一なつの恋

環流 虹向

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「起きろ。ランニング行くぞー。」

俺は少し早めに起きて、今日は夢衣を疲れさせるために外に連れまわすことにした。

夢衣「…眠いぃ。」

一「俺も行くから早く準備しろ。」

俺自身も眠いが夜の天体観測のためにも動かないといけない。

夢衣「ひーくんとはお散歩がいい…。」

夢衣は布団に包まったまま俺にそう言った。

一「それでもいいから行くぞ。」

俺は夢衣の体を起こし着替えさせて玄関に向かうと、寝起きの海斗と鉢合わせる。

海斗「どこか行くのか?」

一「夢衣と散歩してくる。」

夢衣「2人で!」

夢衣は俺とだけ行きたいらしく、海斗にピースサインをしながら言った。

海斗「気をつけて。」

海斗は顔色を変えずに朝食を作りに行ったけれど、俺と夢衣が2人でいることに一瞬嫌そうな顔をしていた気がする。

それを夢衣が読み取ってしまったのか、あの発言が出たんだろう。

一「朝飯出来る前に帰るぞ。」

夢衣「えー?ひーくんと一緒ならずっとでもいいけど。」

一「俺、腹減ってるもん。」

俺は靴を履き、先に外に出ると真っ青な空が目の前に広がる木々をいつも以上に青々しく照らしていて、絵画の世界に入ってしまったような感覚になる。

夢衣「いい天気だねぇ…!」

一「だな。」

2人で別荘付近の森林を歩きながら夏らしい天気と自分たちの写真を撮って思い出に残していると、あっという間に朝飯の時間が来ていることに気づく。

一「そろそろ帰らないと、海斗の出来立てロールパン冷える。」

俺は写真を撮っていた携帯をしまい、家がある方角に戻ろうとすると夢衣が俺を引き止めた。

夢衣「もうちょっと2人でいようよ?」

一「俺、出来立て食べたい。」

夢衣「もう1回焼けばいいじゃん。」

一「出来立ての熱が1番美味いんだ。知らないのか?」

俺が夢衣の手を引こうとすると、夢衣はその手を払った。

一「…なんだよ。」

夢衣「いっぱいひーくんと一緒にいれると思ったのに全然いれないじゃん。」

夢衣はまた拗ねた顔をしてむくれる。

一「絵の作業があることは言ってただろ?」

夢衣「車も映画も隣じゃなかったし。」

一「俺はあれがいつも通りだ。車は助手席、映画は奏と音己ねぇに挟まれて見るのが好きなんだ。」

夢衣「寝るとこ違うし。」

一「1人1部屋あるんだから使えた方がいいだろ。」

夢衣「…音己ねぇと仲良いし。」

一「仲良くない。嫌われてる。」

夢衣「嘘。」

一「嘘じゃない。」

夢衣は表情を崩さず、俺と目を合わさないで家がある反対方向を歩き出す。

一「どこ行くんだよ。」

夢衣「あっち。」

一「あっちってどこだよ。」

そう聞いたけれど夢衣は俺に言葉を返さずにどんどん歩いて行ってしまう。

俺はまた気を引かせるためにわがままを言い始めたなと思い、その場で夢衣が振り向くのを待つが夢衣は1度も振り返らずに角を曲がってしまった。

俺は仕方なく走って迎えに行こうとすると、背後から自分の名前が呼ばれ、振り向くと奏が迎えに来ていた。

奏「ご飯もう出来てるよ。…あれ?夢衣さんは?」

一「拗ねて向こう行った。」

奏「迎えに行こっか。」

一「多分、俺1人で行った方がいいと思う。」

奏「…なんで?」

奏は少し心配そうな顔で俺を見る。

一「俺が他人と一緒にいるのが気に食わないらしい。だから奏と一緒だったらキレそう。」

奏「そうだったんだ…。昔より、そういう雰囲気全然出してなかったから分からなかった。」

一「俺も昔よりはいい方向に来てるかなって思ってたけど、まだそうでもないっぽい。」

奏「今日の夜、呑むのやめとく?」

一「いや、元々やる予定だったからやる。」

奏「…分かった。じゃあ俺たち先に食べてるよ?」

一「そうしといて。」

俺は奏とその場で別れて、夢衣が曲がって行った角に行くとすぐの所にしゃがんで俺を睨む夢衣がいた。

夢衣「…遅い。」

一「ごめん。もう少し2人でいるか。」

夢衣「うん。」

俺たちは涼しい木陰で森林浴をしながら何度かキスをしたが、俺が音己ねぇに付けられた傷が痛み顔を歪ませていると夢衣は俺の鎖骨下にキスマークをつけた。

夢衣「隠しちゃダメだからね?」

一「…分かった。」

夢衣「私にもつけて。」

と、俺に首を見せつけてねだる夢衣。

一「夢衣にアザつけたくない。」

夢衣「お揃いにするの。そうしないとおうち帰らない。」

夢衣は俺の口元寸前まで首を近づけてくる。

けど、その場所は髪の毛で隠れてくれる場所じゃない。

一「…山で暮らすか?」

夢衣「森のお姫様になろっかな。」

俺がどう言ってもダメらしい。
俺は自分の腕で夢衣の首を近づけて、望み通り俺とお揃いにする。

夢衣「やったぁ♡じゃあ帰ろー!」

夢衣はすぐに立ち上がり、俺の手を引いて家に帰り始める。
俺は夢衣のわがままはいつなくなるのかと考えたが、近い未来では予想することが出来なかった。




→ 共依存
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