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俺は一度家に帰り、なんとなく牛乳臭い体を洗ってから姐さんと待ち合わせしているカフェに入り、先に待っているとガラス窓の向こうに姐さんが歩いてくるのが見える。
俺が手を振ると姐さんは気づいたのか駆け足でカフェに入ってきた。
さき「お待たせ。早かったね。」
一「姐さんも早いじゃん。30分前だよ?」
いつもより長いまつ毛とブラウンのアイシャドウに集まった星屑の乗せている姐さんは目を泳がして何かを誤魔化そうとする。
そういう嘘をつけない不器用な姐さんが俺は好きなんだ。
俺が飲んでいるミルクティーを姐さんは少し飲んで体を冷やす。
いつか見た奄美大島の海のように深く煌めいているロングヘアをウェーブがけた姐さんが少し暑そうに手で顔を仰ぐので俺も手で仰いであげると、恥ずかしそうに笑い顔がほんのりピンクに染まる。
いつもは色づいていないから珍しい姐さんが見れて嬉しいな。
一「今日の映画ってどんなの?」
俺は映画開演までの時間を有意義に過ごすために姐さんが好んで選んだものを知ろうとする。
さき「ん?主人公が来てる服が可愛いの。」
一「…服?」
さき「そうそう。パキッとカラーで予告編見てて楽しかったから。」
映画って内容で決めるもんだと思ってたけど、衣装を見て映画を見ようって思う人もいるんだな。
一「内容は覚えてる?」
さき「んー…。」
と、目線を空に1回転させて考えたけど思い出せなかったらしく、携帯で調べようとする姐さん。
一「いいよ。あと少しで見れるし楽しみにとっとく。」
さき「多分ホラーじゃないはず。」
一「俺、ホラー苦手じゃないし。」
少しカフェで時間を過ごして映画館に行き、上映時間間近に出来立てのポップコーンとジュースを買って席につく。
映画が始まり、内容が進んでいくことにちょっと気分が沈む。
姐さんが選んだ映画は俺のような男を掴まえて憂さ晴らしをする女の話だった。
姐さんは服を見て選んだと言ったけど、本当にそうなんだろうか。
俺に遊ぶのをやめろと忠告したくてこの映画を見せたのではないかと勘ぐってしまう内容だった。
さき「女の子、可愛かったねー。」
映画が終わると姐さんは楽しそうに主役の女の話をするけど、俺はそんなに見る気になれなくて夢中で見てる姐さんの顔を見ながら姐さんの手で遊んでしまい、途中から見るのを止めてしまった。
一「姐さんの方が可愛いよ。」
さき「また、そういうこと言う。」
姐さん嬉しさを隠すために唇を尖らした。
俺は少し足を伸ばしてキスしてやろうかと思ったけど、ペースを合わせるんだったと思いぐっと気持ちを抑える。
俺たちは映画館から少し歩いて人気のない小さい公園に入り、屋根付きのテーブルベンチに座って酒屋で買ったウイスキー瓶を開ける。
さき「はぁ…!夏の夜に冷えたウイスキーは最高だね。」
紙コップに作ったハイボールを一気飲みしたのか、もう次のものを作ろうとする姐さん。
一「今日は呑む日?」
さき「…うん!ちょっと呑みたい日!」
さっきから姐さんの様子が変だ。
居酒屋に行こうと誘っても公園で呑みたいと言ったり、いつも一気呑みは下品だから辞めろと俺に注意してくるくせに今は一気呑みをしたり、ちょっと空元気な気がする。
一「なんで今日俺を誘ってくれたの?」
俺はずっと気になっていたことを聞いてみた。
さき「えー…っとねぇ…。」
と、語尾を濁して何か言いにくいことがあるのか俺から視線を逸らす。
俺は体を傾けて姐さんに見てもらえるように、姐さんと呼びながら頭を揺らし続ける。
