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猫ずきんちゃん
637:13:13
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「も、もう…時間が…。」
やることやって楽しんでるくせに、一丁前に時間気にするな。
時間過ぎたとしてもあいつのタクシー代はまだ余ってるから大丈夫。
幸来未「大丈夫。延長してもおつりくるよ。」
時音「…いや、稽古の時間があって。」
…あ、そっか。
フリーターでも時音はちゃんとやりたいことに向かって進んでるんだった。
幸来未「ごめんね。準備しよっか。」
私は時音から降りるために食べていたエクレアを口からゆっくり離し、ベッド横に座って温めていたヘアアイロンで前髪を整える。
そろそろパーマも落ちてきちゃったし、美容院行かないとダメだな。
私がヘアアイロンで巻き髪作っていると、後ろで息と脈を整えていた時音が私の隣に座った。
時音「…ごめんなさい。」
幸来未「なにが?」
時音「僕ばっかり気持ちよくなっちゃって…。」
気にすることなの?
みんなそんなものじゃん。
私はみんなのシェアツールだからそんなの気にしなくていいよ。
幸来未「いいの。勉強してきて。」
時音「…はい!してきますっ。」
いつ会うか決めてないけど。
また会うか分からないけど。
勉強してきた時音に会えるなら時間を作ってもいいかなって思う自分がいる。
幸来未「忘れ物は?」
時音「ないよ。」
幸来未「あるよ。お気に入りのオイル、忘れてたよ?」
私はさっきまでテーブルに置いてあった時音のオイルをポケットから出し、時音に渡す。
幸来未「忘れっぽいの?」
時音「失くし物はしやすい…。ありがとう。」
幸来未「うん。」
忘れっぽいなら私のこともオイルや携帯みたいに置いてけぼりにしていくんだろうな。
私は自分の気持ちが勘違いを通り越しそうになったのを抑えるためにそう言い聞かせながら、自分の持ち物も時音の持ち物も忘れていないことを確認し、2人で外に出た。
時音「…うぁ、さむっ。」
と、時音は自分のモコモコジャケットのポケットに手を入れて体を縮ませた。
幸来未「時音はどっち?」
時音「え?駅まで送ってくよ。」
幸来未「時間は?」
時音「走れば間に合うから。」
さっきから時計を1度も見てないけど、なんでそんな風に自信ありげに言っちゃうの?
時音「幸来未は今日休み?」
幸来未「うん。」
私は時音の歩幅に合わせて駅に向かっているけれど、その歩幅が思ったより小さくてゆっくりで歩いていて疲れない。
みんなについていくためにいつも早足を練習していた私にとって、とても楽に歩けるペースで喋っていても息が上がらずに済む。
今まで出会ってきた人の中で1番楽かも。
私がそう気づいてしまった時、目の前の信号が点滅し始めた。
私は1歩だけわざと遅く歩き時音の様子を見ると、時音は駆け足で横断歩道を渡ったり赤になっても平然と渡る人がいる中、しっかりと足を止めた。
時音「今日は夜に雨降るんだって。地面凍っちゃうかもね。」
と、時音はずっと見ていなかった携帯で天気を確認したのか、みんながつまらないという天気の話題を振ってきた。
幸来未「…傘、あるの?」
時音「稽古場に置き傘してるから大丈夫。」
幸来未「そっか。雪になってほしいな。」
時音「ホワイトクリスマスになるかな?」
幸来未「…なったら散歩行こっかな。」
時音「雪の日は外出たくなるよね。」
今日はクリスマスイブだけど、また夜も会おうなんて言ってこないんだ。
明日、一緒に過ごしたいってわがまま言わないんだ。
また、告白してこないんだ。
自分勝手な私は青になった信号を見て左右確認していると、その斜め上に映った時音も同じことをしていた。
…みんなは青になった瞬間渡り始めるのに。
私は人差し指だけを時音の手が入っているコートのポケットに入れ、また一緒に駅へと向かう。
幸来未「…時音は今日稽古が終わったらなにするの?」
私はちょっとだけ時音の夜が気になり聞いてみた。
時音「今日は家族とパーティする予定。」
幸来未「友達とじゃないの…?」
時音「友達とは明日する予定。」
そうなんだ。
時音の周りにはいっぱい人がいるんだね。
私がいなくてもいいんだ。
時音「じゃあここで。」
幸来未「うん。ありがと。」
私は駅前で時音を見送り冷たい家に帰ってきた。
まずは最初にこたつとオイルヒーターのスイッチをつけて、冷蔵庫の中身を確認する。
…思ったよりなんもなかった。
私は寄るか迷って結局寄らなかった家から10分の所にあるスーパーへ行き、今日と明日分のごはんを買う。
明日もめんどくさい誘いを受けたくないからバイトは休みにしたけど、暇なんだよな。
そう思っていると、私の肩をツツンと誰かが叩いてきた。
私はその指の持ち主を見上げて驚く。
幸来未「春馬くんじゃん。お久しぶり。」
船田 春馬くんは私が短大の時に映画研究という月1で映画を観に集まるだけのサークルで出会った元部長さん。
みんながやりたくない部長を引き受けてくれた春馬くんはおっとりしてる雰囲気だったけれど、今ここにいる春馬くんはかっちりスーツとホワイトモカのロングコートがよく似合う社会人になっていた。
私はこの2年で自分だけが変わってないんだなと同い年の春馬くんに気付かされていると、春馬くんは私が持っていた重いカゴを手にした。
春馬「重いでしょ?レジまで持ってくよ。」
幸来未「ありがとう。」
この間の様にまた自分の物を取られてしまい、また会話を流され続けて、私は社会人になった春馬くんと近場の公園で日向ぼっこすることになった。
環流 虹向/23:48
やることやって楽しんでるくせに、一丁前に時間気にするな。
時間過ぎたとしてもあいつのタクシー代はまだ余ってるから大丈夫。
幸来未「大丈夫。延長してもおつりくるよ。」
時音「…いや、稽古の時間があって。」
…あ、そっか。
フリーターでも時音はちゃんとやりたいことに向かって進んでるんだった。
幸来未「ごめんね。準備しよっか。」
私は時音から降りるために食べていたエクレアを口からゆっくり離し、ベッド横に座って温めていたヘアアイロンで前髪を整える。
そろそろパーマも落ちてきちゃったし、美容院行かないとダメだな。
私がヘアアイロンで巻き髪作っていると、後ろで息と脈を整えていた時音が私の隣に座った。
時音「…ごめんなさい。」
幸来未「なにが?」
時音「僕ばっかり気持ちよくなっちゃって…。」
気にすることなの?
