3%しかない携帯で1分後にアラームを設定して鳴らすと、音己ねぇはやっと目を覚ましそのまま体を伸ばす。
一「脚痺れた。」
俺は音己ねぇに退いてもらおうと思いそう伝えると、音己ねぇは伸ばし続ける体を移動して俺の両脚に乗りさらに痺れを強めさせる。
音己「いい具合のクッションだな。」
背中がよく伸びると言って音己ねぇは気持ちよさそうに深呼吸をする。
一「腹出てる。」
俺は名前の通り、猫の様に気ままな音己ねぇのシャツの下から少し見える腹を撫でると今までに聞いたことない可愛く艶っぽい声が聞こえて思わず体が反応してしまう。
…こんなこと、今までなかったのに。
俺は音己ねぇに対して初めての感情を抱き、困惑しながら急いで枕で隠す。
一「…びっくりした。」
音己「なにが?」
音己ねぇはなにも気にしてない様子で俺を見て不思議そうな顔をする。
俺はその顔にも動揺してしまい、目を泳がせていると音己ねぇは体制を変えて俺の抱いている枕に上半身を置いて俺の顔を覗いてくる。
その音己ねぇの重みが刺激になり、自分の困惑が肥大化する。
音己「どうした?熱か?」
一「…ち、違う。なんでもない。」
音己「…?」
と、俺が答えると音己ねぇはそのまま俺の上で自分の携帯をいじり出し、最近の日課と言っていた無料マンガのチケット消費を始めた。
一「そういうの…、読むの?」
俺は音己ねぇが読み進める少女マンガを覗いて困惑を小さくしていくことにした。
音己「私の人生ではありえないことが起こってくれるからな。」
と、音己ねぇは目が飛び出た主人公の表情を見て腹を抱えて笑う。
数ページしかその主人公を俺は知らないけれど、自分の気持ちを顔に出して素直な言葉を届けている生き方に勝手に憧れる。
一「こういうの憧れたりする?」
俺はそういう主人公に憧れるので、あまり表情を変えない音己ねぇもそう思っているのかなと思い聞いてみた。
音己「…するけどないね。」
そう言って、また違う作品を読み始める音己ねぇ。
どれも恋愛ものの話でみんな必死に自分の想いを叶えようともがいている。
その中で音己ねぇは動く登場人物を感情豊かに見守っていく。
その様子を見て俺は今ここにいる音己ねぇは昔と変わらないんだと、今気づけた。
俺の好きな牛乳を毎朝、日が明ける頃に持ってきていた音己ねぇはちゃんとまだいるんだ。
俺は自分を隠すのに必死で全く気づけなかったことに反省し、音己ねぇに聞いてみる。
一「牛乳は?」
俺がそう言うと泣き笑いするほど楽しんでいた音己ねぇの表情が固まり、今の音己ねぇに戻ってしまう。
音己「…冷蔵庫、だろ。」
違う。そうじゃない。
いつも持ってきてくれた時に言ってくれたじゃん。
一「牛乳は?」
俺はもう1度聞く。
お願いだ。もう失いたくないから言ってほしい。
音己ねぇは携帯から目を離して俺を見上げる。
その目はまっすぐと音己ねぇを見る俺をとらえる。
音己「おはよう、…だろ。」
音己ねぇはそう言うと唇をきゅっと噛み、巾着袋の口になる。
一「おはよう。」
俺はあの日に言えなかった言葉を音己ねぇに伝える。
音己「…おは、よう。」
音己ねぇは巾着袋からあの日以来言ってくれなかった言葉を取り出してくれた。
俺はその言葉を聞けて嬉しくなり、音己ねぇとずっとしたかったことを言ってみることにした。
一「音己ねぇと水曜に出かけたい。」
音己「なんで。」
一「水曜日の放課後、いつも遊んでくれたじゃん。」
音己「…。」
音己ねぇは眉間にしわを寄せて枕に顔を埋めてた。
その枕の下にあった困惑はいつのまにか小さくなっていて、音己ねぇがかける圧はさっきより優しく感じる。
少しして枕に埋めていた顔を音己ねぇは上げて、
「いいよ。」
と、あの日最後に見た笑顔を見せてくれた。
俺と音己ねぇであの日ぶりの“お出かけ”を約束して、いい出汁の匂いがするキッチンに一緒に向かった。
→ stay with me
俺は音己ねぇと携帯でホラー映画を楽しみながら寝てしまったらしい。
座ったまま首を寝違えてしまい、刺す痛みを感じる自分の首を擦りながら俺の脚を枕にしている音己ねぇを起こす。
