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今日から短編映画の撮影を手伝うけれど、ただの荷物持ちになった私は何度もスクランブル交差点で画を撮っている瑠愛さんと渡辺を横目に灰色になってしまったパンダを使って暇つぶしをする。
ひぃ兄はシロクマかもって言ってたけど、あれからもう1回洗ったら白い毛皮にしっかり黒の色素がついちゃってもうどうしようもなくなっちゃった。
しかも、そのクマネズミの色合いがちょうど渡辺が着ているスウェットの学ランに近い色でちょっとやだ。
そう思ったけれど、このキーホルダーには罪はないので背負っていたリュックにつけていると私の前に人が立った気配を感じた。
天「次は電車ですよね。」
私は膝の上に置いていた瑠愛さんと渡辺の荷物を手に取りながら立ち上がると、そこには見たこともないお兄さんがいた。
「家出?」
と、お兄さんは私の手から渡辺の荷物を奪おうとしたので私は咄嗟に手を引く。
天「…違います。」
「ここ、人多いから危ないよ?俺と暖かい所行こうよ。」
天「いいですっ。」
私はまた手を伸ばして来たお兄さんから逃げるために集合場所だった大きい門松から離れて、信号が変わるたび見失ってしまう2人を探していると肩を引かれる。
「どこいくんだよ。」
天「触んないで!」
私は両手にあった荷物を力強く振り回し、肩を掴んだ人にぶつけるとそこには尻餅をついている渡辺がいた。
渡辺「…何やってんだよ。」
天「ご、ごめん…。知らない人に話しかけられて…。」
渡辺「瑠愛監督が心配してるから行くぞ。」
と言って、渡辺は立ち上がりさっきの場所へ戻ろうとうすると青信号が点滅し始める。
渡辺「こっち。1回やり過ごそう。」
そう言って渡辺は私の腕を引っ張り、1番近かった歩道に戻って私の手から自分の荷物と瑠愛さんの荷物を取り上げた。
渡辺「…なんで頼らないんだよ。」
天「なに?」
渡辺「なんで1人で逃げてんのって言ってんの。」
…なんで、ちょっと怒ってるの?
撮影が時間通りに進まないから?
それだったら私に荷物持ちなんかさせなかったら良かったのに。
渡辺「手。」
と、渡辺は突然私に手のひらを差し出した。
天「…手。」
私も同じように差し出し、何か貰えるのかと思っているとその手を渡辺に掴まれてそこから少し寒気が走る。
渡辺「嫌だろうけど、こうしてればだる絡みされないと思う。」
と言って、渡辺は冷えた手で私を捕まえて離してくれない。
天「いいって…。誰かに見られるの無理…。」
私が少し無理に離そうとしていると向こう側の歩道にさっき私に話しかけてきたお兄さんが見えた。
天「…渡ったらすぐ離して。」
渡辺「瑠愛さんのとこまで。」
嫌だけどこうするしかない。
そう自分に言い聞かせて青信号になった横断歩道を渡りながら、あのお兄さんとすれ違い何もなかったことにホッとしていると、私の横に同年代の女子グループがやってくるのが見えて少し速度を落とし、前を通そうと目をそちらに移すとさっきよりも会いたくない人たちがいた。
夏來「…は?」
私は自分以外のクラスの女子全員がいる塊の先頭にいた夏來が漏らした声に思わず渡辺の手を握り返してしまう。
渡辺「さっさと歩けよ。監督を待たせるな。」
と、渡辺は夏來たちに気づく様子もなく歩き進めるので私はみんなして睨んでくる視線から無理矢理目を逸らし、そのまま渡辺の足に合わせて歩いていると渡辺の足が止まった。
渡辺「…あれ、淡島さん?」
渡辺はあの団体の中にいた淡島 妃李というマドンナ的存在が急に現れたことに驚く。
淡島「え…っと、な、なんで日向さんと一緒にいるの?」
と、淡島さんは渡辺よりも驚いた様子で自分から抱きついた渡辺の腕をきつく締め付ける。
渡辺「なんでって…、用事があって…。」
淡島「…浮気じゃん。」
え?この2人付き合ってるの?
学年1人気がある者同士だったけど、そんなこと知らなかった。
渡辺「僕は淡島さんと付き合った覚えないよ。」
淡島「え…。」
渡辺「お互い告白してないじゃん。なのになんでそう思えたの?」
…どういうこと?
