一なつの恋

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
51 / 188
7/17

12:00

しおりを挟む
この間、J ORICONNに提出する絵の構図は決まった。

今日はメインでも土台でもある天の川の星屑はどう表現していくか頭を悩ませながら下書きを進めていく。

奏「ただ描くだけじゃ絶対入選しなさそうだよね。」

将「けどその方法くらいしかないだろ?」

明「うーん…。星の川…?モヤの星?」

海斗「予算もそんなにないしな。」

5人で頭を抱えながら、下書きをある程度終えたキャンバスを眺める。

 すると俺の携帯が鳴り、電話に出ると姐さんからだった。

さき『おはよう。起きてた?』

一「おはよ。起きてる。どうしたの?」

俺は久しぶりの姐さんの声に心躍らせる。

たまに店の道具の買い出しをお願いされたりするからまたその事だろう。
けど、そんな内容でも俺に電話してきてくれたことが嬉しい。

心のどこかで俺の事を覚えていてくれてて、頼ってくれてるってことだからまだ姐さんの中に俺がいるのを感じられる。

さき『映画一緒に観に行こうかなって思ってるんだけど、月曜のお昼って空いてる?』

一「…映画!?」

俺は姐さんの言葉に驚き、声をあげる。

こんな風に姐さんから俺を誘うなんて初めてで体全身で喜びを感じるように拳を天高く突き上げる。

明「ひとぉー…、真剣にやってくれー。」

一「…あぁ、ごめん。すぐ終わるから。」

俺は明たちに謝り、電話を続けるために体育館の出入り口に行く。

こんなチャンス2度とない。
断るなんて選択肢はない。

姐さんが動いてくれたんだから俺はそれに応えるしかない!

さき『ごめんね。忙しいそうだね。』

姐さんは明たちの声を聞いたのか、申し訳なさそうにする。

一「映画行こう!でも次の月曜はバイト入ってるんだ。」

さき『あれ?仕事始めたんだ?』

一「うん。親との縁切った。」

さき『大丈夫?ご飯食べられてる?』

心配そうな声で俺の腹の具合を聞いてくる姐さん。

朝に味噌汁しか飲まない姐さんに言われたくないよ。

姐さんが俺の事を気にしてくれることで嬉しくなり、笑みが溢れてしまう。

一「7月分は貰ってるから大丈夫。」

さき『そっか…。よかった。』

一「姐さんって月曜しか1日休みないの?」

俺は別日に出来ないか聞いてみる。
せっかくなら時間に余裕がある日がいいけどな。

さき『うん。お客さん少ないからね。』

一「んー…、じゃあ再来週の月曜ってこと?」

さき『…そうだね。』

一「俺、夜なら空くよ?」

さき『そっかぁ…。んー…。用事はあるけど…』

と、俺の次に姐さんが悩み始めた。

夜の用事は女友達との何かなのか、それとも男となのか…。

さき『んー…っと、じゃあ1番遅い時間のでも大丈夫?』

姐さんはスケジュール帳を確認してるのか、電話の向こうでペンの音とページを開く紙の音がする。

一「俺は大丈夫。姐さんはいいの?」

さき『本当はエステ行こうと思ってたけど、映画の方が今は大事かな。』

そんなに観たい映画なのか。

俺は後で詳しい時間を教えてもらう事にして姐さんとの電話を終わらせ、またコンクールの絵と向き合いに行った。





→ 君の恋人になったら
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

エンディングノート

環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート [主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。 けれど、そんな明人にオアシスが現れた。 2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。 11/27から19:00に更新していきます。 君と出会って 君と付き合って 君とお別れするまでが綴られている 私が書いた、もぐもぐノート 君がいる、あの時に戻りたいと思った時は いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ そしたらあの日、君と食べたごはんが 1番美味しかったって思い出せるから だから、このノートにはもうペンを走らせない これは君と私のエンディングノートだから 他の人とのもぐもぐ日記はいらないの だけど、また 始められるように戻ってきてほしいな 私はまだ、君をあの街で待ってるよ 君のじゃない、別のお家で 君じゃない人と一緒に Ending Song 君がドアを閉めた後 / back number 転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

アンコール マリアージュ

葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか? ファーストキスは、どんな場所で? プロポーズのシチュエーションは? ウェディングドレスはどんなものを? 誰よりも理想を思い描き、 いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、 ある日いきなり全てを奪われてしまい… そこから始まる恋の行方とは? そして本当の恋とはいったい? 古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。 ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 恋に恋する純情な真菜は、 会ったばかりの見ず知らずの相手と 結婚式を挙げるはめに… 夢に描いていたファーストキス 人生でたった一度の結婚式 憧れていたウェディングドレス 全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に 果たして本当の恋はやってくるのか?

社長から逃げろっ

鳴宮鶉子
恋愛
社長から逃げろっ

同居人以上恋人未満〜そんな2人にコウノトリがやってきた!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
小学生の頃からの腐れ縁のあいつと共同生活をしてるわたし。恋人当然の付き合いをしていたからコウノトリが間違えて来ちゃった!

処理中です...