50 / 111
木の下のまちびと
280:03:17
しおりを挟む
給料日前はやっぱりお客さんが来なくなるから早上がりさせられてしまった。
私は思ったより稼げなかった給料のせいで明後日の悠雪さんとのデートでいかにお金を使わないか考えながら駅に向かっていると、私の少し前をのんびりと1人歩く白金と黒髪が混ざっていてもさっとした少しだらしない髪をしている男の人に目がつく。
あんなに放置しちゃうなら黒髪に戻しちゃえばいいのにと思っていると、その人がくるっとこっちを振り向き私と目が合うと嬉しそうな笑みを浮かべた。
幸来未「…時音?」
時音「久しぶり。」
と、時音は私に駆け寄り首元が少し空いていた私に自分のマフラーを巻いた。
幸来未「稽古終わり?」
時音「仕事終わり。幸来未いるかなって探してた。」
幸来未「暇なの?」
時音「んー…。一応撮影終わったし、年末は舞台公演ないから時間はある方。」
こんなとこぶらつくより、私にメッセージを送ってくれれば一発なのに。
私はそう思いながらあの日のように時音のポケットに人差し指を入れて、帰る予定だった家から真逆にあるホテル街へ時音と一緒に足を進める。
幸来未「その髪、なんとかしないの?」
私はどうしても気になることを時音に聞いてみた。
時音「僕もしたいんだけど、黒染めしたら次染めるの大変らしいし、今回配信する短編映画が人気だったらまた撮るからこのままでって言われた。」
幸来未「…なんか、大変だね。」
時音「だね。自分が思った通りの髪型に出来ないなんて思ったことなかった。」
幸来未「どんな役になったらそんな髪色になるの?」
時音「んー…、簡単に言うとクズ男?」
時音にそんな役出来るの?と思ってしまったけれど、ぐっと喉奥にしまう。
幸来未「だからだらしない感じなんだ。」
時音「うん。わざとプリンにしたり、色ムラっぽく白金をアッシュで混ぜるのは監督さんのこだわり。」
なるほどなと私は外見の役作りに納得していると、時音は迷わずあのコンビニに入り慣れた手つきでカゴを取りおつまみコーナーにまっしぐら。
それは演じたクズ男の残骸なのかと思ってしまうほど手慣れていて、そんな役を与えた監督さんに私は腹を立てる。
時音「幸来未はしょっぱいの食べる?」
と、何も気づかない時音は初めて塩気があるものを私に勧めてきた。
幸来未「んー…、時音は?」
時音「僕はチョコと幸来未で十分。」
なんだそれ。
そんな言葉、どこで覚えたんだよ。
幸来未「あっそ。私は時音がしょっぱいから他はいらない。」
私はちょっと大きめの声で時音に言葉をぶつけて飲み物コーナーに行くと、少し焦った時音がついてきた。
やっぱりそのままがいいよ。
変なこと覚えないでほしい。
私は少し怒ってるフリをしつつ買い物を終えていつものホテルに行こうとすると、満室になったので他を渡り歩き、3軒目に見つけた怪しげに光るネオンのホテルに時音と一緒に入った。
幸来未「…いつもより高いね。」
時音「幸来未は金欠?」
幸来未「若干。」
ここ、初彼と来た場所だ。
4年以上前だったからちゃんと覚えてなかった。
しかも、1番安いとこは初彼と使った部屋とよく似てるし…。
時音「じゃあ僕が出すね。」
と、私が違うホテルを探そうと言う前に時音は1番安い部屋のボタンを押して鍵を貰ってしまった。
もうしょうがないやと私は自分に言い聞かせてエレベーターに乗り込み、ちょっと気分を変えるために時音に1つ提案してみる。
幸来未「時音のお芝居見たい。」
時音「え!じゃあチケット今度持ってくる!」
幸来未「ううん。今。」
時音「今…?」
最初は嬉しそうにしていた時音だけど、すぐに困惑した表情に変わり秋空みたいだ。
そんな時音と一緒にいるのが楽しいんだけど、今はちょっと嫌なことがチラつくから何とかしてほしい。
幸来未「うん。今。何出来そう?」
私がそう聞くとエレベーターは目的の階に到着して部屋の前に着く。
時音「んー…、1番気持ちが入れやすいのはこの間やったばかりのやつ。」
幸来未「クズ男?」
時音「…うん。」
と、時音は嫌そうな顔をして顔を曇らせながら鍵を差し込む。
幸来未「時音のお芝居見たいからしてほしい。」
