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嫌な匂いがすると思い目を覚ますと、海坂先生がいつも通りタイトなワンピースを着て髪もメイクもばっちり整えてタバコを吸っていた。
一「…おはようございます。」
海坂「…おう。おはよう。悪いな。」
と言って、海坂先生は窓を開け換気をし始めた。
それほど俺が嫌な顔をしていたらしい。
すると海坂先生は目の前のテーブルに置いてあった冷えた水を俺に差し出してきた。
一「ありがとうございます。」
海坂「すまん。やりすぎた。」
と、この部屋の惨状を見て海坂先生は俺に謝った。
一「大丈夫です。楽しかったんで。」
俺は水を飲みながら海坂先生の様子を見ると、タバコを吸いながら床で倒れて寝る栄美先生を見つめていた。
一「…あの。」
海坂「ん?なんだ?」
一「海坂先生は栄美先生と付き合ってるんですか?」
俺は気になったことを聞いてみた。
海坂「いや、違う。」
と、きっぱり答えられる。
でもその目は好きな人を見るような目だと俺は感じて、その返答に違和感を覚えた。
一「いつから知り合いなんですか?」
海坂「それ…、聞くか?」
海坂先生は初めて俺に困った表情を見せる。
やっぱり、なにかあるよな…?
一「はい。聞きたいです。」
そう言うと、海坂先生はため息をついてタバコを灰皿の上に置いた。
海坂「鈴人は私が育てた。」
一「え?お母さん?」
海坂「違う。あの街に溺れかけた鈴人を見つけて育てた。」
そういえばフルーツ盛りを見た時、朝まで遊んでたって栄美先生が言ってたな。
海坂先生はテーブルの上にあった紙パックのフルーツオレで喉を潤しながら話をする。
海坂「9年前に見つけて顔が好みだったから育てた。恋愛感情は、ない。」
海坂先生は伏せ目がちに静かに燃え進めるタバコを見る。
その目は煙の向こうにいる栄美先生を見てるようにととれた。
俺は海坂先生の言葉の間に、自分と似た嘘の間を感じモヤモヤしてしまう。
一「9年も一緒にいるのにですか?」
海坂「男女の関係が必ずしも、恋愛に発展しないといけない理由はない。」
一「…でも、海坂先生は嘘をついてるように見えます。栄美先生はあんなに好きアピールしてるのになんでなんですか?」
海坂「好きだけで恋愛出来る年頃に戻れるのであれば付き合ってる。けど、結婚はしない。」
一「栄美先生の女遊びのせいですか?」
海坂「私の事情だ。鈴人はなにも悪くない。」
海坂先生は浮腫んでいない顔をつまみ、マッサージを始めると強めに押しているからなのか少し目が潤んでいく。
一「大人でも好きで結婚する人はいますよ。」
海坂「その後を考えなくてもいい奴同士だからだ。」
結婚するなら必然的に将来の事を考えると思うけどなと頭を悩ましていると栄美先生が急に体を起こし、部屋の惨事を見て固まる。
栄美「うわぁ…。恵美さん、報告書出さないといけない?」
海坂「いい。誰も死んでない。」
栄美「それならよかった。日向、おはよう。」
一「おはようございます。」
栄美先生は体を伸ばしながらバキバキと関節を鳴らす。
海坂「爺さんだな。さっさと看取ってもらえる人探せ。」
栄美「俺は恵美さんを看取りたーい!」
肺いっぱい空気を吸い込み、笑顔で声を上げる栄美先生。
海坂「うるさい。ラジオ体操に出ない担任なんかいないぞ。」
栄美「え?やば。俺、やらかしタラ男じゃん。」
栄美先生は自分の腕時計を見て目が泳ぐ。
海坂「生徒が真面目に体操のために起きたんだ。詫び入れろ。」
栄美「はぁ…。今日でポケットマネーは0だな。」
と、栄美先生は自分のポケットから財布をを取り出して現金の確認をする。
海坂「日向、そろそろこいつら起こせ。部屋掃除するぞ。」
一「あ、はい。」
俺は2人を見て、自分に置き換えてしまった。
俺と姐さん。
姐さんは海坂先生みたいに話を逸らし、俺は栄美先生みたいに思いを伝えても求める答えは帰ってこない。
海坂先生が言うように姐さんはなにか俺に秘密があって、それを打ち明けられないから答えを出さないままなのか?
この2人みたいに好き同士付き合えない奴らはこの世界にどれほどいて、俺みたいに思いを伝えてもなお好きを伝え続けている奴はどれくらいいるんだろう。
一「奏、起きろー。」
近くに寝ている奏たちの肩を揺すりながらそんな無意味な事を考える。
そんなことを頭の中で考えたって、誰からも答えは返ってこないのは分かっている。
けど、こんな思いを誰にぶつければいい?