そんなのを数分していて俺はめまいを感じ、頭を揺らすのを止めて俺側の手で紙コップをずっと持ってる姐さんの人差し指を握り、姐さんを見ながらテーブルに突っ伏す。
一「なんで俺のこと見てくれないの?」
まだ少し熱がこもっている公園でも姐さんの手はすべすべで少し冷えていた。
きっといつも氷を直持ちして削ってるから冷えやすくなっちゃってるんだろうな。
さき「…一は、好きな人出来た?」
俺はその聞き方に嫌な予感がした。
俺は嫌な予感を消したくて姐さんの手を紙コップから離し、両手で力強く握る。
一「ずっと姐さんが好き。」
姐さんは俺の言葉をどう受け取ったのか分からないけど、何かを手放そうとしているような悲しい顔を一瞬してから笑顔を作った。
さき「…私も一のこと好きだよ。」
震える小さい声で姐さんの口から1番聞きたいことを言ってくれた。
俺はその言葉を噛み締めたくて自分の言葉を出すのを忘れていると少し間を置いて姐さんが話し出した。
さき「るあくんと私のお店来てくれたでしょ?半地下に降りる階段を転げ落ちてきた一と初めて目が合ったとき、脳みそが『この人だ』って言って何も知らないのにいいなって思っちゃったの。」
姐さんは目を泳がせながらも少ししたら必ず俺に目を合わせてくれて、しっかりと思いを伝えてくれる。
さき「私のお店で酔いつぶれた時ホテルに寝かせて私は帰ろうとしたんだけど、一はずっと私の手を離さないで『行かないで』ってすごく寂しそうな声と顔で私を帰らせてくれなかったんだ。」
…うん。言ったね。
誰でもいいから一緒にいてほしかった。
姐さんとの関係もあの日の夜で終わるはずだったんだ。
けど、姐さんは俺が眠るまでずっと抱きしめてくれた。
キスもラブホでする行為も何も求めずにずっと俺を包み込んでくれた。
そこで“こういう人が好き”から“姐さんが好き”になったんだ。
さき「夜が明けるまでずっと泣きっぱなしの一が昔の私みたいでどうしても離れられなかった。いつも強がりでみんなのご機嫌を取ってその場を和まそうと頑張る一が好き。」
俺を握った両手を姐さんが握り返してくれる。
一「俺も、姐さんのこと好きだよ。」
俺は姐さんの言葉で気持ちがいっぱいになってそれしか言えなかった。
きっと、もっと冷静だったらしっかり好きなところをたくさん伝えられたんだろうけど、今の俺には無理だった。
さき「だからね、…私の好きな一が素敵な人と幸せになってほしいと思って告白したの。」
一「…え?」
俺はその言葉を聞いて頭が働くなり、姐さんへの想いが目まで込み上げ溢れてしまう。
さき「私、少し前から…、病気で誰かと付き合おうって気になれないの。」
姐さんが握ってくれてた手はだんだんと力をなくしていく。
離さないで。お願い。
俺は姐さんの手が離れるのが嫌で自分の手の力を強める。
さき「…だから、一と付き合えないの。ごめんね。」
姐さんは目を潤ませながらも一滴も涙を流さないで言い切り、俺が強く握ってた手をゆっくりと確実にすり抜け俺の両手からいなくなってしまう。
一「…病気なんか関係ないよ。俺、そんなの気にしないよ?」
姐さんが飲み切った酒を片付け始め、俺は焦る。
なんで何もなかったように綺麗にしちゃうの?
まだ、俺は姐さんと一緒にいたいんだ。
さき「ううん。ダメなの。一と付き合えないの。」
姐さんが片付け終わり、立ち上がろうとするのを俺は手を握り力づくで引き止める。
一「…付き合えなくても、会えないわけじゃないよね?」
さき「私はもう会いたくない…、かも。」
なんで?なんでこうなった?
さっきまで楽しく話せてただろ?
この間、姐さんの店に呑みに行った時だって最後は俺のこと見ててくれるって言ったじゃん。
なんで今、俺を見ずにどこかに行こうとするの?
