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環流 虹向

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キツネとイヌ

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「やったー。1番乗りー。」

私は時音と一緒にカートレースのゲームを3回戦目を終えて久しぶりのゲームセンターを楽しむ。

幸来未「時音、100円玉ある?私はもうないや。」

時音「あるけど…、どうしたの…?」

幸来未「なにが?」

時音「リップ…。よれすぎなの、気づいてないの?」

私はその言葉で焦って手の甲でキスをされたままだった唇を拭き取る。

時音「また、知り合いと呑み?」

幸来未「…うん。誘われたから。」

時音「誘われたら行くんだ。」

幸来未「仕事の付き合いだもん。」

時音「そっか…。」

久しぶりにあった時音はこの間より、肌のきめ細やかさが増していて、荒れて少し赤みがあった手もファンデをつけてるかのようにまっさらになっていた。

本当に皮膚科行ったんだ。

まあ、役者って外見大事だもんね。

幸来未「時音は今日も稽古で乗り遅れたの?」

私は財布に入っている1000円札を崩すか迷いながら時音がこの街にいる理由を聞いた。

時音「ううん。今友達と稽古場近くでルームシェアしてて映画見てたとこ。」

幸来未「…実家出たの?」

時音「出たって言っても僕と1週間分の服だけだよ。週1で帰る約束でOKしてもらった。」

幸来未「お金は?」

時音「実家に帰らない時間分、BARと映画館のスタッフ掛け持ちして稼いでるよ。」

幸来未「勉強出来てる…?」

時音「え!?…っとぉ、べ、べんきょ…は、ちょっとだけ…です。」

幸来未「…そっちじゃないよ。芝居。」

時音「あ!そっちは毎日してるっ。」

時音は顔を真っ赤にさせながら久しぶりの笑顔を見せてくれた。

幸来未「そっか。頑張ってね。」

私は時音の時間を大切にしないといけないことを自分がした質問で思い出し、もう1回戦するつもりだったカートゲームの椅子から降りる。

時音「か、帰るの?」

幸来未「映画見るのも勉強でしょ?ちゃんとやらなきゃ。」

私は財布と携帯、紙コースターをしっかり持っていることを確認してゲームセンターから出ようとすると、時音に肩を掴まれて止められた。

時音「休憩も必要だと思う。」

幸来未「…この時間は休憩じゃなくて宿泊だよ?」

時音「えっ…。」

幸来未「それでもいいなら行こ。」

私は初めて時音に身を委ねてみようと足を止めていると、悩む時音はゆっくりとゲームセンターから出てホテル街の方へ歩き始めた。

私はその時音のコートの裾を掴んでついていくと、あのコンビニに時音は入った。

時音「なに飲む?」

幸来未「…甘いの。」

時音「んー、ココア?」

幸来未「うん。あとミルクティー。」

時音「紙パックのやつ?」

幸来未「うん。」

時音「僕もこっちの甘いのが好き。」

 そう言って時音はカゴにぽんぽん飲み物とおつまみを入れてレジへ行った。

時音「今日は僕ね。僕が好きなものばっかり買ったから。」

幸来未「…分かった。」

この強引な感じ、楽だけど時音にされるとちょっとやだ。

私は自分のモヤモヤを感じながら時音と一緒にコンビニを出て、いつものホテルに入った。


環流 虹向/23:48
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