私は2人の食い違いに何も分からなくなっていると、淡島さんは泣き出してしまった。
淡島「…キスっ、してくれたじゃん…ぅ。」
渡辺「だから?彼女じゃない奴とでもキスなんかするし、こうやって手も繋ぐけど。」
淡島「…デートは?」
渡辺「デートって男女が出かけるだけじゃん。」
うわぁ…。
こいつ、私が思ってた以上にクズなんだ。
私はひぃ兄に教えを貰ったと思われる渡辺から逃げようと手を離そうとするけど、渡辺が力強く握って離れられない。
渡辺「僕、今本当に忙しいからもう話すことないなら離してくれない?」
と、渡辺は淡島さんが掴んでいた腕を少し乱暴に振って逃れると、急に走り出して瑠愛さんの元へ向かう。
私はその後ろを一瞬だけ見て、淡島さんを慰める女子と私たちを睨む夏來たちを見て3学期は絶対学校に行かないことを決めた。
環流 虹向/天使とおこた
ひぃ兄はシロクマかもって言ってたけど、あれからもう1回洗ったら白い毛皮にしっかり黒の色素がついちゃってもうどうしようもなくなっちゃった。
しかも、そのクマネズミの色合いがちょうど渡辺が着ているスウェットの学ランに近い色でちょっとやだ。
そう思ったけれど、このキーホルダーには罪はないので背負っていたリュックにつけていると私の前に人が立った気配を感じた。
天「次は電車ですよね。」
私は膝の上に置いていた瑠愛さんと渡辺の荷物を手に取りながら立ち上がると、そこには見たこともないお兄さんがいた。
「家出?」
と、お兄さんは私の手から渡辺の荷物を奪おうとしたので私は咄嗟に手を引く。
天「…違います。」
「ここ、人多いから危ないよ?俺と暖かい所行こうよ。」
天「いいですっ。」
私はまた手を伸ばして来たお兄さんから逃げるために集合場所だった大きい門松から離れて、信号が変わるたび見失ってしまう2人を探していると肩を引かれる。
「どこいくんだよ。」
天「触んないで!」
私は両手にあった荷物を力強く振り回し、肩を掴んだ人にぶつけるとそこには尻餅をついている渡辺がいた。
渡辺「…何やってんだよ。」
天「ご、ごめん…。知らない人に話しかけられて…。」
渡辺「瑠愛監督が心配してるから行くぞ。」
と言って、渡辺は立ち上がりさっきの場所へ戻ろうとうすると青信号が点滅し始める。
渡辺「こっち。1回やり過ごそう。」
そう言って渡辺は私の腕を引っ張り、1番近かった歩道に戻って私の手から自分の荷物と瑠愛さんの荷物を取り上げた。
渡辺「…なんで頼らないんだよ。」
天「なに?」
渡辺「なんで1人で逃げてんのって言ってんの。」
…なんで、ちょっと怒ってるの?
撮影が時間通りに進まないから?
それだったら私に荷物持ちなんかさせなかったら良かったのに。
渡辺「手。」
と、渡辺は突然私に手のひらを差し出した。
天「…手。」
私も同じように差し出し、何か貰えるのかと思っているとその手を渡辺に掴まれてそこから少し寒気が走る。
渡辺「嫌だろうけど、こうしてればだる絡みされないと思う。」
と言って、渡辺は冷えた手で私を捕まえて離してくれない。
天「いいって…。誰かに見られるの無理…。」
私が少し無理に離そうとしていると向こう側の歩道にさっき私に話しかけてきたお兄さんが見えた。
天「…渡ったらすぐ離して。」
渡辺「瑠愛さんのとこまで。」
嫌だけどこうするしかない。
そう自分に言い聞かせて青信号になった横断歩道を渡りながら、あのお兄さんとすれ違い何もなかったことにホッとしていると、私の横に同年代の女子グループがやってくるのが見えて少し速度を落とし、前を通そうと目をそちらに移すとさっきよりも会いたくない人たちがいた。
夏來「…は?」
私は自分以外のクラスの女子全員がいる塊の先頭にいた夏來が漏らした声に思わず渡辺の手を握り返してしまう。
渡辺「さっさと歩けよ。監督を待たせるな。」
と、渡辺は夏來たちに気づく様子もなく歩き進めるので私はみんなして睨んでくる視線から無理矢理目を逸らし、そのまま渡辺の足に合わせて歩いていると渡辺の足が止まった。
渡辺「…あれ、淡島さん?」
渡辺はあの団体の中にいた淡島 妃李というマドンナ的存在が急に現れたことに驚く。
淡島「え…っと、な、なんで日向さんと一緒にいるの?」
と、淡島さんは渡辺よりも驚いた様子で自分から抱きついた渡辺の腕をきつく締め付ける。
渡辺「なんでって…、用事があって…。」
淡島「…浮気じゃん。」
え?この2人付き合ってるの?
学年1人気がある者同士だったけど、そんなこと知らなかった。
渡辺「僕は淡島さんと付き合った覚えないよ。」
淡島「え…。」
渡辺「お互い告白してないじゃん。なのになんでそう思えたの?」
…どういうこと?
私は2人の食い違いに何も分からなくなっていると、淡島さんは泣き出してしまった。
淡島「…キスっ、してくれたじゃん…ぅ。」
渡辺「だから?彼女じゃない奴とでもキスなんかするし、こうやって手も繋ぐけど。」
淡島「…デートは?」
渡辺「デートって男女が出かけるだけじゃん。」
うわぁ…。
こいつ、私が思ってた以上にクズなんだ。
私はひぃ兄に教えを貰ったと思われる渡辺から逃げようと手を離そうとするけど、渡辺が力強く握って離れられない。
渡辺「僕、今本当に忙しいからもう話すことないなら離してくれない?」
と、渡辺は淡島さんが掴んでいた腕を少し乱暴に振って逃れると、急に走り出して瑠愛さんの元へ向かう。
私はその後ろを一瞬だけ見て、淡島さんを慰める女子と私たちを睨む夏來たちを見て3学期は絶対学校に行かないことを決めた。
環流 虹向/天使とおこた
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