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どこかのゲロと、俺が座っているベンチの背後にある新緑深い木の匂いが混じっている。
匂いもどっかにスクラップ出来たら良いんだけどな。
そう思いながら俺は手帳に匂いの記憶と昨日の日記を書く。
『ゲロ×新緑の夏、ビアガーデンが始まってた。7/1→7/2 アイコン右の子と会った。ケツ満点。』
俺は手帳をカバンにしまって立ち上がり、背伸びをする。
今日は余裕の登校。
ゲロ臭い公園でカフェラテを飲む余裕さえあって、昨日の俺が嘘のよう。
そのままのんびりと学校に歩き出す。
朝が明けた繁華街のハイカラ町にはフラフラとした足取りの大人たちが駅に向かい、スタスタと歩くメイクが少しヨレたどこかの店の女は給料が良かったのかご機嫌な様子。
俺は人間観察をしながら学校への近道の路地に入る。
ここは人がいなくてスムーズに学校に迎えるけど、ネズミが多いんだよな。
しかも油と尿の匂いが室外機の熱気で俺の鼻をもぎ取ろうとする。
息を浅くして数分、大通りに出て深呼吸してあと少しで学校に着く道を歩く。
何度この道で朝日を見ただろう。
この朝日を見るときはいつも1人。
あの4人は夜の街が怖いと言ってあまり遊びたがらないから姐さんの店くらいしかいかない。
そう言う奏たちにそんなことないと、言えない記憶は俺の中にしっかりある。
俺だって毎晩のように女に喰われてる訳で、あの4人のウブたちがあそこに沈んだら一気に色づいてしまいそうだ。
…そうだ、姐さんのこと起こさないと。
俺はふと思い出した大切な用事をTODOリストに書き込み、通知が出るように設定していると、ちょうど担任の栄美先生が校門を開けようとしていた。
一「おはようございます。」
栄美「日向か、おはよう。いつも早いな。」
一「栄美先生も早いですね。」
栄美「寝て良いもんだったら寝たいけどな。」
そう言いながら栄美先生は鼻をピクつかせる。
栄美「どこにいたらそんな匂いになるんだ?」
一「ハイカラ町通って来ました。」
栄美「朝まであんな街にいたのか?気をつけろよ。」
一「はーい。」
俺は栄美先生に手を振って、そのまま階段を登り教室に入る。
やっぱりあの路地入るのやめようかな。
着替えがいくらあっても足りない。
俺は予備の服に着替えて匂いのついた服を教室の脇にある水道で洗い、1番乾きのいい屋上に干しに行くと換気のためなのか扉が開きっぱなしだった。
屋上に出ると俺と同じクラスの彼方 夏と間宮 沙樹が座って談笑していた。
一「おはよー。」
俺は服を屋上の手すりに掛けて2人に挨拶をする。
すると振り返った沙樹の手にはお弁当があった。
沙樹「おはよう。やっぱり一くんは来るの早いな。」
一「2人こそ。朝弁?」
夏「うん。沙樹がお昼無いのに作ってきたから今から食べようって。」
一「…そうなんだ。俺もちょっともらって良い?」
俺は腹の虫が聞こえないように腹を抑える。
沙樹「いいよー。僕は朝食べて来てるから2人で食べて。」
一「ありがとう。」
俺は2人のピクニックにお邪魔して弁当の玉子焼きを1つ食べる。
久しぶりに店の味じゃないもの食ったな。
一「美味い。」
沙樹「ありがとう。一くんって自炊するの?」
一「しないな。店で食っちゃう。」
金には困ってない。親がまあまあ金持ちだから。
ブリーダーの母と警察官の父、そして6つ離れた妹が俺の家族。
1人暮らしを始めてからはあまり会ってない。
会うと小言が多い俺の親は俺を1人の人間として扱ってくれないから嫌いだ。
親の金でこの学校には通わせてもらってる。
それは感謝してる。
