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おとなりあい
185:12:21
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凛太郎さんは2人乗りは久しぶりと静かにはしゃぎながら何時間も飽きずに小さい山を登っては滑り、降りたら登るを繰り返す。
その繰り返しに私の目が回り始めると、凛太郎さんは一旦休憩と言って小さい雪だるまをたくさん作り始めた。
そんな大きな保育園児みたいな凛太郎さんに心が休まる気がして自然と笑みがこぼれていると、顔を見合わせた凛太郎さんが私の前で初めて微笑んだ。
凛太郎「西宮さんはなんで僕に構ってくれるんですか?」
私は思ってもない質問に驚き、言葉が出ないでいると凛太郎さんは5個目の雪だるまを作り終えて近場の砂利で顔を作り始めた。
凛太郎「あっちにいる人、みんな僕が兄さんの弟だからって贔屓したり妬んだり愚痴ったりするんですよね。だから社員旅行ではみんなが気を使わないように僕が気を使うんです。」
幸来未「…そうなんですか。」
凛太郎「はい。まあ、スキーとかスノボとかそういうイカしたのが出来ないっていうのもありますけどね。」
と、凛太郎さんは鼻で軽く笑い家族のような雪だるまを完成させた。
凛太郎「西宮さんが元気そうで良かったです。悠雪の事があってからもずっとお顔を出さないので心配でした。」
幸来未「悠雪とは別れました。あの時はありがとうございます。」
私は首でお辞儀をしてあの時守ってくれたお礼を改めて伝える。
凛太郎「そうですか…。だから…。」
と、凛太郎さんは何かを思い出すように眉を寄せて言葉を濁す。
凛太郎「休憩、しましょっか。」
幸来未「え?は、はい。」
私は急に話を変えた凛太郎さんについて行き、平日でウィンタースポーツの旬が過ぎ去って閑古鳥が訪れた休憩所に入る。
凛太郎「あーあ、眠い。」
そう言いながら凛太郎さんはソリを返却して自販機近くにあるベンチに座った。
幸来未「寝ててもいいですよ。みんながお昼休憩しに来たら起こします。」
凛太郎「ありがとうございます。よかったらこれで温かいの飲んでください。」
と言って凛太郎さんは私に500円玉をくれたので、私は自販機で味が安定しているボトルのココアと凛太郎さん用に温かいお茶を買い隣に座る。
凛太郎「お釣り、大丈夫です。」
幸来未「え?あ、ありが…」
私はお釣りとお茶を渡そうとしていた手の下にするりと凛太郎さんの頭が入り、そのまま私の脚に頭を置かれたことに驚き言葉を失う。
凛太郎「ちょうどいい。おやすみなさい。」
幸来未「…はい。」
…どういう事?
安眠を取りたいからって敬語を使い合う仲の女の膝枕は使うし、その脚をしっかり腕に抱き込んでるってどういう事?
けど、飛行船を賭けたときに躊躇なく床で寝てたからそういうことは一切気にせず、ただの肉枕として使われてるってことなんだろうか。
稜平さんが『どいつもこいつも』って言ってた理由ってこのことだったんだろうな。
私は睡眠不足でお疲れな人の居眠りタイムを邪魔することは出来ないので、指先を今さっき買ったココアとお茶で温めながら自分もうたた寝しかけると何かが弾けるような音が聞こえ一気に眠気が覚める。
凛太郎「…いってぇ。」
と、頬を押さえながら痛がる凛太郎さんを冷めた目で睨む稜平さんがいた。
その稜平さんがいつもの稜平さんじゃなく感じて温かい室内なのに鳥肌が立つ。
稜平「痛えじゃねぇよ。何やってんの?」
凛太郎「寝てただけ。ですよね?西宮さん。」
幸来未「え…。」
私は潤目で上目遣いをしてくる凛太郎さんととても冷えた鋭い目のまま私を見てくる稜平さんを見て、口も体も動かなくなる。
凛太郎「寝てただけなのに叩くなんて昭和かよ。今、令和なんだけど。」
と、私の知らない凛太郎さんは私から頭を離して起き上がり、何事もなかったかのように体を伸ばす。
稜平「幸来未、フードコート行こ。」
凛太郎「え?西宮さんと僕、一緒にご飯食べるんじゃないんですか?」
…何?
私が寝てた一瞬で兄弟ゲンカ始まってる?
私、一人っ子だから兄弟ゲンカの止め方分からないよ?