一「嫌だ。姐さんともっと会いたい。味噌汁も飲みたいし、コンクールの絵だって一緒に見に行けるように頑張る。会わないなんて言わないでよ…。」
さき「…ごめんね。」
姐さんは俺の手を振り払って自分の荷物を手早く持ち、走って公園を出てしまう。
俺は必死に追いかけたけど、大通りに出た姐さんはタクシーを拾ってどこかに行ってしまった。
俺は姐さんが行ってしまったタクシーを見て何も考えられなくなった。
なんで俺が好きな人はこうやっていなくなるんだろう。
…もう、好きだと思うのやめようかな。
俺は1人、姐さんがいなくなった街を歩き、寂しさを埋めるために身近にいた女に声をかけホテルに連れて行った。
→ほんとの僕を知って
俺が手を振ると姐さんは気づいたのか駆け足でカフェに入ってきた。
さき「お待たせ。早かったね。」
一「姐さんも早いじゃん。30分前だよ?」
いつもより長いまつ毛とブラウンのアイシャドウに集まった星屑の乗せている姐さんは目を泳がして何かを誤魔化そうとする。
そういう嘘をつけない不器用な姐さんが俺は好きなんだ。
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一「今日の映画ってどんなの?」
俺は映画開演までの時間を有意義に過ごすために姐さんが好んで選んだものを知ろうとする。
さき「ん?主人公が来てる服が可愛いの。」
一「…服?」
さき「そうそう。パキッとカラーで予告編見てて楽しかったから。」
映画って内容で決めるもんだと思ってたけど、衣装を見て映画を見ようって思う人もいるんだな。
一「内容は覚えてる?」
さき「んー…。」
と、目線を空に1回転させて考えたけど思い出せなかったらしく、携帯で調べようとする姐さん。
一「いいよ。あと少しで見れるし楽しみにとっとく。」
さき「多分ホラーじゃないはず。」
一「俺、ホラー苦手じゃないし。」
少しカフェで時間を過ごして映画館に行き、上映時間間近に出来立てのポップコーンとジュースを買って席につく。
映画が始まり、内容が進んでいくことにちょっと気分が沈む。
姐さんが選んだ映画は俺のような男を掴まえて憂さ晴らしをする女の話だった。
姐さんは服を見て選んだと言ったけど、本当にそうなんだろうか。
俺に遊ぶのをやめろと忠告したくてこの映画を見せたのではないかと勘ぐってしまう内容だった。
さき「女の子、可愛かったねー。」
映画が終わると姐さんは楽しそうに主役の女の話をするけど、俺はそんなに見る気になれなくて夢中で見てる姐さんの顔を見ながら姐さんの手で遊んでしまい、途中から見るのを止めてしまった。
一「姐さんの方が可愛いよ。」
さき「また、そういうこと言う。」
姐さん嬉しさを隠すために唇を尖らした。
俺は少し足を伸ばしてキスしてやろうかと思ったけど、ペースを合わせるんだったと思いぐっと気持ちを抑える。
俺たちは映画館から少し歩いて人気のない小さい公園に入り、屋根付きのテーブルベンチに座って酒屋で買ったウイスキー瓶を開ける。
さき「はぁ…!夏の夜に冷えたウイスキーは最高だね。」
紙コップに作ったハイボールを一気飲みしたのか、もう次のものを作ろうとする姐さん。
一「今日は呑む日?」
さき「…うん!ちょっと呑みたい日!」
さっきから姐さんの様子が変だ。
居酒屋に行こうと誘っても公園で呑みたいと言ったり、いつも一気呑みは下品だから辞めろと俺に注意してくるくせに今は一気呑みをしたり、ちょっと空元気な気がする。
一「なんで今日俺を誘ってくれたの?」
俺はずっと気になっていたことを聞いてみた。
さき「えー…っとねぇ…。」
と、語尾を濁して何か言いにくいことがあるのか俺から視線を逸らす。
俺は体を傾けて姐さんに見てもらえるように、姐さんと呼びながら頭を揺らし続ける。
そんなのを数分していて俺はめまいを感じ、頭を揺らすのを止めて俺側の手で紙コップをずっと持ってる姐さんの人差し指を握り、姐さんを見ながらテーブルに突っ伏す。
一「なんで俺のこと見てくれないの?」
まだ少し熱がこもっている公園でも姐さんの手はすべすべで少し冷えていた。
きっといつも氷を直持ちして削ってるから冷えやすくなっちゃってるんだろうな。