けれど、元はその金で有名大学に行かせようとしてた親。
それが叶わなくなったのは、俺が頭を打って左眉からまぶたにかけてぱっくりと大きい傷をつけてから人生がガラリと変わった。
記憶障害と顔の傷で俺の将来をゴミ箱に捨て、新しい子どもを作った。
それが俺の妹、天が生まれた理由。
天は、俺の打つ前の脳よりも格段に才があった。
だから今もあの親と仲良しこよし出来ている。
俺は居場所のない実家を出てやっとしがらみから解放されたと思ったけど、連絡は来るしアポ無しで家に来ることがあったから外になるべくいるようにしてる。
沙樹「前髪、あげたらいいのに。」
と、急に沙樹が俺の前髪を指摘した。
俺は傷がある左側を主に前髪で隠して、色はずっと地毛の黒。
髪色を変えると色の透き具合で傷が見えてしまいそうだから染めたことがない。
一「…なんで?」
沙樹「顔整ってるのにもったいないなって思ってたんだ。けど、その髪型気に入ってるんだね。」
…もったいないか。
前髪をあげても周りの奴らがあの顔しなければいくらだって髪型なんか変えてやるよ。
夏「一くんは色白だから今の黒髪が映えるよね。」
俺だって沙樹みたいなアッシュベージュにしたいと思ったことあるよ。
けど、夏が言うように肌が白いから傷の色がよく見えるんだ。
一「ブリーチ痛いって聞くから挑戦出来ないんだよな。…今度、パーマかけてみようかな。」
沙樹「いいじゃん。ちょうど夏だし、一くんの黒髪パーマ似合いそう。」
夏「だね。俺もヘアチェンしたくなってきた。」
2人が携帯を見ながら夏に向けての髪色を決める中、俺は空を見上げる。
1年近く同じ教室にいたはずなのに、この2人とはこうやって授業以外の話をするのは初めてかもな。
そういえば、今日はクラス会。
呑むには最高の夏日だな。
俺は少し雲がかかる空を見ながら、昼に呑むハイボールを待ち望んだ。
→ Answer
匂いもどっかにスクラップ出来たら良いんだけどな。
そう思いながら俺は手帳に匂いの記憶と昨日の日記を書く。
『ゲロ×新緑の夏、ビアガーデンが始まってた。7/1→7/2 アイコン右の子と会った。ケツ満点。』
俺は手帳をカバンにしまって立ち上がり、背伸びをする。
今日は余裕の登校。
ゲロ臭い公園でカフェラテを飲む余裕さえあって、昨日の俺が嘘のよう。
そのままのんびりと学校に歩き出す。
朝が明けた繁華街のハイカラ町にはフラフラとした足取りの大人たちが駅に向かい、スタスタと歩くメイクが少しヨレたどこかの店の女は給料が良かったのかご機嫌な様子。
俺は人間観察をしながら学校への近道の路地に入る。
ここは人がいなくてスムーズに学校に迎えるけど、ネズミが多いんだよな。
しかも油と尿の匂いが室外機の熱気で俺の鼻をもぎ取ろうとする。
息を浅くして数分、大通りに出て深呼吸してあと少しで学校に着く道を歩く。
何度この道で朝日を見ただろう。
この朝日を見るときはいつも1人。
あの4人は夜の街が怖いと言ってあまり遊びたがらないから姐さんの店くらいしかいかない。
そう言う奏たちにそんなことないと、言えない記憶は俺の中にしっかりある。
俺だって毎晩のように女に喰われてる訳で、あの4人のウブたちがあそこに沈んだら一気に色づいてしまいそうだ。
…そうだ、姐さんのこと起こさないと。
俺はふと思い出した大切な用事をTODOリストに書き込み、通知が出るように設定していると、ちょうど担任の栄美先生が校門を開けようとしていた。
一「おはようございます。」
栄美「日向か、おはよう。いつも早いな。」
一「栄美先生も早いですね。」
栄美「寝て良いもんだったら寝たいけどな。」
そう言いながら栄美先生は鼻をピクつかせる。