そう思っていると、スノボ組だった春馬くんたちの声が聞こえてきて思わずそっちに目線を泳がす。
凛太郎「船田さんも来たことだし、行きましょっか。」
と、凛太郎さんは私が買ったココアとお茶を手に取り目で私をフードコートに誘う。
「あー…!社長!意外と早く来れたんですねー!」
「稜平さんの好きな竜田揚げ、今年も売ってましたよー。」
「オーナー、旅館でやるレクリエーションの確認お願いしてもいいですかー。」
スノボ組だった数人の社員さんは稜平さんがいることに気がつき、こちらに手を振ると凛太郎さんがとっても素敵な作り笑顔をした。
凛太郎「部下に慕われてるオーナーさん。僕はそんなに慕われてないんで顔見知りの西宮さんと船田さんと3人でご飯食べますね。」
行きましょーと言ってその場にずっと馴染めずにいた私のコートの袖を凛太郎さんが引っ張り、ずっと不機嫌そうにしている稜平さんから遠のかせた。
私は見たことない2人を見て驚きを隠せないまま、春馬くんと凛太郎さんと3人で稜平さんたちと離れた席に座って食事を進めるけど、稜平さんはずっと作り笑顔をしていて凛太郎さんはご機嫌に口角を上げていた。
そんな2人を見て私は肩身が狭い思いをしながらそのまま宿泊する旅館へ春馬くんの背中に隠れながら向かった。
環流 虹向/23:48
その繰り返しに私の目が回り始めると、凛太郎さんは一旦休憩と言って小さい雪だるまをたくさん作り始めた。
そんな大きな保育園児みたいな凛太郎さんに心が休まる気がして自然と笑みがこぼれていると、顔を見合わせた凛太郎さんが私の前で初めて微笑んだ。
凛太郎「西宮さんはなんで僕に構ってくれるんですか?」
私は思ってもない質問に驚き、言葉が出ないでいると凛太郎さんは5個目の雪だるまを作り終えて近場の砂利で顔を作り始めた。
凛太郎「あっちにいる人、みんな僕が兄さんの弟だからって贔屓したり妬んだり愚痴ったりするんですよね。だから社員旅行ではみんなが気を使わないように僕が気を使うんです。」
幸来未「…そうなんですか。」
凛太郎「はい。まあ、スキーとかスノボとかそういうイカしたのが出来ないっていうのもありますけどね。」
と、凛太郎さんは鼻で軽く笑い家族のような雪だるまを完成させた。
凛太郎「西宮さんが元気そうで良かったです。悠雪の事があってからもずっとお顔を出さないので心配でした。」
幸来未「悠雪とは別れました。あの時はありがとうございます。」
私は首でお辞儀をしてあの時守ってくれたお礼を改めて伝える。
凛太郎「そうですか…。だから…。」
と、凛太郎さんは何かを思い出すように眉を寄せて言葉を濁す。
凛太郎「休憩、しましょっか。」
幸来未「え?は、はい。」
私は急に話を変えた凛太郎さんについて行き、平日でウィンタースポーツの旬が過ぎ去って閑古鳥が訪れた休憩所に入る。
凛太郎「あーあ、眠い。」
そう言いながら凛太郎さんはソリを返却して自販機近くにあるベンチに座った。
幸来未「寝ててもいいですよ。みんながお昼休憩しに来たら起こします。」
凛太郎「ありがとうございます。よかったらこれで温かいの飲んでください。」
と言って凛太郎さんは私に500円玉をくれたので、私は自販機で味が安定しているボトルのココアと凛太郎さん用に温かいお茶を買い隣に座る。
凛太郎「お釣り、大丈夫です。」
幸来未「え?あ、ありが…」
私はお釣りとお茶を渡そうとしていた手の下にするりと凛太郎さんの頭が入り、そのまま私の脚に頭を置かれたことに驚き言葉を失う。
凛太郎「ちょうどいい。おやすみなさい。」
幸来未「…はい。」
…どういう事?
安眠を取りたいからって敬語を使い合う仲の女の膝枕は使うし、その脚をしっかり腕に抱き込んでるってどういう事?
けど、飛行船を賭けたときに躊躇なく床で寝てたからそういうことは一切気にせず、ただの肉枕として使われてるってことなんだろうか。
稜平さんが『どいつもこいつも』って言ってた理由ってこのことだったんだろうな。
私は睡眠不足でお疲れな人の居眠りタイムを邪魔することは出来ないので、指先を今さっき買ったココアとお茶で温めながら自分もうたた寝しかけると何かが弾けるような音が聞こえ一気に眠気が覚める。
凛太郎「…いってぇ。」
と、頬を押さえながら痛がる凛太郎さんを冷めた目で睨む稜平さんがいた。
その稜平さんがいつもの稜平さんじゃなく感じて温かい室内なのに鳥肌が立つ。
稜平「痛えじゃねぇよ。何やってんの?」
凛太郎「寝てただけ。ですよね?西宮さん。」
幸来未「え…。」
私は潤目で上目遣いをしてくる凛太郎さんととても冷えた鋭い目のまま私を見てくる稜平さんを見て、口も体も動かなくなる。
凛太郎「寝てただけなのに叩くなんて昭和かよ。今、令和なんだけど。」
と、私の知らない凛太郎さんは私から頭を離して起き上がり、何事もなかったかのように体を伸ばす。
稜平「幸来未、フードコート行こ。」
凛太郎「え?西宮さんと僕、一緒にご飯食べるんじゃないんですか?」
…何?
私が寝てた一瞬で兄弟ゲンカ始まってる?
私、一人っ子だから兄弟ゲンカの止め方分からないよ?
そう思っていると、スノボ組だった春馬くんたちの声が聞こえてきて思わずそっちに目線を泳がす。
凛太郎「船田さんも来たことだし、行きましょっか。」
と、凛太郎さんは私が買ったココアとお茶を手に取り目で私をフードコートに誘う。
「あー…!社長!意外と早く来れたんですねー!」
「稜平さんの好きな竜田揚げ、今年も売ってましたよー。」
「オーナー、旅館でやるレクリエーションの確認お願いしてもいいですかー。」
スノボ組だった数人の社員さんは稜平さんがいることに気がつき、こちらに手を振ると凛太郎さんがとっても素敵な作り笑顔をした。
凛太郎「部下に慕われてるオーナーさん。僕はそんなに慕われてないんで顔見知りの西宮さんと船田さんと3人でご飯食べますね。」
行きましょーと言ってその場にずっと馴染めずにいた私のコートの袖を凛太郎さんが引っ張り、ずっと不機嫌そうにしている稜平さんから遠のかせた。
私は見たことない2人を見て驚きを隠せないまま、春馬くんと凛太郎さんと3人で稜平さんたちと離れた席に座って食事を進めるけど、稜平さんはずっと作り笑顔をしていて凛太郎さんはご機嫌に口角を上げていた。
そんな2人を見て私は肩身が狭い思いをしながらそのまま宿泊する旅館へ春馬くんの背中に隠れながら向かった。
環流 虹向/23:48
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