23:48

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
103 / 111
タイムオーバー

046:11:48

しおりを挟む
時音から貰ったチケットをしっかりお財布に入れてきた私は、差し入れのココアと板チョコを持って楽屋入りする時音たちが来るはずの施設裏で待っていると列最後尾に押し出されていた私は嫌がらせなのか背中に小石を当てられた感覚を背中に感じ、振り向いてみると金平糖が落ちていた。

もったいないなぁと思いつつ、落ちた金平糖を踏んでアリが寄り付かないように軽く蹴ろうとするとその少し先にも金平糖が落ちていることに気づく。

私は思わず首を傾げ、目線を上げると金平糖がポロポロと後ろにある施設に続いていることに気づいてそこに顔を上げると茂みの間からTVで何度か見て覚えた顔があった。

それに私が気づくと、その顔の持ち主は私に小さく手招きしながら静かにやってくるように唇の上に人差し指を置いたので、私はいまかいまかとその人を待っているファンたちに気づかれないように忍足で近づき、その人が隠れていた茂みに一緒に隠れる。

「はじめー…、じゃないね。この間ぶり。」

と、前期のドラマ全てに各1人出ていた俳優グループのナオさんが私に握手を求めてきた。

私は恐る恐る手を出し、握手をするとナオさんは私の手を持ったままそばにあった施設の中に入りスタッフが忙しそうに準備している中を糸のようにくぐり抜けてある一室に飛び込んだ。

ナオ「ふぁぁ…、ツツイさんいなくてよかったぁ…。」

幸来未「えっと…、ここは?」

ナオ「時音の楽屋。」

そう言ってナオさんはまだ誰も来た形跡がない楽屋を指差して私を小上がりの玄関に座らせた。

ナオ「時音の彼女でしょ?なんであの群れにいたの?」

と、ナオさんは私のそばにしゃがみ、上目遣いで聞いてきた。

私はその顔立ちの良さに少し動機を感じたけれど、一度生唾を飲み込んで気持ちを落ち着かせる。

幸来未「彼女ではないので、正当法で会うしかないかなって。」

ナオ「んー…、ストーカーではないよね?」

幸来未「一応、時音とのメッセージはあります。」

私は時音とのメッセージチャットをナオさんに軽く見せて、誤解を解いてもらう。

ナオ「ここ2週間くらい連絡してないね。なんで?」

幸来未「…ちょっと、喧嘩しちゃって。」

ナオ「時音の女関係?」

幸来未「え?…違いますけど。」

ナオ「ふーん、残念。」

ナオさんは立ち上がり、片手に持っていた大粒の金平糖が入った袋を私に手渡した。

ナオ「あとちょっとで…」

「あれ、人いる。」

ナオさんが何かを言いかけると、後ろにあった扉が開いてナオさんが押し出されてしまい、私に覆いかぶさるように倒れてきた。

けれど、ナオさんは持ち前の身体能力で私の頭と自分の顔を守った。

ナオ「あーんっ、痛い。」

幸来未「お怪我ないですか…?」

「え?なんで幸来未ちゃんいるの?」

「え?幸来未ちゃん?」

「ここみんいるの?見たい!」

「幸来未、何してるの?」

私は一気にTVで知った声が耳にいっぱい入ってきて頭の中がパンクしかけていると、ナオさんの背後から手が伸びてきて私を抱き上げてくれた。

時音「…何してるの?」

と、時音は私を抱いたまま、散らばった金平糖と床に寝そべったまま金平糖を食べてるナオさんを指した。

幸来未「ナオさんがここに連れてきてくれて…、少し話してただけ…。」

時音「幸来未はモテモテだね。」

「お、おい。時音、そういうのじゃないだろ?」

「そうだよ。ナオくんが前日入りしてたからたまたま声掛けただけでしょ?」

「ナオも時音の誤解といて。」

ナオ「時音がそう思うならそうなんじゃん?」

「「「おい!」」」

と、3人がナオさんに怒る中、時音は私を抱きしめながら寝転んでいたナオさんのお腹に土足のまま足を置いた。

時音「僕、潔癖なの知ってるでしょ。早く出ていって。」

ナオ「幸来未ちゃんが零しちゃった金平糖もったいな…」

時音「出てけっていってるじゃん。いますぐ出ないと今まで食った金平糖全部吐かせるよ。」

そう言って時音はナオさんのお腹の上に置いていた足に体重を乗せて、ナオさんの顔を少し歪めた。

幸来未「…ね、ねえ。時音、痛そうだからやめて。」

ナオ「幸来未ちゃーん…ぅ、助けてぇ…。」

時音「幸来未の名前、もう1回呼んだら殺す。」

ナオ「ここ…」

「ストップストップ!」

「はい!ナオくん、さっさと起きて部屋戻ろうねー。」

「いつもの冗談だから、幸来未ちゃんもそんな顔しないで。」

そう言ってこの場を物理的に納めてくれた3人はナオさんを連れて別室に移動しにいった。

すると時音は全ての力がなくなったように地べたに座り込んで、私を強く抱きしめた。

時音「…もうやだ。」

幸来未「嫌ならやめてもいいよ。」

時音「うるさい。」

幸来未「……ごめんね。」

私は言葉で時音に突き放されてしまってけれど、体ではまだ抱きしめられ続けているからそのまま私も時音を抱きしめて交わしたい言葉を伝えられない時間を過ごした。


環流 虹向/23:48
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アンコール マリアージュ

葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか? ファーストキスは、どんな場所で? プロポーズのシチュエーションは? ウェディングドレスはどんなものを? 誰よりも理想を思い描き、 いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、 ある日いきなり全てを奪われてしまい… そこから始まる恋の行方とは? そして本当の恋とはいったい? 古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。 ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 恋に恋する純情な真菜は、 会ったばかりの見ず知らずの相手と 結婚式を挙げるはめに… 夢に描いていたファーストキス 人生でたった一度の結婚式 憧れていたウェディングドレス 全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に 果たして本当の恋はやってくるのか?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

エンディングノート

環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート [主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。 けれど、そんな明人にオアシスが現れた。 2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。 11/27から19:00に更新していきます。 君と出会って 君と付き合って 君とお別れするまでが綴られている 私が書いた、もぐもぐノート 君がいる、あの時に戻りたいと思った時は いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ そしたらあの日、君と食べたごはんが 1番美味しかったって思い出せるから だから、このノートにはもうペンを走らせない これは君と私のエンディングノートだから 他の人とのもぐもぐ日記はいらないの だけど、また 始められるように戻ってきてほしいな 私はまだ、君をあの街で待ってるよ 君のじゃない、別のお家で 君じゃない人と一緒に Ending Song 君がドアを閉めた後 / back number 転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

処理中です...