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環流 虹向

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1週間お試し同棲はなんの文句もなしに最終日を迎えようとしている。

バイト帰りで家に帰ると稜平さんがご飯とお風呂を準備していたり、稜平さんがそのまま疲れて寝ていたとしても冷蔵庫にはお肉もお魚も好きに使える分詰まっている。

しかも私が作った5杯分の味噌汁を朝食なのに飲み干しておかわりと言ったり、私のお気に入りのリップケースの造形美が好きすぎてリップを塗り終わってしまおうとしているのに手から離してくれない子どもみたいな稜平さんに惹かれつつもある。

けど、まだ私は時音を好きで片想いにまだ諦めがつかないでいるからこの気持ちのまま結婚するわけにはいかない。

だから今私が伝えたいことを最大限行動に移して、今日の呑み会を開いてもらった。

稜平「最終夜なのに凛太郎も一緒に夜飯かー…。」

幸来未「春馬くんもいるよ。」

稜平「最後なら2人だけで過ごしたかったよ。」

幸来未「今過ごしてるじゃん。」

私は稜平さんと一緒に夜ご飯を作りながら、今日の仲直り会の準備を進める。

稜平「タイムリミットまで、ね。」

と、稜平さんは少し不服そうな顔をしてサラダが入ったボウルをダイニングテーブルの真ん中に置くと、インターフォンが鳴った。

稜平「俺出るね。」

幸来未「うん。」

私はこのやり取りを時音と出来たらいいなと思ってたけれど、出来るとはもう思ってない。

だからこそ、稜平さんにしっかり返事をしてオーブンの余熱で温めていたヒレ肉をカットしていると友達の春馬くんと今日の主役の凛太郎さんが来た。

凛太郎「いい香り。西宮さんからするのかな。」

と、凛太郎さんはもうなりふり構わずお兄さんの興味を引こうと私に近づいてきた。

幸来未「…そんなことしなくても、今日の主役だから大丈夫。」

私は少し肉汁がついた手で口元を隠しながらそばに来た凛太郎さんに耳打ちすると、凛太郎さんはとても不審そうな顔をして逃げて行き、春馬くんとじゃれ始めた。

この中で1番気持ちが分かりやすいのはきっと凛太郎さんだなと確信した私は、思わず笑みをこぼしていると隣にやってきた稜平さんが私の腕に腕をくっつけた。

稜平「…変なことされてない?」

幸来未「されてないよ。今日は仕返しするの。」

そう宣言をした私は切り終えたステーキを持って、ご馳走が並ぶダイニングテーブルの席に着く。

凛太郎「今日はなんで2人でこんなご馳走作ってたの?もしかして付き合い始めた?」

と、凛太郎さんは何かの根っこを掴もうと必死に稜平さんを煽るけど、隣に座った稜平さんの太ももに私が手を置いているのできっとそれどころじゃないはず。

幸来未「ううん。違うよ。今日は凛太郎くんの為にこのご馳走も友達の春馬くんもお兄さんも呼んだよ。」

「「「え?」」」

私の言葉に3人とも驚き、とても素直でいい表情をしてくれる。

幸来未「今日は凛太郎くんが大好きなお兄さんからギャンブルを学ぶ日です。だから数合わせで私と春馬くんはいるよ。」

稜平「…どういうこと?」

春馬「俺、数合わせなの?」

私は文句と困惑を言葉にする2人を無視して凛太郎さんをじっと見ると、少し目が泳いでるのが見えた。

幸来未「好きな人のものを学ぶのは得意でしょ?だから稜平と私たちで遊ぼうよ。」

私がそう煽ると凛太郎さんは泳がしていた目を私に合わせて睨むように見つめてきた。

幸来未「嫌なら遊園地のペアチケットあげない。」

まだ私を信じきれてない凛太郎さんに賞品という名のサプライズプレゼントを見せながら、自分の頭を稜平さんの肩に寄り添うように預けると凛太郎さんは突然テーブルを殴った。

春馬「…ど、どうした?」

稜平「ここで暴れるな。だったら…」

凛太郎「ぜってぇ、西宮に勝つ。船田さん、協力してあいつの首根っこ引き裂いて肥溜めに沈めてやりましょ。」

そう言いながら凛太郎さんはフォークで私を指し、宣戦布告してくれた。

幸来未「じゃあ私は稜平と“一緒に”頑張ろーっと。ギャンブル王がいれば絶対勝てるもん。」

私がそのまま稜平さんの腕に抱きつくと、稜平さんは耳を赤くして凛太郎さんは私が丁寧に切ったステーキ肉にガン!と音を立てて刺し、3枚いっぺんに口を入れた。

それを見て春馬くんは何かを理解したのか、私と一度アイコンタクトを取ると普通に食事をし始めた。

私は全てが上手く行ったことに喜んで笑顔でいると、稜平さんは腕を組んでいた手をテーブル下で掴んで指を絡ませてきた。

それに答えるように私は握り返し、始まる戦いのために腹ごしらえをした。


環流 虹向/23:48
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