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眩しくて目を開けると俺の上には薄手の毛布がかけてあり、顔の下には枕が置いてあった。
俺は横を向き、夏が寝ているはずのベッドを見るけれどもぬけの殻だった。
俺は起き上がり、固まった体を伸ばしていると風呂場から足音がこっちにやってくる。
夏「あ、一くん。俺のこと送ってくれてありがとう。」
一「熱、引いたのか?」
夏「うん。薬、買ってくれてんだよね?」
一「ここら辺、周りに何もなさすぎだろ。」
夏「もしかして、遠いあのドラックストアまで行ってくれたの?」
一「1番近いのがそこしかなかったから。」
夏「本当、ありがとう。」
昨日の姿とは別人で晴れた空のように爽やかに笑いながら夏はお礼を言う。
一「俺もシャワー浴びていい?」
夏「もちろん!タオル…」
一「場所知ってる。」
俺はそのまま狭い風呂でシャワーを浴びて汗を流す。
疲れてたとはいえ、夏の家に泊まってしまうとは思ってなかった。
あの日に自分の思いをぶつけて以降、まともに話したことがなかったからさっきも目を見て話せなかった。
…ちゃんと謝ろう。
俺は風呂場から出て、冷やしておいたゼリーを食べる夏の側に寄る。
一「この間はごめん。」
夏「…なんのこと?」
夏は本当に分からないのか、首を傾げて聞いてくる。
一「姐さんの事。」
夏「…俺もごめん。言葉、間違えた。」
一「お前は悪くない。俺が八つ当たりしただけだから。」
夏「俺があの時、機嫌悪かったから当たっちゃった。」
「「…。」」
「「ごめん。」」
2人同時に言葉を交わし、その話はおしまいにした。
俺は乾かしていた自分の服を着て、先に出ると慌てて夏も着いてきた。
夏「お礼したいから今度空いてる日教えて。」
一「いい。そのためにやったわけじゃない。」
夏「じゃあ朝ご飯!食べよう。」
一「お前、ゼリー食ってたじゃん。」
夏「美味しいフルーツ屋あるから!」
夏は俺の腕を掴んで学校に行く道よりも少し先の路地を通り、早朝から開いている青果店にやって来た。
夏「アレルギーある?」
一「ない。」
夏「おじさん、旬のフルーツボール2つください。」
「はいよー。」
と言って、店員が売っていた果物を数個手に持ち、作業台で手早く綺麗に飾り付けしていく。
「おまたせ。また来いよ。」
夏「ありがとうございます!」
夏は店員から貰ったメロンの皮の皿にたくさんのフルーツが盛り付けられた物を俺に1つくれた。
一「こんなの初めて見た。」
夏「あそこの店、メニュー表ずっと作ってないから知らない人多いんだ。冷たいうちに食べよう!」
いただきますと言って、夏はカラフルなフルーツ盛りを食べ始める。
一「いただきます。」
俺もつまようじを手に取り1口食べると、常温に置いてあったはずのフルーツが冷えていてこの暑い日差しの中でも元気が出る。
一「なんでこれ、冷えてるんだ?」
夏「急速冷凍ってやつ使ってるんだって。」
自分の知らない道具がまだまだあるんだなと感心しながら食べ進めると、学校に着く頃には2人して食べきってしまった。
今日は土曜日だけど、海阪先生の特別授業があるから明と一緒に出るつもり。
奏たちはバイトや何やらがあるから出れないらしい。
俺は使い終わった爪楊枝を皮に入れて、しっかり夏の目を見てお礼を言う。
一「美味かった。ありがとう。」
夏「こちらこそ、ありがとね。」
「おー、2人とも早いな。」
と、校門を開け始める栄美先生が眠そうな顔で立っていた。
栄美「そのメロン、ハイカラ町のフルーツボールだろ。また朝まで遊んだのか?」
夏「先生知ってるんですか?」
一「栄美先生も遊び人だったんですね。」
栄美「朝帰りのタクシーで毎回食ってた。…若かったなぁ。」
栄美先生はどこかを見上げながら思い出に浸る。
栄美「まあ、町に飲まれないように気をつけろ。」
「「はーい。」」
俺たちは2人で教室に向かい、授業が始まるのを待った。
