一なつの恋

環流 虹向

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昼前から夢衣と一緒にサイクリングがてら、フードデリバリーの仕事をしていく。

俺はただ夢衣の後をついて行くだけで仕事自体はやってないけど、結構いい運動になる。

一応作った動画をどんどん投稿していくつもりだけど、振込は1ヶ月後だからその間のちょっとした金稼ぎのために始めたは良いものの、ずっと暑いと言ってる夢衣の言葉でさらに汗をかく。

一「今は昼時だからピーク過ぎたら家帰ろう。」

夢衣「もう家帰りたーい。」

と言いながらも、ある程度自由があるこの仕事は夢衣に向いているのか天気に対しての愚痴は言うけど、仕事に対しての愚痴は言うことはなく仕事を終えた。

近場にレンタサイクルを返し、夢衣の家に涼みに行くと夢衣が冷蔵庫から冷えたトマトを出して子ども用のプラスチック包丁で切り始めた。

一「え?夢衣って料理するの?」

夢衣「この頃、奏くんに貰ったこの包丁で料理してるよー。すごく切りにくくてイラつく。」

夢衣は少し機嫌が悪そうに少し日焼けした頬を赤く染めながら調理を始めた。

あの子ども用の包丁は奏が俺の命の危機を感じて勝手にすり替えた包丁で、夢衣はそんなことも知らずまだ使ってるらしい。

夢衣は切りにくいと言ってる割には使いこなしていて、少し乱雑な切り方をしたトマトに砂糖をパラパラとかけた。

夢衣「ママが夏休みのおやつでいつも作ってくれたんだ。」

と言って、俺の目の前にトマト5つ分入った皿を置く。

一「俺、砂糖かけたことない。」

夢衣「え!?すっごい美味しいよ!食べてー♡」

あーん、と言いながら夢衣は2口分のひとかけトマトを俺の口に詰め込む。

俺は若干トマトで溺れながらも、普段より増した甘みが口いっぱいに広がり感動する。

野菜に砂糖をかけるなんてことあるのか、と思ったけどこれは美味すぎる!

俺は夢衣に詰め込まれるまま、トマトを食べるがその美味しさに文句はなかったので腹一杯食べさせてもらった。

一「夢衣ってカップ麺しか食べないんだと思ってた。」

俺は腹一杯になって、ソファーに横になりながら余ったトマトを食べる夢衣の髪の毛を三つ編みにして遊ぶ。

夢衣「元彼もとかれのために料理教室行ってたもん。」

この間から意外な夢衣の生活力に俺は驚く。

俺が思ってるより、夢衣はもう危ない奴じゃないのかもしれない。

一「すごいじゃん。もっと作ってよ。」

夢衣「えー?今トマトしかないよ。」

どう買い物したらそうなるんだと思ったが、この間久しぶりに再会した時よりだいぶいろんなことに前向きに取り組んでくれていて嬉しい。

一「今度一緒に行く旅行でいっぱい美味いの作ってくれるか?」

夢衣「うん!女の子って私だけ?」

一「ううん。音己ねぇいる。」

夢衣「…ねこねぇ?」

一「奏の姉ちゃん。夢衣の2つ上で今は同じくニート。」

夢衣「クビにされたの?」

一「エロじじい成敗したらクビにされたんだって。」

夢衣「本当、上の人って理不尽だよね。」

一「夢衣のクビはまた別の話だろ?」

夢衣「違くないし。」

そう言うと夢衣は拗ねたのか俺に寄りかかり、天井を見上げる。

夢衣「音己ねぇはいつから一緒にいるの?」

一「えー…っと、奏と出会ってからだから3歳くらいの時から。」

夢衣「…ずるい。」

一「って言っても、俺が5歳の時ヘマやらかして音己ねぇに嫌われてからまともに話すことあんまりないよ。」

夢衣「そうなの?」

一「あんまり目合わして話してくれないし、いつも自分優先だから外で会ってもすぐにどっかに行っちゃう。」

夢衣「音己ねぇは彼氏いる人?」

一「仕事はないけど彼氏はいるっぽい。」

この間、俺と海を見たときに彼氏と電話してたことを軽く話す。

夢衣「…私もひーくんと海行きたい。」

夢衣は唇を尖らして不機嫌を表す。

一「コンクールの絵、提出し終わったら行こう。」

夢衣「うん!」

夢衣はそれだけで機嫌を直し、最後のトマトを食べて俺の脚の間に入りドラマを見始める。

その後、少し涼んだ俺は夢衣と別れて学校にいる奏と海斗と一緒に絵を進めた。





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