栄美「どこにいたらそんな匂いになるんだ?」
一「ハイカラ町通って来ました。」
栄美「朝まであんな街にいたのか?気をつけろよ。」
一「はーい。」
俺は栄美先生に手を振って、そのまま階段を登り教室に入る。
やっぱりあの路地入るのやめようかな。
着替えがいくらあっても足りない。
俺は予備の服に着替えて匂いのついた服を教室の脇にある水道で洗い、1番乾きのいい屋上に干しに行くと換気のためなのか扉が開きっぱなしだった。
屋上に出ると俺と同じクラスの彼方 夏と間宮 沙樹が座って談笑していた。
一「おはよー。」
俺は服を屋上の手すりに掛けて2人に挨拶をする。
すると振り返った沙樹の手にはお弁当があった。
沙樹「おはよう。やっぱり一くんは来るの早いな。」
一「2人こそ。朝弁?」
夏「うん。沙樹がお昼無いのに作ってきたから今から食べようって。」
一「…そうなんだ。俺もちょっともらって良い?」
俺は腹の虫が聞こえないように腹を抑える。
沙樹「いいよー。僕は朝食べて来てるから2人で食べて。」
一「ありがとう。」
俺は2人のピクニックにお邪魔して弁当の玉子焼きを1つ食べる。
久しぶりに店の味じゃないもの食ったな。
一「美味い。」
沙樹「ありがとう。一くんって自炊するの?」
一「しないな。店で食っちゃう。」
金には困ってない。親がまあまあ金持ちだから。
ブリーダーの母と警察官の父、そして6つ離れた妹が俺の家族。
1人暮らしを始めてからはあまり会ってない。
会うと小言が多い俺の親は俺を1人の人間として扱ってくれないから嫌いだ。
親の金でこの学校には通わせてもらってる。
それは感謝してる。
けれど、元はその金で有名大学に行かせようとしてた親。
それが叶わなくなったのは、俺が頭を打って左眉からまぶたにかけてぱっくりと大きい傷をつけてから人生がガラリと変わった。
記憶障害と顔の傷で俺の将来をゴミ箱に捨て、新しい子どもを作った。
それが俺の妹、天が生まれた理由。
天は、俺の打つ前の脳よりも格段に才があった。
だから今もあの親と仲良しこよし出来ている。
俺は居場所のない実家を出てやっとしがらみから解放されたと思ったけど、連絡は来るしアポ無しで家に来ることがあったから外になるべくいるようにしてる。
沙樹「前髪、あげたらいいのに。」
と、急に沙樹が俺の前髪を指摘した。
俺は傷がある左側を主に前髪で隠して、色はずっと地毛の黒。
髪色を変えると色の透き具合で傷が見えてしまいそうだから染めたことがない。
一「…なんで?」
沙樹「顔整ってるのにもったいないなって思ってたんだ。けど、その髪型気に入ってるんだね。」
…もったいないか。
前髪をあげても周りの奴らがあの顔しなければいくらだって髪型なんか変えてやるよ。
夏「一くんは色白だから今の黒髪が映えるよね。」
俺だって沙樹みたいなアッシュベージュにしたいと思ったことあるよ。
けど、夏が言うように肌が白いから傷の色がよく見えるんだ。
一「ブリーチ痛いって聞くから挑戦出来ないんだよな。…今度、パーマかけてみようかな。」
沙樹「いいじゃん。ちょうど夏だし、一くんの黒髪パーマ似合いそう。」
夏「だね。俺もヘアチェンしたくなってきた。」
2人が携帯を見ながら夏に向けての髪色を決める中、俺は空を見上げる。
1年近く同じ教室にいたはずなのに、この2人とはこうやって授業以外の話をするのは初めてかもな。
そういえば、今日はクラス会。
呑むには最高の夏日だな。
俺は少し雲がかかる空を見ながら、昼に呑むハイボールを待ち望んだ。
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