一なつの恋

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
77 / 188
7/26

7:00

しおりを挟む
「そろそろ準備しないと。」

と、言って夜が明けるまで電話をしていた明が外に出る準備を始めるらしい。

一「…ぁあ、たのしんでこいよー。」

俺はぼーっとした頭のまま返事をして電話を切り、重い頭のまま体を起こしてこの間買ったスケッチブックとえんぴつを取り、ベッドに寝転がる。

隣には天がいるけれど、だいぶ遅くまで一緒に電話していたからまだ起きないだろう。

あの日、思い立ってから何度か姐さんを描いているけど、納得いくものは描けていない。

やっぱり姐さんが目の前にいてくれないと柔らかい長い髪も、つるんとした鼻も、ツヤツヤな唇にある2つの別れたほくろも、全て死んでるようにしか書けない。

頭の中ではあんなに優しく笑っている姐さんなのに、俺が描ける姐さんは最後に見たあの目を潤ませ寂しそうな姐さんしか描けない。

そんな姐さんの絵を俺はこの間登録したSNSに載せると、ここ最近フォローしてくれた『みやこ』さんから1番で♡が送られてくる。

その後も他の人からたくさんのシェアやイイネをしてくれるけど、それで俺の心は満たされることはないんだ。

今日もそんな姐さんしか描けなくて枕に涙を埋めていると誰かからメッセージが届いた音がする。

俺は姐さんかと毎回淡い期待を寄せながら毎回メッセージアプリを開くが今回も違うらしい。

『いっくん、やほー・:*+.\(( °ω° ))/.:+』

るあくんから久しぶりにメッセージが来た。
そういえば月末になったら遊べるって言ってたもんな。

『おはよー。』

今のるあくんはいつも通りみたいですぐにレスがくる。

『おはおは(๑˃̵ᴗ˂̵)♡』
『今週の金曜日にいっくんと俺と俺の友達で遊ぼうと思うんだけどどう?』

友達?

いつもるあくんは遊び仲間を連れてくる時は“知り合い”と言っていたけど、結構仲がいい子なのかもしれない。

この間の紹介してくれようとした子か?

『この間遊んでた子?』

『ううん!この間の子も誘ったんだけど旅行行くから来れないんだ.°(ಗдಗ。)°.』
『金曜に来る子は俺と同じ仕事場で働いてるめっちゃいい子♡♡♡』
『前から紹介したいと思ってたけど、時間合わなかったの(´・ω・`)』

そうなんだ。

意外とるあくんってちゃんとした友達いたんだと1人納得しながらレスを送る。

『仕事あるから21時集合でもいい??』

『え!?いっくん仕事始めたの!?』
『どんなっっっっ!?』

あー…、言ったはいいけどなんて返すか考えてなかったな。

『知り合いの銭湯で色々やってる。』

『へー!この時代に銭湯のバイトって珍しいよね!』
『今度行きたい!( ´³`)♡』

『そのうちね。』

もっと違うものを言えばよかったんだろうけど頭が回らないから仕方がない。

『じゃあ、金曜の21時にいつものところでいい??』

『いいよ。』

『わぁっ♡楽しみ(๑˃̵ᴗ˂̵)♡♡♡』
『俺、イメチェンして行くから楽しみにしといて!』

るあくんまた髪色変えるんだろうか。
俺もそろそろヘアカットしてもらわないと、いい加減もさいからるあくんたちに会う前に行っとくか。

俺はるあくんとのメッセージを終えて、描き終えたスケッチブックを枕の下にしまい夢衣との約束した昼まで寝ることにした。




→ 平行線
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

エンディングノート

環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート [主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。 けれど、そんな明人にオアシスが現れた。 2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。 11/27から19:00に更新していきます。 君と出会って 君と付き合って 君とお別れするまでが綴られている 私が書いた、もぐもぐノート 君がいる、あの時に戻りたいと思った時は いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ そしたらあの日、君と食べたごはんが 1番美味しかったって思い出せるから だから、このノートにはもうペンを走らせない これは君と私のエンディングノートだから 他の人とのもぐもぐ日記はいらないの だけど、また 始められるように戻ってきてほしいな 私はまだ、君をあの街で待ってるよ 君のじゃない、別のお家で 君じゃない人と一緒に Ending Song 君がドアを閉めた後 / back number 転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。

アンコール マリアージュ

葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか? ファーストキスは、どんな場所で? プロポーズのシチュエーションは? ウェディングドレスはどんなものを? 誰よりも理想を思い描き、 いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、 ある日いきなり全てを奪われてしまい… そこから始まる恋の行方とは? そして本当の恋とはいったい? 古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。 ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 恋に恋する純情な真菜は、 会ったばかりの見ず知らずの相手と 結婚式を挙げるはめに… 夢に描いていたファーストキス 人生でたった一度の結婚式 憧れていたウェディングドレス 全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に 果たして本当の恋はやってくるのか?

UNDEAD・L・L・IVE

環流 虹向
恋愛
過激表現多々有〼。 転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE]をつけています。 私はいつも指先ひとつで殺される あの日も 今日も いつまでも だけど、君だけは 私を唯一生かしてくれた だから私は生きてる限り 君が欲している物を全て贈り届けるよ Co Addiction Sweet Little Lies / bülow

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...