時音「…嫌になったら止めてね?」
幸来未「うん。分かった。」
私がそう言うと時音は目を閉じ、深い深呼吸をしてゆっくり目を開けた。
その冷たい目付きと少しトゲがある独特な雰囲気に一瞬で変わったことに私が驚いていると、扉を開けた時音は私の背中を軽く押して部屋に入れるとすぐに持っていた買い物袋を雑に置き、私に荒いキスをしながら服を脱がし始めた。
幸来未「…ここっ、げんかん。」
時音「幸来未が可愛すぎて我慢出来ないよ。」
私は時音に初めて言われた言葉に心臓をしめつけられていると、時音は少しはだけた私の手を引き、靴を脱がさないままベッドに連れていった。
環流 虹向/23:48
私は思ったより稼げなかった給料のせいで明後日の悠雪さんとのデートでいかにお金を使わないか考えながら駅に向かっていると、私の少し前をのんびりと1人歩く白金と黒髪が混ざっていてもさっとした少しだらしない髪をしている男の人に目がつく。
あんなに放置しちゃうなら黒髪に戻しちゃえばいいのにと思っていると、その人がくるっとこっちを振り向き私と目が合うと嬉しそうな笑みを浮かべた。
幸来未「…時音?」
時音「久しぶり。」
と、時音は私に駆け寄り首元が少し空いていた私に自分のマフラーを巻いた。
幸来未「稽古終わり?」
時音「仕事終わり。幸来未いるかなって探してた。」
幸来未「暇なの?」
時音「んー…。一応撮影終わったし、年末は舞台公演ないから時間はある方。」
こんなとこぶらつくより、私にメッセージを送ってくれれば一発なのに。
私はそう思いながらあの日のように時音のポケットに人差し指を入れて、帰る予定だった家から真逆にあるホテル街へ時音と一緒に足を進める。
幸来未「その髪、なんとかしないの?」
私はどうしても気になることを時音に聞いてみた。
時音「僕もしたいんだけど、黒染めしたら次染めるの大変らしいし、今回配信する短編映画が人気だったらまた撮るからこのままでって言われた。」
幸来未「…なんか、大変だね。」
時音「だね。自分が思った通りの髪型に出来ないなんて思ったことなかった。」
幸来未「どんな役になったらそんな髪色になるの?」
時音「んー…、簡単に言うとクズ男?」
時音にそんな役出来るの?と思ってしまったけれど、ぐっと喉奥にしまう。
幸来未「だからだらしない感じなんだ。」
時音「うん。わざとプリンにしたり、色ムラっぽく白金をアッシュで混ぜるのは監督さんのこだわり。」
なるほどなと私は外見の役作りに納得していると、時音は迷わずあのコンビニに入り慣れた手つきでカゴを取りおつまみコーナーにまっしぐら。
それは演じたクズ男の残骸なのかと思ってしまうほど手慣れていて、そんな役を与えた監督さんに私は腹を立てる。
時音「幸来未はしょっぱいの食べる?」
と、何も気づかない時音は初めて塩気があるものを私に勧めてきた。
幸来未「んー…、時音は?」
時音「僕はチョコと幸来未で十分。」
なんだそれ。
そんな言葉、どこで覚えたんだよ。
幸来未「あっそ。私は時音がしょっぱいから他はいらない。」
私はちょっと大きめの声で時音に言葉をぶつけて飲み物コーナーに行くと、少し焦った時音がついてきた。
やっぱりそのままがいいよ。
変なこと覚えないでほしい。
私は少し怒ってるフリをしつつ買い物を終えていつものホテルに行こうとすると、満室になったので他を渡り歩き、3軒目に見つけた怪しげに光るネオンのホテルに時音と一緒に入った。
幸来未「…いつもより高いね。」
時音「幸来未は金欠?」
幸来未「若干。」
ここ、初彼と来た場所だ。
4年以上前だったからちゃんと覚えてなかった。
しかも、1番安いとこは初彼と使った部屋とよく似てるし…。
時音「じゃあ僕が出すね。」
と、私が違うホテルを探そうと言う前に時音は1番安い部屋のボタンを押して鍵を貰ってしまった。
もうしょうがないやと私は自分に言い聞かせてエレベーターに乗り込み、ちょっと気分を変えるために時音に1つ提案してみる。
幸来未「時音のお芝居見たい。」
時音「え!じゃあチケット今度持ってくる!」
幸来未「ううん。今。」
時音「今…?」