目の前にいる栄美先生にこんなことを話せば、海坂先生の隠し続けた意思を無駄にすることになる。
奏たちに話しても、俺と同じ歳で恋愛偏差値なんか大体同じもの。
この間、明に好きならペースを合わせろと言われたけど、栄美先生のように9年も一緒にいてもなにも発展しないのはどれほど辛い時間だろう。
しかも、海坂先生は意思が固くて他の人を探せと言い出す。
そんなに栄美先生のことを思うのであれば、正直に話して付き合っちゃえばいいのにと思ってしまうのは自分への甘えなんだろうか。
俺は頭を悩ませながら、起きたみんなと部屋の掃除をした。
→ Teenage Love
一「…おはようございます。」
海坂「…おう。おはよう。悪いな。」
と言って、海坂先生は窓を開け換気をし始めた。
それほど俺が嫌な顔をしていたらしい。
すると海坂先生は目の前のテーブルに置いてあった冷えた水を俺に差し出してきた。
一「ありがとうございます。」
海坂「すまん。やりすぎた。」
と、この部屋の惨状を見て海坂先生は俺に謝った。
一「大丈夫です。楽しかったんで。」
俺は水を飲みながら海坂先生の様子を見ると、タバコを吸いながら床で倒れて寝る栄美先生を見つめていた。
一「…あの。」
海坂「ん?なんだ?」
一「海坂先生は栄美先生と付き合ってるんですか?」
俺は気になったことを聞いてみた。
海坂「いや、違う。」
と、きっぱり答えられる。
でもその目は好きな人を見るような目だと俺は感じて、その返答に違和感を覚えた。
一「いつから知り合いなんですか?」
海坂「それ…、聞くか?」
海坂先生は初めて俺に困った表情を見せる。
やっぱり、なにかあるよな…?
一「はい。聞きたいです。」
そう言うと、海坂先生はため息をついてタバコを灰皿の上に置いた。
海坂「鈴人は私が育てた。」
一「え?お母さん?」
海坂「違う。あの街に溺れかけた鈴人を見つけて育てた。」
そういえばフルーツ盛りを見た時、朝まで遊んでたって栄美先生が言ってたな。
海坂先生はテーブルの上にあった紙パックのフルーツオレで喉を潤しながら話をする。
海坂「9年前に見つけて顔が好みだったから育てた。恋愛感情は、ない。」
海坂先生は伏せ目がちに静かに燃え進めるタバコを見る。
その目は煙の向こうにいる栄美先生を見てるようにととれた。
俺は海坂先生の言葉の間に、自分と似た嘘の間を感じモヤモヤしてしまう。
一「9年も一緒にいるのにですか?」
海坂「男女の関係が必ずしも、恋愛に発展しないといけない理由はない。」
一「…でも、海坂先生は嘘をついてるように見えます。栄美先生はあんなに好きアピールしてるのになんでなんですか?」
海坂「好きだけで恋愛出来る年頃に戻れるのであれば付き合ってる。けど、結婚はしない。」
一「栄美先生の女遊びのせいですか?」
海坂「私の事情だ。鈴人はなにも悪くない。」
海坂先生は浮腫んでいない顔をつまみ、マッサージを始めると強めに押しているからなのか少し目が潤んでいく。
一「大人でも好きで結婚する人はいますよ。」
海坂「その後を考えなくてもいい奴同士だからだ。」
結婚するなら必然的に将来の事を考えると思うけどなと頭を悩ましていると栄美先生が急に体を起こし、部屋の惨事を見て固まる。
栄美「うわぁ…。恵美さん、報告書出さないといけない?」
海坂「いい。誰も死んでない。」
栄美「それならよかった。日向、おはよう。」
一「おはようございます。」
栄美先生は体を伸ばしながらバキバキと関節を鳴らす。
海坂「爺さんだな。さっさと看取ってもらえる人探せ。」
栄美「俺は恵美さんを看取りたーい!」
肺いっぱい空気を吸い込み、笑顔で声を上げる栄美先生。
海坂「うるさい。ラジオ体操に出ない担任なんかいないぞ。」
栄美「え?やば。俺、やらかしタラ男じゃん。」
栄美先生は自分の腕時計を見て目が泳ぐ。
海坂「生徒が真面目に体操のために起きたんだ。詫び入れろ。」
栄美「はぁ…。今日でポケットマネーは0だな。」
と、栄美先生は自分のポケットから財布をを取り出して現金の確認をする。
海坂「日向、そろそろこいつら起こせ。部屋掃除するぞ。」
一「あ、はい。」
俺は2人を見て、自分に置き換えてしまった。
俺と姐さん。
姐さんは海坂先生みたいに話を逸らし、俺は栄美先生みたいに思いを伝えても求める答えは帰ってこない。
海坂先生が言うように姐さんはなにか俺に秘密があって、それを打ち明けられないから答えを出さないままなのか?
この2人みたいに好き同士付き合えない奴らはこの世界にどれほどいて、俺みたいに思いを伝えてもなお好きを伝え続けている奴はどれくらいいるんだろう。
一「奏、起きろー。」
近くに寝ている奏たちの肩を揺すりながらそんな無意味な事を考える。
そんなことを頭の中で考えたって、誰からも答えは返ってこないのは分かっている。
けど、こんな思いを誰にぶつければいい?
目の前にいる栄美先生にこんなことを話せば、海坂先生の隠し続けた意思を無駄にすることになる。
奏たちに話しても、俺と同じ歳で恋愛偏差値なんか大体同じもの。
この間、明に好きならペースを合わせろと言われたけど、栄美先生のように9年も一緒にいてもなにも発展しないのはどれほど辛い時間だろう。
しかも、海坂先生は意思が固くて他の人を探せと言い出す。
そんなに栄美先生のことを思うのであれば、正直に話して付き合っちゃえばいいのにと思ってしまうのは自分への甘えなんだろうか。
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