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気かぶり娘
457:07:12
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だんだんと気温が高くなってきた外に出ないようになった私は夕立が降っていることに気がつき、開けていた窓を閉めて扇風機をつける。
久しぶりにこんなに手を真っ黒にさせてまで紙に文字書いたかも。
私は60万円分の価値を作るために、夏始めになってバイトセーブし始めた時間で休んでいた小説を書き始めた。
今は3作品目の恋愛小説。
少し前に春馬くんに言ったことを本当にやるとは思わなかったなと考えていると、インターフォンが鳴った。
私は手伝いで呼んでいた春馬くんを家に招き入れてタオルを渡す。
幸来未「ごめん。もう少し遅い時間にすればよかったね。」
春馬「しょうがないよ。シャワー借りてもいい?帰りまでに乾かしたい。」
幸来未「うん。もちろん。」
私はハンガーとタオル、自分なりに大きめと思っているスウェットセットを手渡してびしょ濡れの春馬くんをバスルームに入れる。
幸来未「ピンクのシャンプーとリンス以外だったらどれ使ってもいいよ。」
あれは美容院で8000円ずつはたいて買ったからなるべく使われたくない。
どんなに付き合いが長くてもそれだけは譲れない。
春馬「はーい。気をつけるー。」
私は適当な返事を聞いてから自分の部屋に戻り、春馬くんに見せる出来上がったばかりの2作品目の小説をテーブルの上に置き、続きの作業を始める。
けれど、だいぶ垂れ流しなシャワーの音に集中をかき消されてだんだんとお腹が煮えてくる。
まあ、手伝ってくれてるし、今日もご飯奢ってくれる予定だし、このくらいは良しとしよう。
そう自分に言い聞かせて10分。
ずっと流しっぱなしだったシャワーが止まり、少ししてタオル1枚の春馬くんがハンガーにかけたスーツたちとサイズの合わなかったスウェットを持って出てきた。
春馬「シャワーありがとう。ここかけていい?」
幸来未「うん。そこが1番風当たると思う。」
私はエアコンのドライをつけてなるべく早く春馬くんのスーツが乾くよう徹底する。
春馬「これが2つ目?」
春馬くんはテーブルに置いていた私の小説に気づき、手にとってベッドに腰かけた。
幸来未「そう。そのタオル、濡れてる?」
春馬「若干。」
幸来未「…濡れるのやだからこれ使って。」
私は明日の夜分のタオルも使われて若干腹を立てながら春馬くんのそばに乾いているバスタオルをふわっと投げる。
春馬「ありがとー。もう新作書いてるの?」
と、春馬くんはふわっとタオルの風が私に当たる距離で新しいタオルを巻き、私のそばにしゃがんだ。
幸来未「うん。金持ちの娯楽では絶対なさそうな純愛ストーリー。」
春馬「いいね。西宮の偏見たっぷり詰まってそう。」
偏見っていうか、皮肉っていうか、愚痴かも。
そう言おうとしたけれど、男の春馬くんは女として生きる私の愚痴なんか理解してくれなさそうだし、理解できないから偏見と言ったのだろう。
私は今の春馬くんにはもう好意もなく、目と手だけ借りようとしたけど口もおまけでついてきちゃうのが悩みどころだなと思っていると、春馬くんは私を脚で抱き込むように挟み、その場で小説を読み始めた。
幸来未「邪魔だよ。」
春馬「ちょっと寒いから。」
幸来未「布団使っていいから。」
春馬「…はーい。」
いつからこんなだるい男になったんだろ。
私は3作品目の片思いの春馬くんを題材に書いてる小説を進めながらどうしようもない昔の思い出に浸った。
環流 虹向/23:48
久しぶりにこんなに手を真っ黒にさせてまで紙に文字書いたかも。
私は60万円分の価値を作るために、夏始めになってバイトセーブし始めた時間で休んでいた小説を書き始めた。
今は3作品目の恋愛小説。
少し前に春馬くんに言ったことを本当にやるとは思わなかったなと考えていると、インターフォンが鳴った。
私は手伝いで呼んでいた春馬くんを家に招き入れてタオルを渡す。
幸来未「ごめん。もう少し遅い時間にすればよかったね。」
春馬「しょうがないよ。シャワー借りてもいい?帰りまでに乾かしたい。」
幸来未「うん。もちろん。」
私はハンガーとタオル、自分なりに大きめと思っているスウェットセットを手渡してびしょ濡れの春馬くんをバスルームに入れる。
幸来未「ピンクのシャンプーとリンス以外だったらどれ使ってもいいよ。」
あれは美容院で8000円ずつはたいて買ったからなるべく使われたくない。
どんなに付き合いが長くてもそれだけは譲れない。
春馬「はーい。気をつけるー。」
私は適当な返事を聞いてから自分の部屋に戻り、春馬くんに見せる出来上がったばかりの2作品目の小説をテーブルの上に置き、続きの作業を始める。
けれど、だいぶ垂れ流しなシャワーの音に集中をかき消されてだんだんとお腹が煮えてくる。
まあ、手伝ってくれてるし、今日もご飯奢ってくれる予定だし、このくらいは良しとしよう。
そう自分に言い聞かせて10分。
ずっと流しっぱなしだったシャワーが止まり、少ししてタオル1枚の春馬くんがハンガーにかけたスーツたちとサイズの合わなかったスウェットを持って出てきた。
春馬「シャワーありがとう。ここかけていい?」
幸来未「うん。そこが1番風当たると思う。」
私はエアコンのドライをつけてなるべく早く春馬くんのスーツが乾くよう徹底する。
春馬「これが2つ目?」
春馬くんはテーブルに置いていた私の小説に気づき、手にとってベッドに腰かけた。
幸来未「そう。そのタオル、濡れてる?」
春馬「若干。」
幸来未「…濡れるのやだからこれ使って。」
私は明日の夜分のタオルも使われて若干腹を立てながら春馬くんのそばに乾いているバスタオルをふわっと投げる。
春馬「ありがとー。もう新作書いてるの?」
と、春馬くんはふわっとタオルの風が私に当たる距離で新しいタオルを巻き、私のそばにしゃがんだ。
幸来未「うん。金持ちの娯楽では絶対なさそうな純愛ストーリー。」
春馬「いいね。西宮の偏見たっぷり詰まってそう。」
偏見っていうか、皮肉っていうか、愚痴かも。
そう言おうとしたけれど、男の春馬くんは女として生きる私の愚痴なんか理解してくれなさそうだし、理解できないから偏見と言ったのだろう。
私は今の春馬くんにはもう好意もなく、目と手だけ借りようとしたけど口もおまけでついてきちゃうのが悩みどころだなと思っていると、春馬くんは私を脚で抱き込むように挟み、その場で小説を読み始めた。
幸来未「邪魔だよ。」
春馬「ちょっと寒いから。」
幸来未「布団使っていいから。」
春馬「…はーい。」
いつからこんなだるい男になったんだろ。
私は3作品目の片思いの春馬くんを題材に書いてる小説を進めながらどうしようもない昔の思い出に浸った。
環流 虹向/23:48
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