さき「…一は、好きな人出来た?」
俺はその聞き方に嫌な予感がした。
俺は嫌な予感を消したくて姐さんの手を紙コップから離し、両手で力強く握る。
一「ずっと姐さんが好き。」
姐さんは俺の言葉をどう受け取ったのか分からないけど、何かを手放そうとしているような悲しい顔を一瞬してから笑顔を作った。
さき「…私も一のこと好きだよ。」
震える小さい声で姐さんの口から1番聞きたいことを言ってくれた。
俺はその言葉を噛み締めたくて自分の言葉を出すのを忘れていると少し間を置いて姐さんが話し出した。
さき「るあくんと私のお店来てくれたでしょ?半地下に降りる階段を転げ落ちてきた一と初めて目が合ったとき、脳みそが『この人だ』って言って何も知らないのにいいなって思っちゃったの。」
姐さんは目を泳がせながらも少ししたら必ず俺に目を合わせてくれて、しっかりと思いを伝えてくれる。
さき「私のお店で酔いつぶれた時ホテルに寝かせて私は帰ろうとしたんだけど、一はずっと私の手を離さないで『行かないで』ってすごく寂しそうな声と顔で私を帰らせてくれなかったんだ。」
…うん。言ったね。
誰でもいいから一緒にいてほしかった。
姐さんとの関係もあの日の夜で終わるはずだったんだ。
けど、姐さんは俺が眠るまでずっと抱きしめてくれた。
キスもラブホでする行為も何も求めずにずっと俺を包み込んでくれた。
そこで“こういう人が好き”から“姐さんが好き”になったんだ。
さき「夜が明けるまでずっと泣きっぱなしの一が昔の私みたいでどうしても離れられなかった。いつも強がりでみんなのご機嫌を取ってその場を和まそうと頑張る一が好き。」
俺を握った両手を姐さんが握り返してくれる。
一「俺も、姐さんのこと好きだよ。」
俺は姐さんの言葉で気持ちがいっぱいになってそれしか言えなかった。
きっと、もっと冷静だったらしっかり好きなところをたくさん伝えられたんだろうけど、今の俺には無理だった。
さき「だからね、…私の好きな一が素敵な人と幸せになってほしいと思って告白したの。」
一「…え?」
俺はその言葉を聞いて頭が働くなり、姐さんへの想いが目まで込み上げ溢れてしまう。
さき「私、少し前から…、病気で誰かと付き合おうって気になれないの。」
姐さんが握ってくれてた手はだんだんと力をなくしていく。
離さないで。お願い。
俺は姐さんの手が離れるのが嫌で自分の手の力を強める。
さき「…だから、一と付き合えないの。ごめんね。」
姐さんは目を潤ませながらも一滴も涙を流さないで言い切り、俺が強く握ってた手をゆっくりと確実にすり抜け俺の両手からいなくなってしまう。
一「…病気なんか関係ないよ。俺、そんなの気にしないよ?」
姐さんが飲み切った酒を片付け始め、俺は焦る。
なんで何もなかったように綺麗にしちゃうの?
まだ、俺は姐さんと一緒にいたいんだ。
さき「ううん。ダメなの。一と付き合えないの。」
姐さんが片付け終わり、立ち上がろうとするのを俺は手を握り力づくで引き止める。
一「…付き合えなくても、会えないわけじゃないよね?」
さき「私はもう会いたくない…、かも。」
なんで?なんでこうなった?
さっきまで楽しく話せてただろ?
この間、姐さんの店に呑みに行った時だって最後は俺のこと見ててくれるって言ったじゃん。
なんで今、俺を見ずにどこかに行こうとするの?
一「嫌だ。姐さんともっと会いたい。味噌汁も飲みたいし、コンクールの絵だって一緒に見に行けるように頑張る。会わないなんて言わないでよ…。」
さき「…ごめんね。」
姐さんは俺の手を振り払って自分の荷物を手早く持ち、走って公園を出てしまう。
俺は必死に追いかけたけど、大通りに出た姐さんはタクシーを拾ってどこかに行ってしまった。
俺は姐さんが行ってしまったタクシーを見て何も考えられなくなった。
なんで俺が好きな人はこうやっていなくなるんだろう。
…もう、好きだと思うのやめようかな。
俺は1人、姐さんがいなくなった街を歩き、寂しさを埋めるために身近にいた女に声をかけホテルに連れて行った。
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