23:48

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
89 / 111
おとなりあい

139:15:28

しおりを挟む
朝目を覚ますと私は春馬くんに抱きかかえられながら寝ていて、私が起きたことに気づかない春馬くんは朝日が漏れるカーテンを開けることなくニュースを見ていた。

今日は春馬くんとお別れなはずなのに外はとってもいい天気で、このままいつも通りデートをしたい気分だけどそれは私のわがままだから言い出せない。

幸来未「おはよ。」

春馬「あ、おはよ。天気いいから外で朝飯どう?」

…そういうの、やめてほしい。

春馬くんっていつも後だしだからずるいよ。

幸来未「行く。でももうちょっとゆっくりしよ。」

私はまた目を瞑って春馬くんの最後の温もりを感じながら少しだけ眠ったフリをした後、朝ごはんを食べに駅前近くの定食屋さんに行く。

けど、この時間が終わったらバイバイするのは自分の中で確定事項だからいつもよりゆっくりと朝ごはんを食べてしまう。

春馬「昨日、知らない間に寝てたわ。何回したっけ?」

幸来未「夕方からダラダラしてたから6回くらい?」

春馬「人生最高記録だ…。」

そんなことこんな和やかな定食屋さんで話す?

私は春馬くんの感性にまた疑問を持っていると、春馬くんは大盛りにしてもらったはずのお米をおかわりした。

春馬「運動量には比例してない気するけど、今日くらいいいよね。」

そう言って春馬くんはだいぶ長い期間続けていた糖質制限を今日この時に辞めた。

それは最後のあがきのようだったけど、私はまたあの春馬くんが戻ってきたのかと嬉しく思ってしまった。

幸来未「どうせなら今から…」

「あ!西宮さんと船田さんじゃないですか!」

と、私の言葉を遮るように男の声が聞こえたので店の出入り口を見てみるとそこには凛太郎さんと私に悪意を持っていた女性社員さんがいた。

凛太郎「おはようございます。ここのぶり大根美味しいですよねー。」

そう言って凛太郎さんはその女性と一緒に券売機に行き、定食を選び始めた。

幸来未「…こっち、来るかな。」

私は組み合わせが最悪な2人と出会ってしまい、この後どうしようか春馬くんと相談しようとすると春馬くんの顔がどんどん青ざめていく。

幸来未「もしかして…、あの人が恋人候補?」

嫌な予感がした私は首を動かすだけで済む質問をすると春馬くんは一度首を縦に振った。

春馬「…ってか、西宮にそれ話したっけ。」

…せっかく気持ちが揺らいだのに。

その言葉でもう波風1つ立たなくなったよ。

幸来未「寝る直前にうざったいってぼやいてた。」

春馬「俺…、最低過ぎるね…。」

幸来未「自覚してるならまだ最低じゃないよ。」

私がそう言うと春馬くんはびっくりした顔をして今日みたいな陽気のように暖かく笑った。

春馬「やっぱ西宮っていい奴。本当、1番好きだな。」

まっすぐ私に好きをくれた春馬くんに久しぶりに胸がきゅっとなっていると、隣の席に凛太郎さんとあの女性がやってきた。

凛太郎「お隣失礼します。マキさんはそっちで。」

と、凛太郎は異性同士隣合わせにしてテーブルをくっつけた。

凛太郎「運動した後のしじみの味噌汁ってなんでこんなに美味しいんですかね。」

幸来未「…2人はジム帰りとかですか?」

凛太郎「ジムじゃなくてホテル帰りです。」

マキ「…ちょ、やめてよ。」

春馬くんの隣に座れて嬉しそうだったマキさんは一瞬で作っていた笑顔が崩れ、凛太郎さんの口を止めようとする。

凛太郎「僕って嘘つくの苦手なんですよね。お互い都合のいい“ビジネスパートナー”って話したじゃないですか。それとも僕のこと、好きになっちゃいました?」

そう言って凛太郎さんはヘドロが漏れ出そうな垂れた笑顔をマキさんに見せると、マキさんは定食を一口も食べず外に行ってしまった。

春馬「…なんとかしてほしいとは言ったけど、やり方エグくないか?」

と、額に汗をかいている春馬くんはあと3口で食べ終わりそうだったご飯茶碗を置き、凛太郎さんを怯えるような目で見る。

凛太郎「あいつ、いろんな所でカップルブレイクさせてたのでいいんです。兄さんもなんとかしろってうるさかったので。」

そう言った凛太郎さんはマキさんが残していった肉豆腐定食から熱々染々の豆腐を取り、目を煌めかせて食べた。

凛太郎「ここで会ったのも縁なのでお時間あったら一緒に遊びませんか?憑き物が取れた記念に。」

春馬「…まあ、お礼はしないとな。」

凛太郎「西宮さんも。あのエクレア再挑戦します?」

幸来未「…は、はい。」

凛太郎「じゃあご飯食べ終わったら早速行きましょ!」

私と春馬くんは凛太郎さんの作る波に流され、そのまま凛太郎さんと遊ぶことにした。


環流 虹向/23:48
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アンコール マリアージュ

葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか? ファーストキスは、どんな場所で? プロポーズのシチュエーションは? ウェディングドレスはどんなものを? 誰よりも理想を思い描き、 いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、 ある日いきなり全てを奪われてしまい… そこから始まる恋の行方とは? そして本当の恋とはいったい? 古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。 ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 恋に恋する純情な真菜は、 会ったばかりの見ず知らずの相手と 結婚式を挙げるはめに… 夢に描いていたファーストキス 人生でたった一度の結婚式 憧れていたウェディングドレス 全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に 果たして本当の恋はやってくるのか?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

エンディングノート

環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート [主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。 けれど、そんな明人にオアシスが現れた。 2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。 11/27から19:00に更新していきます。 君と出会って 君と付き合って 君とお別れするまでが綴られている 私が書いた、もぐもぐノート 君がいる、あの時に戻りたいと思った時は いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ そしたらあの日、君と食べたごはんが 1番美味しかったって思い出せるから だから、このノートにはもうペンを走らせない これは君と私のエンディングノートだから 他の人とのもぐもぐ日記はいらないの だけど、また 始められるように戻ってきてほしいな 私はまだ、君をあの街で待ってるよ 君のじゃない、別のお家で 君じゃない人と一緒に Ending Song 君がドアを閉めた後 / back number 転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

処理中です...