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タイムオーバー
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時音たちが立った舞台は熱狂的なファンたちのスタンディングオベーションで20分以上、幕を閉じられなかった。
そんな中、私は時音が登場してからずっと流れる理由が分からない涙を流し、落ち着くまで席に座ったまま時間を過ごしていると大半の人が会場から出ていっていた。
それに気づいてから私は立ち上がり、時音がよく見えた席を離れて出入り口に向かっていると突然知ってる顔が飛び出してきた。
「あれ?幸来未?」
幸来未「あ、稜平。来てたんだ。」
私はまさかの出会いに驚き、そのまま誘われたランチに向かおうとしていると劇場の出口にいたツツイさんが私の元に駆け寄ってきた。
ツツイ「幸来未さん…、一緒についてきてもらっていいですか?」
幸来未「え?どうされたんですか?」
私はいつもトゲがあったツツイさんが切羽詰まった顔をしていて思わず聞き返す。
すると、ツツイさんは私のそばにいた稜平さんに聞かれないよう自分の口元を私の耳のそばに寄せて耳打ちしてきた。
ツツイ「時音が今詰まってる仕事が全部終わったら辞めるって言い出したんです。なんとかしてもらえませんか?」
…え?
なんで、時音がそんなこと言うの?
全く意味が分からない。
幸来未「…なんでそんなことに?」
ツツイ「ちょっと…、グループ内で少し問題があってそのせいかもしれないです。」
と、ツツイさんはこれ以上なにも言えないのか口ごもってしまった。
稜平「…どうしたの?なにかあった?」
ツツイ「関係者以外は案内出来ないのでこちらの方、追い払ってください。」
そう冷たい言葉を言ったツツイさんは私の耳元から離れて目で早く稜平さんを消せと言ってくる。
幸来未「初日だけある特典のサイン色紙、貰えてなかったの。だから貰いに行ってくる。」
稜平「そう…。待ってようか?」
そう言って稜平さんは私の感情丸わかりの眉を伸ばした。
幸来未「ううん。また今度、ちゃんと時間合わせてご飯食べに行こう?」
私は稜平さんへの返事を答える日を、稜平さんの気持ちが整った日に設定することに決めた。
稜平「分かった。日程は後で送るね。」
幸来未「うん。ありがとう。」
私は全部を悟ってくれる稜平さんに手を振り、ツツイさんと一緒に時音の楽屋へ走ると時音の楽屋はもぬけの殻になっていた。
ツツイ「ねえ!高倉 時音、みんな見てない!?」
と、ツツイさんは周りのスタッフに声をかけて慌てながら電話をかける中、楽屋が並ぶ廊下の1番奥の部屋の扉が少し開いてその隙間からまたナオさんが私を手招きした。
私はそれに気づいてないツツイさんを置いてナオさんに時音の居場所を知っていないか聞きに行こうとすると、部屋に引き入れられて鍵を閉められた。
幸来未「あの…!ここで油売ってる場合じゃ…」
「幸来未。」
と、私が探していた声の持ち主が私の頭上から名前を呼んでくれた。
時音「明日からずっと、舞台と撮影ばっかりで会えなくなるからデートしたくてみんなに手伝ってもらったんだ。」
そう言って時音は穏やかな笑顔でナオさんやグループのみんなを指す。
ナオ「ヤンデレ演技、サマになるってことは気質はあるってことだから気をつけてね。」
時音「あれはナオが教えてくれたからナオがヤンデレだよ。」
ナオ「元彼がそうだっただけ。俺じゃないよー。」
私はさっきの喧嘩が嘘のように仲睦まじげに話す時音とナオさんにホッとして勝手に涙が出てくる。
「うわっ!ここみん泣かせたー。」
「あれはやりすぎだな。」
「でも、スタッフさんがいいピリつき出してくれてよかったじゃん。」
幸来未「…嘘つかないって言った。」
時音「嘘じゃないよ。演技だし、セリフは全部本音。」
ナオ「じゃあ俺、この子の名前呼んだら時音に殺されるの?」
時音「うん。だからみんな勝手に僕の好きな人の名前呼ばないで。」
ナオ「ガチのヤンじゃん。」
そんな冗談を余裕で言っちゃう時音は鼻水が垂れかける私の顔を優しくティッシュで拭いてくれた。
時音「びっくりさせてごめんね。ずっと仲直りしないで気まずいの耐えられなかった。」
幸来未「…かった。」
時音「え?」
幸来未「時音が俳優やめるなんてこと、本気で言わない人だと思ってたから嘘でよかった。」
私はずっと溢れる涙を拭いてくれる時音に抱きつき、いつも通りの時音になった時音を体いっぱいに感じる。
幸来未「さっき私が嫌なら辞めればって言っちゃったから本当に辞めるかと思ったよ。せっかくずっと頑張ってきたのに今辞めるの絶対ダメだもん。」
時音「…辞めないよ。僕が諦めても幸来未は応援してくれるって言ったから。」
そう言って時音は涙が止まらない私にずっと待っていたキスをしてくれると、周りのオーディエンスが黄色い声援と拍手を挙げた。
すると、さっき一緒にここまで走ってきたヒールの音がこの部屋に近づいてくるのが聞こえる。
ナオ「やばいっ。幸来未ちゃん、あっちの窓から時音を連れ去ってくれ。」
と、ナオさんはドアノブを掴んですぐ開かないようにする。
「俺たちがここを食い止めとくから!」
「デート楽しんできて。」
「時音、朝まで楽しんでこい。」
時音「うん!幸来未、行こ!」
私はまだ涙が抑えきれなかったけれど、時音と一緒に脱獄してまだ日がジリジリと照らすアスファルトを足がおぼつかないながらも走って、そのまま時音の家へタクシーで向かった。
環流 虹向/23:48
そんな中、私は時音が登場してからずっと流れる理由が分からない涙を流し、落ち着くまで席に座ったまま時間を過ごしていると大半の人が会場から出ていっていた。
それに気づいてから私は立ち上がり、時音がよく見えた席を離れて出入り口に向かっていると突然知ってる顔が飛び出してきた。
「あれ?幸来未?」
幸来未「あ、稜平。来てたんだ。」
私はまさかの出会いに驚き、そのまま誘われたランチに向かおうとしていると劇場の出口にいたツツイさんが私の元に駆け寄ってきた。
ツツイ「幸来未さん…、一緒についてきてもらっていいですか?」
幸来未「え?どうされたんですか?」
私はいつもトゲがあったツツイさんが切羽詰まった顔をしていて思わず聞き返す。
すると、ツツイさんは私のそばにいた稜平さんに聞かれないよう自分の口元を私の耳のそばに寄せて耳打ちしてきた。
ツツイ「時音が今詰まってる仕事が全部終わったら辞めるって言い出したんです。なんとかしてもらえませんか?」
…え?
