57 / 111
リミットシュガー
274:14:54
しおりを挟む
「…みぃ。」
「おー…、こぉーこぉ…。」
「朝だよー。幸来未ー?」
私は何度もうるさく名前を呼ぶ目覚まし時計のスイッチを押してまた寝ようとすると、ぐいっと上半身が起こされて強制的に頭も目も覚醒させられる。
幸来未「…なに。」
悠雪「なにって…。この匂い、分からない?」
と、悠雪さんはまだ視界がぼやける私の鼻先に何かを近づけた。
幸来未「…あまいやつ?」
悠雪「幸来未が大好きなワッフル作ったよ。トッピングは好きなのね。」
私はその言葉でぼやける視界をあくびで分泌される涙で調節すると、ベッドの上には2人分のワッフルとカリカリ目玉焼きとベーコン、盛々ミックスベリーとハチミツが置いてあった。
幸来未「ここで食べていいの?」
悠雪「うん。俺、休みの日は大体ベッドで過ごしてるから食べこぼしても気にしないよ。」
私はその言葉を聞いて昨日の夜を思い出す。
幸来未「…シーツは?」
悠雪「幸来未が寝てる間に変えたよ。一応濡れタオルで体拭いたからね。」
幸来未「ありがと…。」
けど、私はどうしてもシャワーだけを浴びたくてお風呂を借りるとマスカラだけの私がいた。
さすがに全部は落とさないか…。
私は昨日とずっと前の夜を思い出しながら、お風呂場に置かれていたメイクオイルを借りてしっかりメイクと体の汚れを落とし、ベッドルームに戻ると悠雪さんが薄暗い部屋で真っ白な壁になにかの映像を写していた。
幸来未「なに見るの?」
私は悠雪さんの隣に行き、Bluetoothで繋がれている悠雪さんの携帯を覗き込むと何かの動画が再生される寸前だった。
悠雪「昨日の披露試写会パーティーの短編映画。見る?」
幸来未「見る!」
パーティーの内容は初耳だったけど映画大好きな悠雪さんが作った短編映画がどんなものか気になり、朝ごはんそっちのけに見ていると李代さんがスクリーンに映し出された。
幸来未「李代と悠雪は元から友達なの?」
悠雪「元は劇団仲間。俺のバイト先に李代が遊びに来るようになった。」
なるほど。
だったら仲がいいのも頷けるなと李代さんが服を貸してくれた日を思い出していると、見覚えのある後ろ姿にスクリーンの李代さんは声をかけた。
悠雪「こいつ、俺の後輩なんだけどさ。少し前に女が出来たのか急に垢抜けたんだよなー。だからこのドラマに採用した。」
そう語る私の恋人は私のメイトくんを見て自分の息子のホームビデオを見るように穏やかに笑う。
悠雪「夏にこいつのセフレに会ったんだけど、ちょうど幸来未くらいの身長だったんだ。やっぱり類友は似た人好きになるのかな?」
幸来未「…どうだろ。」
私は自分の背中に嫌な冷えを感じて背中に枕を置き、背もたれにしながら体を縮こませる。
悠雪「そのセフレさんには悪いけど、こいつと李代のラブシーン多めなんだ。本当は10秒くらいで収めようと思ってたんだけどね。」
幸来未「…なんで多くなったの?」
悠雪「李代のわがまま。こいつの同期は全員食ってて後はこれだけ。」
と、悠雪さんは事が起こる前にゆったりとお風呂に入るスクリーンの時音を指した。
幸来未「なんで…。その子は…、最後なのかな…。」
悠雪「ガードが硬いっていうか、仲間の劇団員はそういう目で見てないってこの間言ってた。だから李代も手こずってた。」
…ってた?