→ Ben
俺は横を向き、夏が寝ているはずのベッドを見るけれどもぬけの殻だった。
俺は起き上がり、固まった体を伸ばしていると風呂場から足音がこっちにやってくる。
夏「あ、一くん。俺のこと送ってくれてありがとう。」
一「熱、引いたのか?」
夏「うん。薬、買ってくれてんだよね?」
一「ここら辺、周りに何もなさすぎだろ。」
夏「もしかして、遠いあのドラックストアまで行ってくれたの?」
一「1番近いのがそこしかなかったから。」
夏「本当、ありがとう。」
昨日の姿とは別人で晴れた空のように爽やかに笑いながら夏はお礼を言う。
一「俺もシャワー浴びていい?」
夏「もちろん!タオル…」
一「場所知ってる。」
俺はそのまま狭い風呂でシャワーを浴びて汗を流す。
疲れてたとはいえ、夏の家に泊まってしまうとは思ってなかった。
あの日に自分の思いをぶつけて以降、まともに話したことがなかったからさっきも目を見て話せなかった。
…ちゃんと謝ろう。
俺は風呂場から出て、冷やしておいたゼリーを食べる夏の側に寄る。
一「この間はごめん。」
夏「…なんのこと?」
夏は本当に分からないのか、首を傾げて聞いてくる。
一「姐さんの事。」
夏「…俺もごめん。言葉、間違えた。」
一「お前は悪くない。俺が八つ当たりしただけだから。」
夏「俺があの時、機嫌悪かったから当たっちゃった。」
「「…。」」
「「ごめん。」」
2人同時に言葉を交わし、その話はおしまいにした。
俺は乾かしていた自分の服を着て、先に出ると慌てて夏も着いてきた。
夏「お礼したいから今度空いてる日教えて。」
一「いい。そのためにやったわけじゃない。」
夏「じゃあ朝ご飯!食べよう。」
一「お前、ゼリー食ってたじゃん。」
夏「美味しいフルーツ屋あるから!」
夏は俺の腕を掴んで学校に行く道よりも少し先の路地を通り、早朝から開いている青果店にやって来た。
夏「アレルギーある?」
一「ない。」
夏「おじさん、旬のフルーツボール2つください。」
「はいよー。」
と言って、店員が売っていた果物を数個手に持ち、作業台で手早く綺麗に飾り付けしていく。
「おまたせ。また来いよ。」
夏「ありがとうございます!」
夏は店員から貰ったメロンの皮の皿にたくさんのフルーツが盛り付けられた物を俺に1つくれた。
一「こんなの初めて見た。」
夏「あそこの店、メニュー表ずっと作ってないから知らない人多いんだ。冷たいうちに食べよう!」
いただきますと言って、夏はカラフルなフルーツ盛りを食べ始める。
一「いただきます。」
俺もつまようじを手に取り1口食べると、常温に置いてあったはずのフルーツが冷えていてこの暑い日差しの中でも元気が出る。
一「なんでこれ、冷えてるんだ?」
夏「急速冷凍ってやつ使ってるんだって。」
自分の知らない道具がまだまだあるんだなと感心しながら食べ進めると、学校に着く頃には2人して食べきってしまった。
今日は土曜日だけど、海阪先生の特別授業があるから明と一緒に出るつもり。
奏たちはバイトや何やらがあるから出れないらしい。
俺は使い終わった爪楊枝を皮に入れて、しっかり夏の目を見てお礼を言う。
一「美味かった。ありがとう。」
夏「こちらこそ、ありがとね。」
「おー、2人とも早いな。」
と、校門を開け始める栄美先生が眠そうな顔で立っていた。
栄美「そのメロン、ハイカラ町のフルーツボールだろ。また朝まで遊んだのか?」
夏「先生知ってるんですか?」
一「栄美先生も遊び人だったんですね。」
栄美「朝帰りのタクシーで毎回食ってた。…若かったなぁ。」
栄美先生はどこかを見上げながら思い出に浸る。
栄美「まあ、町に飲まれないように気をつけろ。」
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→ Ben
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