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環流 虹向

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おれたちともだち

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明日で帰れる。

それが今の私の中で一番の救い。

だから借りたパーカーの中で搾乳している悠雪さんにもまだ耐えられる。

悠雪「ここみー…、髪の毛邪魔。」

幸来未「…ごめん。」

私は服の中に入ってしまっていた毛を取り出し、終了の合図の愛咬あいこうを2つ分受け止め少し暑そうにする悠雪さんに水をあげる。

悠雪「幸来未、明日ヘアカットしてきてよ。」

と、突然の提案をしてきた悠雪さんは私に1万円を渡してきた。

幸来未「そんなにボサボサじゃないけど…。」

悠雪「量はそのままで長さはこのくらい。」

悠雪さんは私の口元を指し、15センチ以上のカットを要求してきた。

幸来未「やだよ…。そんな短いの似合わないもん。」

悠雪「んー…、じゃあちょっとパーマネントするとしてこのくらいかな。」

と、次に私の顎を指してきた。

悠雪「幸来未はふわふわカールが似合ってるからそうしてきて。」

幸来未「……嫌だって言ってるじゃん!」

私は悠雪さんのわがままに限界でお腹に溜まっていたストレスを声に出して吐き出す。

幸来未「私、人に暴力振るったり痛いことする人好きじゃない。私のことコントロールしようとしてくるのも好きじゃない。もう別れる。」

全て正直に話した私はテーブルの上に置くように指示されて置いていた携帯を取り、2日間ソファー端に置きっぱのカバンを手に取ろうとするとその手を悠雪さんが掴んできた。

悠雪「別れないよ。俺が頷いてない。」

幸来未「そんなの知らない。私、連絡先全部ブロックするから。」

本気の私を見て固まる悠雪さんの手を振り払い、必要なものを持った私は玄関に走り靴を持って外に出ようとすると肩を掴まれ床に叩きつけられた。

悠雪「カットパーマ、2万で足りるよね。」

と、ハサミを持っている悠雪さんは私の上にまたがり2万円を持った手で私の髪の毛をひと束掴むと、顎に冷たいハサミを置きザクっと髪の毛を切った。

悠雪「これに合わせてくださいって美容院の人に言ってね。お金はカバンの中に入れとく。」

そう言って悠雪さんはお金を私のカバンに入れると、私の髪束の匂いを嗅ぎながら寝室に行った。

私は私服を持って帰る余裕もなく借りたパーカーのフードを深く被り、悠雪さんから逃げるように駅に向かう。

けど、目の前が歪み息が続かない私はそばのフェンスに腰かけて唯一の友達を呼び出そうとしても仕事中なのか繋がらない。

だからと言って、時音を呼ぼうにも口の中が精液臭くて髪の毛はボサボサまばら、体には今彼の痕跡がいっぱいで会いたくない。

好きな人の前くらい可愛くいたいのに、今日は出来ない。

…けど、だれか助けて。

私は数少ない連絡先を見てダメ元で電話をしてみる。

『はーい、もしもし?』

と、芯のある落ち着く声が私の耳奥に落ちてきた。

幸来未「す…っ、すみっ、すみませ…、ん…。い、いっま…って…」

『…どこにいる?今、俺外にいるからどこでもいけるよ。』

幸来未「悠雪の…家かっ、から…、すこし…駅に…っ。」

『分かった。バッテリー大丈夫そうなら電話繋げたままにしてもらいたいけど、今何%?』

幸来未「え…っと…ぉ、さん…パー…。」

『じゃあ一旦切ろうか。連絡取れなくなる方がまずいから。』

そう言って電話の相手は私にすぐに行くと言って電話を切った。

私は少し前から電池の減りが早い携帯に替え時を感じていると、目の前にタクシーが止まり人が降りてきた。

私は知らない人に顔を見られないように深くフードを被り直そうと、手を頭に持っていくとその手をタクシーから降りてきた人が掴んだ。

その感じが待ちぼうけだったあの日を思い出し、顔をあげると電話で呼んだあもんさんがいた。

あもん「お待たせ。ここら辺のカフェ入るか、俺と温泉入りに行くか、どっちがいい?」

幸来未「ここ以外のどっか…。」

あもん「じゃあ、一緒にリフレッシュしに行こう。」

そう言って涙で顔がぐちゃぐちゃな私にハンカチをくれたあもんさんはタクシーで私が行きたかった別の場所に連れて行ってくれた。


環流 虹向/23:48
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