幸来未「過去形…?」
悠雪「明日こいつとデートするって張り切ってたからやっと釣れたんだと思うよ。」
幸来未「へー…。なんだかすごい世界だね…。」
悠雪「ちょっとネジ外れてないと“唯一無二”になれないからね。」
今すぐ携帯を取りに行きたいけど、さすがに不自然過ぎる。
しかも、時音にこのことを連絡したところで悠雪さんと付き合ったことも一緒にばれちゃいそうでなんか嫌だ。
…どうしよう。
終わったはずなのに、まだ終わってない気がする。
私はとっても気持ちよく晴れたクリスマスイブなのに薄暗い部屋でずっと片思いの人が私の憧れの人にほくろが多い背中に抱きつかれながら腰を落とされるところを見せられ、初めてのちゃんとした恋人とのクリスマスデートだって言うのにどうしても楽しめなかった。
環流 虹向/23:48
「おー…、こぉーこぉ…。」
「朝だよー。幸来未ー?」
私は何度もうるさく名前を呼ぶ目覚まし時計のスイッチを押してまた寝ようとすると、ぐいっと上半身が起こされて強制的に頭も目も覚醒させられる。
幸来未「…なに。」
悠雪「なにって…。この匂い、分からない?」
と、悠雪さんはまだ視界がぼやける私の鼻先に何かを近づけた。
幸来未「…あまいやつ?」
悠雪「幸来未が大好きなワッフル作ったよ。トッピングは好きなのね。」
私はその言葉でぼやける視界をあくびで分泌される涙で調節すると、ベッドの上には2人分のワッフルとカリカリ目玉焼きとベーコン、盛々ミックスベリーとハチミツが置いてあった。
幸来未「ここで食べていいの?」
悠雪「うん。俺、休みの日は大体ベッドで過ごしてるから食べこぼしても気にしないよ。」
私はその言葉を聞いて昨日の夜を思い出す。
幸来未「…シーツは?」
悠雪「幸来未が寝てる間に変えたよ。一応濡れタオルで体拭いたからね。」
幸来未「ありがと…。」
けど、私はどうしてもシャワーだけを浴びたくてお風呂を借りるとマスカラだけの私がいた。
さすがに全部は落とさないか…。
私は昨日とずっと前の夜を思い出しながら、お風呂場に置かれていたメイクオイルを借りてしっかりメイクと体の汚れを落とし、ベッドルームに戻ると悠雪さんが薄暗い部屋で真っ白な壁になにかの映像を写していた。
幸来未「なに見るの?」
私は悠雪さんの隣に行き、Bluetoothで繋がれている悠雪さんの携帯を覗き込むと何かの動画が再生される寸前だった。
悠雪「昨日の披露試写会パーティーの短編映画。見る?」
幸来未「見る!」
パーティーの内容は初耳だったけど映画大好きな悠雪さんが作った短編映画がどんなものか気になり、朝ごはんそっちのけに見ていると李代さんがスクリーンに映し出された。
幸来未「李代と悠雪は元から友達なの?」
悠雪「元は劇団仲間。俺のバイト先に李代が遊びに来るようになった。」
なるほど。
だったら仲がいいのも頷けるなと李代さんが服を貸してくれた日を思い出していると、見覚えのある後ろ姿にスクリーンの李代さんは声をかけた。
悠雪「こいつ、俺の後輩なんだけどさ。少し前に女が出来たのか急に垢抜けたんだよなー。だからこのドラマに採用した。」
そう語る私の恋人は私のメイトくんを見て自分の息子のホームビデオを見るように穏やかに笑う。
悠雪「夏にこいつのセフレに会ったんだけど、ちょうど幸来未くらいの身長だったんだ。やっぱり類友は似た人好きになるのかな?」
幸来未「…どうだろ。」
私は自分の背中に嫌な冷えを感じて背中に枕を置き、背もたれにしながら体を縮こませる。
悠雪「そのセフレさんには悪いけど、こいつと李代のラブシーン多めなんだ。本当は10秒くらいで収めようと思ってたんだけどね。」
幸来未「…なんで多くなったの?」
悠雪「李代のわがまま。こいつの同期は全員食ってて後はこれだけ。」
と、悠雪さんは事が起こる前にゆったりとお風呂に入るスクリーンの時音を指した。
幸来未「なんで…。その子は…、最後なのかな…。」
悠雪「ガードが硬いっていうか、仲間の劇団員はそういう目で見てないってこの間言ってた。だから李代も手こずってた。」
…ってた?
幸来未「過去形…?」
悠雪「明日こいつとデートするって張り切ってたからやっと釣れたんだと思うよ。」
幸来未「へー…。なんだかすごい世界だね…。」
悠雪「ちょっとネジ外れてないと“唯一無二”になれないからね。」
今すぐ携帯を取りに行きたいけど、さすがに不自然過ぎる。
しかも、時音にこのことを連絡したところで悠雪さんと付き合ったことも一緒にばれちゃいそうでなんか嫌だ。
…どうしよう。
終わったはずなのに、まだ終わってない気がする。
私はとっても気持ちよく晴れたクリスマスイブなのに薄暗い部屋でずっと片思いの人が私の憧れの人にほくろが多い背中に抱きつかれながら腰を落とされるところを見せられ、初めてのちゃんとした恋人とのクリスマスデートだって言うのにどうしても楽しめなかった。
環流 虹向/23:48
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
アンコール マリアージュ
葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか?
ファーストキスは、どんな場所で?
プロポーズのシチュエーションは?
ウェディングドレスはどんなものを?
誰よりも理想を思い描き、
いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、
ある日いきなり全てを奪われてしまい…
そこから始まる恋の行方とは?
そして本当の恋とはいったい?
古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。
━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━
恋に恋する純情な真菜は、
会ったばかりの見ず知らずの相手と
結婚式を挙げるはめに…
夢に描いていたファーストキス
人生でたった一度の結婚式
憧れていたウェディングドレス
全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に
果たして本当の恋はやってくるのか?

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
エンディングノート
環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート
[主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。
けれど、そんな明人にオアシスが現れた。
2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。
11/27から19:00に更新していきます。
君と出会って
君と付き合って
君とお別れするまでが綴られている
私が書いた、もぐもぐノート
君がいる、あの時に戻りたいと思った時は
いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ
そしたらあの日、君と食べたごはんが
1番美味しかったって思い出せるから
だから、このノートにはもうペンを走らせない
これは君と私のエンディングノートだから
他の人とのもぐもぐ日記はいらないの
だけど、また
始められるように戻ってきてほしいな
私はまだ、君をあの街で待ってるよ
君のじゃない、別のお家で
君じゃない人と一緒に
Ending Song
君がドアを閉めた後 / back number
転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる