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環流 虹向

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おとなりあい

139:08:02

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凛太郎さんがとっても楽しそうに春馬くんとエアホッケーをしているところが、稜平さんの顔に少し似てて改めて兄弟なんだなと感じているといつもより少し早いブログ更新の通知がやってきたので見てみる。

『今から会える?』

と、短い文章で今世界一嬉しいと思える言葉を時音がくれた。

私はすぐに行くと返信し、荷物をまとめる。

春馬「あれ、トイレ?」

私が身支度を始めるのを横目で気づいた春馬くんは凛太郎さんにマッチポイントを取られても、焦った表情ひとつしない。

幸来未「ううん。友達と遊ぶことになった。」

一応下着は最近買ったお気に入りのだし、昨日の服だけど洗濯してもらったから変な匂いはしないはず。

メイク用品もいつも使ってるものは持ってきてるから少し直せば大丈夫。

凛太郎「友達って?」

幸来未「李代とかそこら辺の人。」

私は手鏡を見ながら軽くメイクを直し、リップを塗り直していると春馬くんが目の前にやってきていたことに気づく。

春馬「本当に…、行くの…?」

と、春馬くんはストーカーアプリにも、言葉にも頼らず、私の行動全てを見て勘付いてしまう。

幸来未「うん。ずっと会えなかったから。」

春馬「…そっか。」

そう言って春馬くんは私に見せてきた中で1番悲しそうな顔をして私の毛先をいじり始めた。

春馬「タイムリミット、延長は無理?」

春馬くんの中でのタイムリミットは、私の“片想い”の人からデートを誘うまでだったらしい。

だから夜ご飯の焼肉を賭けていてもそれを無視してまで私を時音の元へ行かせないようにしている。

幸来未「それは…」

春馬「1日だけ。…半日だけでいいからまた会って。」

私の言葉を遮るように春馬くんは口を動かし、空気を読んでトイレに行った凛太郎さんに見えないように私を背中で隠し、おでこにキスをした。

幸来未「…デート1回分。それで終わりにしよ。」

春馬「…会ってももう終わりなんだ。」

幸来未「この関係は終わりにしよ。お互い一方通行なんだし。」

春馬「西宮は別の道に出ようとは思わない?」

…なんで、なんで今なの。

それ、4年前に言ってくれればもしかしたら今も付き合ってたかもしれないのに。

幸来未「このトンネルはまだ終わらないっぽい。」

春馬「終わらせたくないんじゃなくて?」

そういうとこ、本当に嫌いだし好きだよ。

けど、本人としっかり向き合って終わることだと思うから私1人じゃ終わらせられないんだ。

幸来未「春馬くんのこと好きだった。」

春馬「…いつ。」

幸来未「花火一緒に行った時がピークかな。」

春馬「どっちの…?」

幸来未「短大の時。」

私が本音を話すと春馬くんはとても大きなため息をつき、そのまま私の唇にキスをした。

春馬「デート1回分。今日で終わり。」

幸来未「…いいの?」

春馬「しょうがないじゃん。西宮が頑固なんだから。」

そう言って春馬くんは私の少しよれたリップグロスを拭き、優しく笑顔を作った。

春馬「稜平か凛太郎と遊ぶときは俺がいても来てね。」

幸来未「春馬くんには会いたいもん。」

春馬「そういうのずるいからやめて。」

春馬くんは私の手を取り、立ち上がらせるとスカートについた埃を払ってくれた。

春馬「バイバイ、西宮。」

幸来未「うん。バイバイ、春馬くん。」

私は春馬くんにしっかり手を振ってから時音が待ち合わせ場所に指定した松ぼっくりの木の下に行くことにした。


環流 虹向/23:48
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