みんなそんなものじゃん。
私はみんなのシェアツールだからそんなの気にしなくていいよ。
幸来未「いいの。勉強してきて。」
時音「…はい!してきますっ。」
いつ会うか決めてないけど。
また会うか分からないけど。
勉強してきた時音に会えるなら時間を作ってもいいかなって思う自分がいる。
幸来未「忘れ物は?」
時音「ないよ。」
幸来未「あるよ。お気に入りのオイル、忘れてたよ?」
私はさっきまでテーブルに置いてあった時音のオイルをポケットから出し、時音に渡す。
幸来未「忘れっぽいの?」
時音「失くし物はしやすい…。ありがとう。」
幸来未「うん。」
忘れっぽいなら私のこともオイルや携帯みたいに置いてけぼりにしていくんだろうな。
私は自分の気持ちが勘違いを通り越しそうになったのを抑えるためにそう言い聞かせながら、自分の持ち物も時音の持ち物も忘れていないことを確認し、2人で外に出た。
時音「…うぁ、さむっ。」
と、時音は自分のモコモコジャケットのポケットに手を入れて体を縮ませた。
幸来未「時音はどっち?」
時音「え?駅まで送ってくよ。」
幸来未「時間は?」
時音「走れば間に合うから。」
さっきから時計を1度も見てないけど、なんでそんな風に自信ありげに言っちゃうの?
時音「幸来未は今日休み?」
幸来未「うん。」
私は時音の歩幅に合わせて駅に向かっているけれど、その歩幅が思ったより小さくてゆっくりで歩いていて疲れない。
みんなについていくためにいつも早足を練習していた私にとって、とても楽に歩けるペースで喋っていても息が上がらずに済む。
今まで出会ってきた人の中で1番楽かも。
私がそう気づいてしまった時、目の前の信号が点滅し始めた。
私は1歩だけわざと遅く歩き時音の様子を見ると、時音は駆け足で横断歩道を渡ったり赤になっても平然と渡る人がいる中、しっかりと足を止めた。
時音「今日は夜に雨降るんだって。地面凍っちゃうかもね。」
と、時音はずっと見ていなかった携帯で天気を確認したのか、みんながつまらないという天気の話題を振ってきた。
幸来未「…傘、あるの?」
時音「稽古場に置き傘してるから大丈夫。」
幸来未「そっか。雪になってほしいな。」
時音「ホワイトクリスマスになるかな?」
幸来未「…なったら散歩行こっかな。」
時音「雪の日は外出たくなるよね。」
今日はクリスマスイブだけど、また夜も会おうなんて言ってこないんだ。
明日、一緒に過ごしたいってわがまま言わないんだ。
また、告白してこないんだ。
自分勝手な私は青になった信号を見て左右確認していると、その斜め上に映った時音も同じことをしていた。
…みんなは青になった瞬間渡り始めるのに。
私は人差し指だけを時音の手が入っているコートのポケットに入れ、また一緒に駅へと向かう。
幸来未「…時音は今日稽古が終わったらなにするの?」
私はちょっとだけ時音の夜が気になり聞いてみた。
時音「今日は家族とパーティする予定。」
幸来未「友達とじゃないの…?」
時音「友達とは明日する予定。」
そうなんだ。
時音の周りにはいっぱい人がいるんだね。
私がいなくてもいいんだ。
時音「じゃあここで。」
幸来未「うん。ありがと。」
私は駅前で時音を見送り冷たい家に帰ってきた。
まずは最初にこたつとオイルヒーターのスイッチをつけて、冷蔵庫の中身を確認する。
…思ったよりなんもなかった。
私は寄るか迷って結局寄らなかった家から10分の所にあるスーパーへ行き、今日と明日分のごはんを買う。
明日もめんどくさい誘いを受けたくないからバイトは休みにしたけど、暇なんだよな。
そう思っていると、私の肩をツツンと誰かが叩いてきた。
私はその指の持ち主を見上げて驚く。
幸来未「春馬くんじゃん。お久しぶり。」
船田 春馬くんは私が短大の時に映画研究という月1で映画を観に集まるだけのサークルで出会った元部長さん。
みんながやりたくない部長を引き受けてくれた春馬くんはおっとりしてる雰囲気だったけれど、今ここにいる春馬くんはかっちりスーツとホワイトモカのロングコートがよく似合う社会人になっていた。
私はこの2年で自分だけが変わってないんだなと同い年の春馬くんに気付かされていると、春馬くんは私が持っていた重いカゴを手にした。
春馬「重いでしょ?レジまで持ってくよ。」
幸来未「ありがとう。」
この間の様にまた自分の物を取られてしまい、また会話を流され続けて、私は社会人になった春馬くんと近場の公園で日向ぼっこすることになった。
環流 虹向/23:48
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