エンディングノート

環流 虹向

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BIRTHDAY

とことん屑男

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あー…、だるいなぁ。

信之のために作るごはんはあんなウキウキで作れるのに、莉音と成くんが主になって食うって分かってるとどうもやる気が出ない。

明人「成くん、ガソリン買ってきて。」

成「え?冷蔵庫にいっぱい入ってるよ?」

と、お別れ会と言う名のただの呑み会のために準備されたお酒を成くんは見せてくる。

明人「ビールとサワー系しかないじゃん。ワインは?」

成「ないかも。」

明人「赤ワインと白ワイン、安いのでいいから買ってきてほしい。料理酒としても使うからお願いっ。」

私は慣れないぶりっ子風の声でお願いしてみると成くんは腕をうずうずさせてタコみたいな顔をした。

成「お礼は?」

明人「ごはん。」

成「それと“何か”くれないと行かないかも。」

明人「えー…。」

成「ハグ1分間チケットください。」

んー…、それも信之は嫌そうにしてたからしたくないんだよな。

でも、お金は全部成くん持ちで広いキッチンも使わせてもらっちゃってるし…。

明人「10秒。」

成「60秒。」

明人「12秒。」

成「58秒。」

明人「なんで1分?」

成「幸福ホルモンは1分過ぎてから分泌されるから1分で。」

ぱちんと手を合わせて成くんは私にお願いしてきた。

明人「他のことしたらダメだよ?」

成「え?俺の顔でおっぱいぱふぱふは?」

明人「ダメに決まってんじゃん。」

成「え…、お尻ぽにゅぽにゅは?」

どんな擬音使ってんだよ。
てか、それありだって最初から思ってたの?

明人「ダメ。私の肩に顔、腕は腰。静止で1分。」

成「ハグじゃないぃ…。それ、ただ捕まえただけじゃん。」

明人「…いいよ。もう、自分で買ってくる。」

成「ちょ、ちょ、ちょ。い、行きます!明人のハグでチケットください。」

明人「はーい。行ってらっしゃい。」

私はキッチンでフレッシュトマトをカットしながら成くんを見送ると、数分後に成くんから電話がかかってきた。

明人「買うもの忘れた?」

成『ううんー。鍵忘れたからインターフォン鳴らしたら出てちょうだい。』

明人「分かった。あと、バターとクリームなかったから買ってきてほしい。」

成『そんなに抜けてた?』

明人「うん。」

私の頭の中から。
成くんに送った買い物リストに書くの忘れてた。

成『はーい。買ってきまーす。』

明人「よろしく。」

私は成くんに電話を切ってもらい、作業に集中しているとあっという間にインターフォンが鳴った。

思ったより早く買い物が出来て優秀だなと思いながら私は玄関の扉を開けた。

明人「買い物、ありがとう。ハグ…」

「なんで明人がいんの?」

と、私は背格好が成くんと全く一緒の莉音にハグ券を使いそうになり、焦って扉を閉めようとすると莉音が玄関の扉に足を挟んでこじ開けた。

莉音「デートつまんな過ぎてゲームしに来たら、最高のプレゼント置いてあるじゃん。」

明人「なんでいるの。」

莉音「俺が聞きたいけど。…なんか作ってる?」

と、莉音は玄関に入り、しっかり鍵とドアチェーンをかける習慣をこなすと私の腕を掴んでたくさんの食材の香りがするキッチンに行った。

莉音「…さよなら会のご馳走って明人の飯?」

明人「成くんに最後の晩餐って言われたから…。」

莉音「成紀は?」

明人「成くんは…」

私は成くんがスーパーへ買い物に行っていることを言いかけて、口を噤む。

これ、2人って知られたらめんどくさいことになるよね?

なんとか成くんが来るまで時間稼ぎをしよう。

明人「成くんお腹痛くてトイレこもってる。」

莉音「なんだ、いんのか。」

と、やっぱり何か考えてたらしい莉音は私から手を離すと作りかけの食材を見ながら手を洗い始めた。

莉音「トマト煮?」

明人「うん。約束したから。」

莉音「ありがと。」

そう言って手を洗い終えた莉音が1歩近づいてきたので私は反射で顔の前に両手を広げる。

莉音「…なんだよ。昔は欲してたじゃん。」

明人「今は信之いるし、莉音とは無理。」

莉音「あっそ。」

莉音は不機嫌な顔をしてテレビがあるリビングに行くと我が物顔でだらけ始めた。

まさかこんなお昼前から莉音が来るなんて思わなかった…。

私は莉音が横目に入るオープンキッチンで下手に刺激をしないように、料理を手早く作ることにした。


…………

ごまかせるっておもってたけど

…………


環流 虹向/エンディングノート
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