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環流 虹向

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おとなりあい

140:01:14

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あと少しで終わりそうな恋人ごっこをしている春馬くんは今日はなぜだか一段と優しく抱いてくれる。

幸来未「もう、春だね。」

春馬「そうだね。葉っぱが湿った匂いする。」

そう言って春馬くんは春の暖かい香りを入れるように、夜になって冷えてきた風を自分の家に通招き入れながら地味に私の好きなスローテンポの腰つきで脳を酔わせてくる。

春馬「そろそろ俺たちも春デート、する?」

幸来未「…いつも、してるじゃんっ。」

私は最中でも言葉数が多い春馬くんにちょっと快楽を削がれつつ、質問に答える。

春馬「そういうのじゃなくて…、付き合うって話…っ。」

と、春馬くんは私を抱き上げて座っている自分の上に座らせた。

その体位が悠雪さんの短編映画で時音が李代さんを抱いていた時と同じ体位で心臓がチクっとしてしまう。

春馬「俺、今モテ期っぽい。というより、西宮といるとモテ出す。」

…何自慢?

というよりもその自慢をしたとこで私は1ミリも春馬くんの好きが増えないよ。

それよりも2人して好きな物語を見て朝が明けちゃう時間を一緒に過ごせる春馬くんが好きだよ。

春馬「なんか…、もうダメっぽいね…。」

何かを悟ったのか、何も変わってないはずの私の顔を見て春馬くんは抱きしめていた腕を少し緩めた。

幸来未「彼女出来てもセフレでいいよ。」

そうしたら時音のいないつまらない時間を潰せるし、趣味が合う春馬くんがいなくならずに済む。

あの日、タイムリミットは彼女が出来たらって思ったけど“友達”がいなくなるのは嫌になっちゃった。

私は少し空間が開いた胸前にある春馬くんのチョコチップ1つを指でくすぐってみるけど、拗ねた顔をしている春馬くんはいつも通り無反応だった。

春馬「さすがにそれは出来ないよ。そろそろ誠実に付き合わないといけない年齢だしね。」

幸来未「…学生の頃は違ったの?」

春馬「まあ…、試しにみたいなとこはあったよね。」

それで元彼と3年近く続いちゃうなんてたいしたもんだし、誠実と言ったら誠実なお付き合いは出来てたんじゃないかなって思うよ。

幸来未「春馬くんのそういうとこ、好きだよ。」

私はお別れをする前に伝えときたいことを伝えた。

春馬「…はあ。本当に西宮が何したいのか分かんないよ。」

そう言って爆発寸前だったスティックパンからバターを出した春馬くんは私の腰を少し上げてティッシュで優しく拭いてくれる。

春馬「候補は、仕事先の1つ下の後輩と一緒に行った社員旅行で仲良くなった人。どっちがいいと思う?」

と、春馬くんは自分の彼女にする人を私の選択で決めようとしてきた。

幸来未「2人こと知らないもん。」

春馬「俺もそんなに知らない。けど、顔はいいし、雰囲気告白された。」

だから付き合うか悩むの?

それってまた元彼さんと同じ運命辿らない?

私がそう考えていると春馬くんは自分のスティックパンもティッシュで拭き取り、そのまま寝転がった。

私はその上に布団のように寝そべり、最後に心地よくなってきていた厚めの胸板を堪能する。

春馬「…てか、どっちも酔った勢いでやっちゃったんだよね。それで醸し出されてる。」

幸来未「最低だね。その後だし、好きじゃない。」

春馬「そう言われると思って黙ってた。」

そう言って春馬くんはまたため息をつくと私の背中をなぜか撫でてきた。

春馬「西宮は楽過ぎるのに難しかった。」

幸来未「それ、褒め言葉になってないよ。」

春馬「褒めてないし、今もまだ解いてる。」

春馬くんは少し鼓動を落ち着かせながら私のおもちを鷲掴みして割れ目を人差し指で撫でる。

春馬「どっちも別に好きじゃないんだけど、どうすればいい?」

…付き合わなきゃいいじゃん。

そう言いたかったけど、付き合ってほしいと言われてる私が言っちゃダメな気がする。

言っていいとしたら私が付き合わなきゃいけない気がするし…。

春馬「どうでもいい奴に貢ぐのきつい…。」

急に最低男になり始めた春馬くんは腕で自分の目を覆い隠し、またため息をついて小さな寝息を立て始めた。

この本音は少し酔ってたからなのか、少し眠かったからなのか、ただ愚痴っただけなのか、分からないけど好きな女の前で言うべきじゃないし、そんなに本気だったのは知りたくなかったよ。

その本気を知らなければこの気持ちが少しも揺らぐことがなかったのに。

私はまた今日も隣にいてくれなかった時音を思い出し、そのまま春馬くんと眠りについた。


環流 虹向/23:48
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