一なつの恋

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
38 / 188
7/13

7:00

しおりを挟む
暑い…。

蒸し暑くて目が覚めると夢衣のベッドで俺はそのまま寝てしまったらしい。

まあ、眠気のピークをとっくに超えてたから仕方がない。

俺は水道水を直飲みして水分を取り、昼前の個人面談まで夢衣の部屋の掃除をすることにした。

部屋にある食べかけの食器や弁当箱、カビが生え始めた飲みかけのペットボトルを洗ってゴミ袋に入れる。

こんな汚い所でよく飯が食えるなと思いつつ、ゴミを片付けたら床に放り投げられている服を小さい洗濯機に詰め込んで1度洗いにかけると軋む洗濯機の音で夢衣が目を覚めた。

夢衣「…ひーくん、いる。」

一「夢衣に呼ばれているんだよ。一緒に部屋片付けるぞ。」

夢衣「…はーい。」

と言いながら、夢衣は朝一番にいつもする歯磨きをしに行ってしまった。

俺はマイペースな夢衣を無視して次に皿の洗い物をしてカビた箸を選別して捨てる。

夢衣「あ!それ、ママに買ってもらったやつ!」

と、ちょうど歯磨きを終えた夢衣が今捨てた箸をゴミ袋から救い出した。

一「大切ならカビさせるなよ。」

夢衣「だって洗うの忘れるんだもん。」

一「夢衣が洗いたくないだけだろ。」

夢衣「…そんなことないし。」

俺は箸を洗おうとした夢衣の手を握り、しっかりと目を合わせる。

一「夢衣、今からでもちゃんとしよ。俺が手伝うからまず酒呑むのやめよ。」

夢衣「…遊べなくなっちゃうじゃん。」

一「高校生の時は酒なんかなくても楽しめただろ?」

夢衣「高校生だったからだよ。…今は無理。」

夢衣は俺の手を振り払い、流し場に箸を投げ捨ててベッドに沈み込む。

一「また寝るな!大学は?」

夢衣「…休み!」

嘘っぽいと思いながらも今日分のゴミを出してシャワーを借りながら風呂掃除をする。

風呂はこの部屋の割に綺麗に使ってるらしい。
まあ、元々夢衣は長風呂を良くする奴だったから好きな場所は綺麗に使ってるんだろう。

一「トイレ掃除は夢衣がやれよー。」

と、俺は夢衣に声をかけながら風呂を出ると昨晩のように甘い声で夢衣が返事をしたので、驚いて夢衣が寝ているベッドを見ると自分の体を触り快楽を求める夢衣がいた。

一「…何してんの?」

夢衣「へぇえ?くちゅくちゅしてるの。」

一「なんで?」

夢衣「気持ちいから。」

一「やめろ。多くて2本だ。」

夢衣「…むりぃ。」

付き合ってた時はこんなことなかったのに、なんでこんなこと急にやり始めた?