最初は嬉しそうにしていた時音だけど、すぐに困惑した表情に変わり秋空みたいだ。
そんな時音と一緒にいるのが楽しいんだけど、今はちょっと嫌なことがチラつくから何とかしてほしい。
幸来未「うん。今。何出来そう?」
私がそう聞くとエレベーターは目的の階に到着して部屋の前に着く。
時音「んー…、1番気持ちが入れやすいのはこの間やったばかりのやつ。」
幸来未「クズ男?」
時音「…うん。」
と、時音は嫌そうな顔をして顔を曇らせながら鍵を差し込む。
幸来未「時音のお芝居見たいからしてほしい。」
時音「…嫌になったら止めてね?」
幸来未「うん。分かった。」
私がそう言うと時音は目を閉じ、深い深呼吸をしてゆっくり目を開けた。
その冷たい目付きと少しトゲがある独特な雰囲気に一瞬で変わったことに私が驚いていると、扉を開けた時音は私の背中を軽く押して部屋に入れるとすぐに持っていた買い物袋を雑に置き、私に荒いキスをしながら服を脱がし始めた。
幸来未「…ここっ、げんかん。」
時音「幸来未が可愛すぎて我慢出来ないよ。」
私は時音に初めて言われた言葉に心臓をしめつけられていると、時音は少しはだけた私の手を引き、靴を脱がさないままベッドに連れていった。
環流 虹向/23:48
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
アンコール マリアージュ
葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか?
ファーストキスは、どんな場所で?
プロポーズのシチュエーションは?
ウェディングドレスはどんなものを?
誰よりも理想を思い描き、
いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、
ある日いきなり全てを奪われてしまい…
そこから始まる恋の行方とは?
そして本当の恋とはいったい?
古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。
━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━
恋に恋する純情な真菜は、
会ったばかりの見ず知らずの相手と
結婚式を挙げるはめに…
夢に描いていたファーストキス
人生でたった一度の結婚式
憧れていたウェディングドレス
全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に
果たして本当の恋はやってくるのか?

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
エンディングノート
環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート
[主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。
けれど、そんな明人にオアシスが現れた。
2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。
11/27から19:00に更新していきます。
君と出会って
君と付き合って
君とお別れするまでが綴られている
私が書いた、もぐもぐノート
君がいる、あの時に戻りたいと思った時は
いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ
そしたらあの日、君と食べたごはんが
1番美味しかったって思い出せるから
だから、このノートにはもうペンを走らせない
これは君と私のエンディングノートだから
他の人とのもぐもぐ日記はいらないの
だけど、また
始められるように戻ってきてほしいな
私はまだ、君をあの街で待ってるよ
君のじゃない、別のお家で
君じゃない人と一緒に
Ending Song
君がドアを閉めた後 / back number
転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる