天使とおこた

環流 虹向

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12/22

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形は出来た。

ポケットの位置は明日会った時に希望の位置を聞いたとして…、本当大きい人だなぁ…。

私はジャケットを改めて見て私が2人半くらいいそうな大きさにちょっとドキッとする。

ジャケットを頼んでくれた人には一度だけ会ったことがあるけど、前よりも背中が大きくなったんじゃないかなと私は足りない体にジャケットを着てみるとミニワンピースのようになってしまった。

少し遊び休憩を入れた私はそのジャケットをしっかりクリスマスパーティーまでに間に合わせるために出来るだけ形を固めていると、ひぃ兄が夜ご飯に呼んでくれたのでリビングに行くとすき焼きのとってもいい匂いが広がっていた。

天「すき焼き!?」

一「タレはそう。肉はない。」

天「えー…。」

一「節約。年末年始は家に永遠にいるからそれまで出費は抑える。」

天「…ひぃ兄はいっぱいお金使う人だと思ったよ。」

私はしょげながら席に着き、うどんとネギと白菜のシンプルすぎるすき焼きに垂れかけたヨダレが乾く。

一「あれは親の金だから。今は自分のだからちゃんと管理しないと。」

天「お金はお金だけどね。」

一「うるせぇ。天も使いたい分振り込んでもらえるように一人暮らしすればいいじゃん。」

天「ひぃ兄が好き勝手するからお嫁に行くまで実家確定だよ。あの実家は私のってまで言われちゃった。」

一「いいじゃん。売れば?」

天「私の家は?」

一「新転地に行けばいいじゃん。あいつらは老人ホームで部屋借りてればいい。」

天「…老人ホームは姥捨山って聞いたよ?」

一「捨てれば?残す価値は金しかないし。」

…本当にひぃ兄ってお父さんとお母さんのこと嫌いだよな。

私が生まれた時からこんな感じだから他の家で家族が仲いいのに驚いちゃったよ。

天「お金は自分で稼ぐ。高校入ったらいいバイト教えて。」

一「俺、まともにバイトしてないしする予定もない。だから分からん。」

天「え?この家は?」

一「あー…、絵描いたり、動画売ったり、愚痴聞きして稼いだ。」

天「え!?自分1人で…?」

一「絵は俺だけだけど、動画は夢衣と作ったし、愚痴聞きは瑠愛くんの仕事を少しもらってる。」

ほぇー…。

大人になると仕事の仕方も一段階違うなぁと思いながら私は制服が可愛いと思ったカフェを口に出してみるとひぃ兄は何かを思い出したのか叫んだ。

一「そういえば音己ねぇ今日のバイト面接も落ちたんだよな…。」

と、ひぃ兄は幼馴染のお姉ちゃんで現彼女の音己ねぇの心配をしだした。

天「なんで?なんでも出来るじゃん。」

一「出来るけど、口出しするからクビにされるんだ。これで100社近いんじゃないか…?」

ひぃ兄は眉をひそめながら携帯で音己ねぇに電話をすると、グツグツと煮込んでいた鍋の火を止めた。

一「音己ねぇこっち来るから今日は帰って。」

天「え…。でもジャケットのカフスが…」

一「なんでも出来るスーパーマンでも人間だから落ち込むんだよ。天も何やっても上手くいかないの分かるだろ?」

と、ひぃ兄は学校のいじめが1番ひどかった時、家の人も友達も頼りに出来なかったあの日に助けてくれたまっすぐした目を私に向けてくる。

一「早めに合鍵は渡す。だけど、明日の夕方以降まで来るな。」

天「…いいよー。夢衣ちゃんと下着買って来虎さんにジャケットの試着してもらうから来るの遅いと思う。」

一「じゃあ22時過ぎで。」

天「えー…、ジャケット本縫いしたいよ…。」

一「ギリ21時かな。」

天「分かったよー…。音己ねぇのためだもんね。」

私はひぃ兄と一緒にうどんをかきいれて、明日のお昼から必要なジャケットとお財布を持ったことを確認して実家に戻った。


環流 虹向/天使とおこた
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