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環流 虹向

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猫ずきんちゃん

637:12:08

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なんか、変わっちゃったな。

まあ、私が変わらなすぎっていうのもあるのかも。

見た目が変わったなら中身も変わるに決まってるもんね。

変わるきっかけを作るのは自分の意識からだから中身が変わるのは当然だ。

私は春馬くんの思ったより多い自慢話を聞きながら、ご馳走してもらったホットココアを飲み、太陽と一緒に体を温める。

春馬「西宮は今何してる人?」

と、自分のことを話すのが少し疲れたのか、春馬くんは私に話題を振ってきた。

幸来未「今も書いてるよ。」

春馬「ブログ?」

幸来未「ううん。本。」

春馬「小説?」

幸来未「エッセイ風のね。」

春馬「新らしい分野にチャレンジしてるんだね。」

あ…、昔の春馬くんの笑顔だ。

私は前のおっとりくんだった春馬くんの笑顔を見れて笑みをこぼすと、春馬くんは両手で頬杖をついて私を優しく見つめてきた。

春馬「いいな、俺もしたい。」

幸来未「すればいいじゃん。」

春馬「時間ないよ。」

幸来未「作ればいいよ。」

春馬「…難しいよ。」

…そっか。

難しいよね。

時間はみんな平等にあるけど、使い方は人それぞれだもんね。

幸来未「ココアありがとう。時間取っちゃってごめんね。」

春馬「ううん、大丈夫。あのさ。もし、西宮が良かったらなんだけど…」

…やだ。

その切り返し、みんなもしてるやつ。

春馬「明日空いてたら一緒に飯行かない?」

幸来未「…なんで。」

春馬「久しぶりに短大時代の人と呑みたいなって。やっぱ予定入ってる?」

幸来未「マキとか、ユイコとかいるじゃん…。」

春馬「…懐かしっ。けど、目の前にいるのは西宮だから。」

目の前にいたら私じゃなくていいんだよね。

いい思い出のまま、春馬くんと終わりたかったよ。

幸来未「今お金カツカツなんだ。」

春馬「奢るよ。一応普通よりも給料いいんだ。」

幸来未「夜は寒いからお昼でいい?」

春馬「んー、仕事早めに終わらせるから15時でもいい?」

幸来未「…うん。」

春馬「ありがとう。楽しみ。」

その『楽しみ』はいつもお互いの新作を見せ合う時の言葉だったのにな。

やだな、時間経つの。

私は温まり過ぎた家に1人で帰り、明日食べる予定だった牛肉ステーキをフライパンで焼く。

けど、明日があるからニンニクは入れてあげられない。

だから胡椒と塩を多めに入れて濃ゆいウェルダンステーキを飾り気のない真っ白いお皿に乗せて、カット野菜とミニトマトを添える。

お米も食べたいけどお腹出ちゃうから明日が終わるまでやめとこ。

私は噛みごたえがあるお肉を1人食べながらカーテンを閉じきった部屋でスクリーンに映し出されているサブスクに新しく追加された映画を流し見する。

いつもの休日の楽しいと思えるルーティン。

体は温まってきてるし、お腹は満たされてきたのになんだか物足りない。

しかもちょっと寂しくなって帰る途中にわざわざコンビニに寄って買った、あのベリー入りのお酒も呑む始末。

これが勘違いならいいと思うけど、経験上私の未来予知が当たる確率120%。

なんでみんな私のこと1人にさせてくれないんだろ。

1人だったからこんな気持ちにならずに済んだのに。

私は濃すぎたステーキをカット野菜で味を濁しながら食べ進め、明日に備えて使いかけのバスグッズでボディメンテナンスをした。


環流 虹向/23:48
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