一「音己ねぇ、起きて。脚痺れて動けない。」
音己ねぇの肩を揺らすが奏と似て眠りが深く、肩を揺らす俺の手を叩いて自分の眠りに専念する。
俺は手元にあるあと3%しかない携帯で1分後にアラームを設定して鳴らすと、音己ねぇはやっと目を覚ましそのまま体を伸ばす。
一「脚痺れた。」
俺は音己ねぇに退いてもらおうと思いそう伝えると、音己ねぇは伸ばし続ける体を移動して俺の両脚に乗りさらに痺れを強めさせる。
音己「いい具合のクッションだな。」
背中がよく伸びると言って音己ねぇは気持ちよさそうに深呼吸をする。
一「腹出てる。」
俺は名前の通り、猫の様に気ままな音己ねぇのシャツの下から少し見える腹を撫でると今までに聞いたことない可愛く艶っぽい声が聞こえて思わず体が反応してしまう。
…こんなこと、今までなかったのに。
俺は音己ねぇに対して初めての感情を抱き、困惑しながら急いで枕で隠す。
一「…びっくりした。」
音己「なにが?」
音己ねぇはなにも気にしてない様子で俺を見て不思議そうな顔をする。
俺はその顔にも動揺してしまい、目を泳がせていると音己ねぇは体制を変えて俺の抱いている枕に上半身を置いて俺の顔を覗いてくる。
その音己ねぇの重みが刺激になり、自分の困惑が肥大化する。
音己「どうした?熱か?」
一「…ち、違う。なんでもない。」
音己「…?」
と、俺が答えると音己ねぇはそのまま俺の上で自分の携帯をいじり出し、最近の日課と言っていた無料マンガのチケット消費を始めた。
一「そういうの…、読むの?」
俺は音己ねぇが読み進める少女マンガを覗いて困惑を小さくしていくことにした。
音己「私の人生ではありえないことが起こってくれるからな。」
と、音己ねぇは目が飛び出た主人公の表情を見て腹を抱えて笑う。
数ページしかその主人公を俺は知らないけれど、自分の気持ちを顔に出して素直な言葉を届けている生き方に勝手に憧れる。
一「こういうの憧れたりする?」
俺はそういう主人公に憧れるので、あまり表情を変えない音己ねぇもそう思っているのかなと思い聞いてみた。
音己「…するけどないね。」
そう言って、また違う作品を読み始める音己ねぇ。
どれも恋愛ものの話でみんな必死に自分の想いを叶えようともがいている。
その中で音己ねぇは動く登場人物を感情豊かに見守っていく。
その様子を見て俺は今ここにいる音己ねぇは昔と変わらないんだと、今気づけた。
俺の好きな牛乳を毎朝、日が明ける頃に持ってきていた音己ねぇはちゃんとまだいるんだ。
俺は自分を隠すのに必死で全く気づけなかったことに反省し、音己ねぇに聞いてみる。
一「牛乳は?」
俺がそう言うと泣き笑いするほど楽しんでいた音己ねぇの表情が固まり、今の音己ねぇに戻ってしまう。
音己「…冷蔵庫、だろ。」
違う。そうじゃない。
いつも持ってきてくれた時に言ってくれたじゃん。
一「牛乳は?」
俺はもう1度聞く。
お願いだ。もう失いたくないから言ってほしい。
音己ねぇは携帯から目を離して俺を見上げる。
その目はまっすぐと音己ねぇを見る俺をとらえる。
音己「おはよう、…だろ。」
音己ねぇはそう言うと唇をきゅっと噛み、巾着袋の口になる。
一「おはよう。」
俺はあの日に言えなかった言葉を音己ねぇに伝える。
音己「…おは、よう。」
音己ねぇは巾着袋からあの日以来言ってくれなかった言葉を取り出してくれた。
俺はその言葉を聞けて嬉しくなり、音己ねぇとずっとしたかったことを言ってみることにした。
一「音己ねぇと水曜に出かけたい。」
音己「なんで。」
一「水曜日の放課後、いつも遊んでくれたじゃん。」
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その枕の下にあった困惑はいつのまにか小さくなっていて、音己ねぇがかける圧はさっきより優しく感じる。
少しして枕に埋めていた顔を音己ねぇは上げて、
「いいよ。」
と、あの日最後に見た笑顔を見せてくれた。
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