俺は夢衣の行動に少し恐怖を感じ、服を着て外に出ようとすると濡れた手で顔を掴まれる。

夢衣「もういっかぁーい♡」

一「…なあ。俺、好きな人いるって言ってるじゃん。」

夢衣「私のことでしょ…?」

一「違うよ。」

夢衣「…やだ。…むり。」

夢衣は寂しそうな声で答えるが、俺がそれに応えてしまえば昔に逆戻りだ。

一「無理じゃない。夢衣と俺はもう付き合えないんだ。次のいい人見つけられるように俺と頑張ろ。」

夢衣「ひーくんがいいの。」

一「俺以外にもいい男はたくさんいるよ。」

夢衣「なんで?ひーくんのこと、好きだよ?」

一「わがまま聞いてくれるから好きなんでしょ?それは恋愛の好きじゃないよ。」

夢衣「…そんなことないし。」

夢衣は濡れた指を俺の口の中に入れながら胸を擦り付けてくる。

夢衣「ひーくん、夢衣の味好きって言ってたし、私もひーくんの味好き。両思い。」

一「…夢衣は俺に何してほしいの?」

俺は今の夢衣の求めるものを聞いてみる。

夢衣「前みたいに一緒にいてほしいの。」

一「それは出来ないよ。俺、金稼がないといけないし、コンクールにも出るから昔みたいにずっとはいれない。」

夢衣「ひーくんいつも暇人だったのに…。」

一「…もうその俺はいない。今の俺は夢衣に新しい人見つけてほしいって思ってるよ。」

夢衣「私なんかに見つけられないもん。」

一「なあ…、夢衣。」

俺は後ろを振り返り、夢衣の泣き顔を見ながら話す。

一「夢衣だから好きになる人はいるんだよ。なんで自分で決めつけるの?」

夢衣「いつもいなくなるもん。好きな人も仲良かった子もみーんな私のこと捨てるんだ。」

一「…俺は?」

夢衣「ひーくんもだよ。今捨てようとしてるじゃん。」

一「してないよ。俺は夢衣とずっと友達だよ。」

俺は夢衣を抱きしめる。

一「友達の俺が夢衣の寂しい時に会いに行くからさ、変な男掴まえるのやめよう?」

夢衣「いつでも?」

一「仕事と学校の時は難しいけど、なるべく早く会いに行くよ。」

夢衣「えー…。」

夢衣は不服そうに顔を歪ませる。

一「知らない奴から病気もらうよりはマシだろ。」

夢衣「…そうだけど。」

一「ちゃんと俺のスケジュール教えるからさ、夢衣も酒と男で遊ぶのやめよ。」

そう言うと夢衣は黙り込み、俯いて考え始める。

一「それでちゃんと毎日体にクリームつけて火傷してるとこ、肌荒れしないようにしよう。」

俺は夢衣の顔を唇で引き上げて夢衣と目が合うようにする。

一「毎日家に帰ってクリームをつけるだけで俺はここに来るよ?酒は俺と一緒呑もう?」

夢衣「…それならいいよ。」

一「約束破ったらブロックするからね。」

夢衣「うぅ…、分かった。」

夢衣は少ししぶりながらも、俺の小指をとって指切りげんまんする。

そのあと2人でスケジュール共有アプリを入れて自分たちの7月のスケジュールを簡潔に書き入れたあと、俺は学校に向かった。





→ positions
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ひと夏の恋

環流 虹向
恋愛
一夏の恋日記。 主人公の彼方 夏/かなた なつは、女性専門風俗店で働きお金を稼いでいく。 そのお金で美術専門学校に通い、新しい友達も出来たけれど、高校生の時に付き合っていた彼女の莉李が忘れられずにふとした思い出で寂しくなる。 けれどその寂しさを埋めるために誰かを代わりに置こうとは思わず1人で過ごしていると、ある子に手を引かれ自分の隠していた気持ちを見せるお手本を見せてもらい、自分の気持ちを伝えたい子に伝え始める。 ひとなつの恋にひかれるよ。 もう一度、この手で描くために。 将来のため、君のため、自分のために。 自らの身体だけでなんとかしてきた主人公。 けれど何も芽生えないあの身体に触れることで自分の本心は溶け出し、空気に触れ死んでいく。 批判されると分かっていても、自分がやりたい事のため、生きていくためにはそれをしないといけない。 そして、今日もまた 何でもない人たちと脆く儚い愛を語り、 大切な人たちには砕けても煌めき残り続ける愛を届けられずに日々を過ごしていく。 1話ずつ、オススメの曲を紹介しています。 Spotifyにプレイリスト作りました。 https://open.spotify.com/playlist/08yh0OwB5etrXXEC5LuMJY?si=N-f-0URyRPimdYKj-A2myw&dl_branch=1 サイドストーリーの«一なつの恋»もあります! ・カクヨム ・小説家になろう ・魔法のiらんど ・ノベルアップ+ にも掲載しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...