なんで、時音がそんなこと言うの?
全く意味が分からない。
幸来未「…なんでそんなことに?」
ツツイ「ちょっと…、グループ内で少し問題があってそのせいかもしれないです。」
と、ツツイさんはこれ以上なにも言えないのか口ごもってしまった。
稜平「…どうしたの?なにかあった?」
ツツイ「関係者以外は案内出来ないのでこちらの方、追い払ってください。」
そう冷たい言葉を言ったツツイさんは私の耳元から離れて目で早く稜平さんを消せと言ってくる。
幸来未「初日だけある特典のサイン色紙、貰えてなかったの。だから貰いに行ってくる。」
稜平「そう…。待ってようか?」
そう言って稜平さんは私の感情丸わかりの眉を伸ばした。
幸来未「ううん。また今度、ちゃんと時間合わせてご飯食べに行こう?」
私は稜平さんへの返事を答える日を、稜平さんの気持ちが整った日に設定することに決めた。
稜平「分かった。日程は後で送るね。」
幸来未「うん。ありがとう。」
私は全部を悟ってくれる稜平さんに手を振り、ツツイさんと一緒に時音の楽屋へ走ると時音の楽屋はもぬけの殻になっていた。
ツツイ「ねえ!高倉 時音、みんな見てない!?」
と、ツツイさんは周りのスタッフに声をかけて慌てながら電話をかける中、楽屋が並ぶ廊下の1番奥の部屋の扉が少し開いてその隙間からまたナオさんが私を手招きした。
私はそれに気づいてないツツイさんを置いてナオさんに時音の居場所を知っていないか聞きに行こうとすると、部屋に引き入れられて鍵を閉められた。
幸来未「あの…!ここで油売ってる場合じゃ…」
「幸来未。」
と、私が探していた声の持ち主が私の頭上から名前を呼んでくれた。
時音「明日からずっと、舞台と撮影ばっかりで会えなくなるからデートしたくてみんなに手伝ってもらったんだ。」
そう言って時音は穏やかな笑顔でナオさんやグループのみんなを指す。
ナオ「ヤンデレ演技、サマになるってことは気質はあるってことだから気をつけてね。」
時音「あれはナオが教えてくれたからナオがヤンデレだよ。」
ナオ「元彼がそうだっただけ。俺じゃないよー。」
私はさっきの喧嘩が嘘のように仲睦まじげに話す時音とナオさんにホッとして勝手に涙が出てくる。
「うわっ!ここみん泣かせたー。」
「あれはやりすぎだな。」
「でも、スタッフさんがいいピリつき出してくれてよかったじゃん。」
幸来未「…嘘つかないって言った。」
時音「嘘じゃないよ。演技だし、セリフは全部本音。」
ナオ「じゃあ俺、この子の名前呼んだら時音に殺されるの?」
時音「うん。だからみんな勝手に僕の好きな人の名前呼ばないで。」
ナオ「ガチのヤンじゃん。」
そんな冗談を余裕で言っちゃう時音は鼻水が垂れかける私の顔を優しくティッシュで拭いてくれた。
時音「びっくりさせてごめんね。ずっと仲直りしないで気まずいの耐えられなかった。」
幸来未「…かった。」
時音「え?」
幸来未「時音が俳優やめるなんてこと、本気で言わない人だと思ってたから嘘でよかった。」
私はずっと溢れる涙を拭いてくれる時音に抱きつき、いつも通りの時音になった時音を体いっぱいに感じる。
幸来未「さっき私が嫌なら辞めればって言っちゃったから本当に辞めるかと思ったよ。せっかくずっと頑張ってきたのに今辞めるの絶対ダメだもん。」
時音「…辞めないよ。僕が諦めても幸来未は応援してくれるって言ったから。」
そう言って時音は涙が止まらない私にずっと待っていたキスをしてくれると、周りのオーディエンスが黄色い声援と拍手を挙げた。
すると、さっき一緒にここまで走ってきたヒールの音がこの部屋に近づいてくるのが聞こえる。
ナオ「やばいっ。幸来未ちゃん、あっちの窓から時音を連れ去ってくれ。」
と、ナオさんはドアノブを掴んですぐ開かないようにする。
「俺たちがここを食い止めとくから!」
「デート楽しんできて。」
「時音、朝まで楽しんでこい。」
時音「うん!幸来未、行こ!」
私はまだ涙が抑えきれなかったけれど、時音と一緒に脱獄してまだ日がジリジリと照らすアスファルトを足がおぼつかないながらも走って、そのまま時音の家へタクシーで向かった。
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