一なつの恋

環流 虹向

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合宿当日。

俺は朝早くに家を出て、集合場所の改札前でまだ来ていない栄美先生と海阪先生を待つ。

すると、先生たちより早く奏が俺の元へやって来た。

奏「やっぱりね。1番に来てた。」

一「早いな。夜までバイトだっただろ?」

奏「そうだよー。でも、一が暇かもしれないなぁって思って。」

と、自慢げに言いながら俺に笑顔を向ける奏。

俺は電光掲示板の時刻表を眺めていたから暇ではない、はず…。

一「…別に暇でもないけど。」

奏「そう?暇じゃない人が電光掲示板ずっと眺めてることある?」

なんだよ。バレてるのか。

一「いつからいたんだよ。」

奏「5分前くらいにカフェでコーヒー買ってる時に見つけた。」

奏は上の階にある早朝から開いていたカフェを指す。

せっかくなら俺も買っとけばよかったな。

一「俺の分はー?」

奏「んー?スコーンは2つ買った。」

一「口、パサパサじゃん。」

奏「半分すればいいだろ。わがまま言うな。」

奏は温かいチップチョコスコーンを俺にくれた。
多分、全部分かってるんだろうな。

そんな奏はオレオが入った食べ応えのあるスコーンを口に咥えて、幸せそうに甘味を感じている。

俺はスコーンを食べながらいい金の稼ぎ方がないか、相談すると奏は眉間にシワを寄せた。

奏「俺はフルで入ってギリギリ留学用の金が集まったけど、3ヶ月でなんとかするって出来るのか…?」

一「学費もだけど、8月分の生活費をまず稼がないと俺の人生終わる。」

奏「…そんなに実家に帰りたくないんだな。」

奏は俺の家の事情は把握しているけど、家族だからもう少し仲良くすればいいのにという顔はするが口には出さない。

まあ、出しても無駄だと思ってるんだろうな。

一「元から帰る気はない。この間ら帰ったらすぐに警察になれだってよ。毎日帰ってたら宗教に勧誘させられる。」

奏「警察官はそんなことしないでしょ。」

一「DV勧誘だ。力と言葉で人をねじ伏せる奴に俺はならない。」

奏「うん。ならないでほしい。」

一「だからいい所あったら教えてくれ。」

奏「分かったよ。探してみる。」

そう言って、奏は持っていたコーヒーを俺に飲ませてきた。
それはミルクの割合が多いカフェ・マンチャードで俺がカフェにあれば必ず頼むものだった。

一「ブラックじゃないんだ。」

奏「まあ、気分な。」

奏は熱そうにコーヒーを飲み始めた。
昔から奏は猫舌だからたまに俺の舌で温度を計らせてくるのが当たり前になっている。

俺は奏が熱と戦う姿見ていると、向こうに栄美先生と海阪先生が一緒にやって来た。

ん?
けどなんか…、海阪先生怒ってない?

海阪「鈴人れいじが寝坊するから生徒が先にいるぞ。」

栄美「ごめんって…。酒奢るから。」

海阪「その言い草やめろって言っただろ?可愛くない。」

栄美「男に可愛い求められても…。」

海阪「可愛いかったからここまで育てたんだ。」

栄美「…男は好きな女にカッコいいって言われたいんだよっ!」

可愛いカッコいい論争をしながら俺たちの元に駆け寄ってくる。

一「近づいてこないでほしい。」

奏「だね。バカップルじゃん。」

俺たちは7歳以上も上の大人に呆れながら挨拶をして、話を逸らし喧嘩を止めてクラスの全員が集まった所でバスに乗り込む。

奏「眠い。」

一「俺はコーヒー飲んだから目覚めた。」

奏「あれはもうコーヒー風味のホットミルクだろ。」

奏はあくびをしながら椅子の背もたれを倒し始める。

明「奏、寝るのー?」

その後ろにいた明が奏に目隠しをする。

奏「早起きしんどいや。」

明「俺はオールしたから深夜テンションだよー。かーちゃんと一緒にデュエットする!」

将「俺、合いの手入れるな。」

将は俺の後ろの席からリズム感皆無の手拍子を始める。

海斗「まずは海阪先生の許可取れよ。」

海斗は本を開きながら隣にいる明に指摘をする。

明「かーちゃぁーん!!俺と歌おうぅぅぅうううっ!」

明が1番後ろの席から1番前に座っている海阪先生に届くように大声を上げる。

すると海阪先生の隣にいた栄美先生がバスの壁についたマイクを取り、

栄美「俺の美声に勝てたら恵美めぐみさんとのデュエット券ゲットだ!!!」

その言葉にクラスのみんなが盛り上がる。

すると、明は俺の真上にあったマイクを勢いよく取って対抗する。

明「みんな!栄美先生の喉潰して、デュエット券ゲットだぜ!」

「「Yeaaaaaaaaaaaah!!!!」」

明たちクラスメイトと栄美先生の歌合戦が始まった車両で俺はコツコツと夢衣にお願いされていた8月分のスケジュールを埋めていった。




→気分上々↑↑
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