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環流 虹向

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猫ずきんちゃん

639:00:10

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呆れる…。

なんでそんなに大人数で呑みたいの?

呑んで、騒いで、暴れて…、記憶無くして嫌なことしてもお酒のせいにする。

酒は飲んでも飲まれるなって言うじゃん。

阿保と一緒に呑んだら私の時間が無駄に消費されるから嫌なんだけど。

幸来未「んー…、ちょっと予定があって…。」

私はしつこく忘年会に誘ってくるバイトリーダーの佐原 由季さはら ゆうきさんにやんわり断る。

佐原「どんな予定?もしかしてクリスマス前に滑り込みで彼氏でも出来た?」

…だるい。

出来たとしてもあなたにほうれんそう報連相するつもりはありませーん。

幸来未「違いますよ。留学に行っていた幼馴染が今年は日本で年越しを過ごすらしいので、会えなかった分たくさん遊ぼうねって約束してるんです。」

佐原「へー!どこに留学行ってたの?」

え?

話、続けるの?

幸来未「…オーストラリアです。」

佐原「じゃあ寒暖差に気をつけないとね。向こうは今真夏でしょ?」

…なんで話し広げ始めてるの?

私、もう帰りたいんだけど。

あなたの休憩時間、2分過ぎてるんだけど。

もう、仕事以外で関わりたくないんだけど。

幸来未「そうですね。向こうの友人とよく海水浴して遊んでるって言ってました。」

私は嘘話で佐原さんとの会話を何度も終えようとするけれど、佐原さんは小さい一言もすくってきて会話を伸ばし続け、それから10分が過ぎた。

幸来未「…あの、休憩時間大丈夫ですか?」

私が思い切って会話に区切りをつけようと休憩室と更衣室が兼用になっている部屋の壁掛け時計を指すと、佐原さんは肩を軽くすくませて鼻で笑った。

佐原「いいのいいの。これも仕事だし。」

仕事とは?

だらだらお話してても私には一銭も入らないし、あなたもタイムカードで休憩扱い中だからお金入ってませんよ?

幸来未「私、電車が…」

佐原「ここちゃん。」

と、私が了承していないあだ名で佐原さんは私を呼んだ。

佐原「ここちゃんと呑みに行きたいから、明後日の仕事後、空けといてよ。」

幸来未「いや…」

佐原「てか空いてるよね?この間、らんちゃんと話してるの聞いちゃったんだよね。」

…くそっ。

あのおしゃべりとの適当会話も聞いてんのかよ。

佐原「呑み代もタク代も出すから。次の日休みでのんびり溜まったドラマ見る予定ならいいじゃん。」

幸来未「…分かりました。一軒だけなら。」

佐原「うん。一軒だけね。」

一軒だけご馳走して、タクシー代じゃなくてホテル代出す気なんだろと思いつつ、私は足早に休憩室を出て仕事をしているお店の人たちに声をかけ、バイト先から出ようとすると案の定同い年の憂蘭うらんさん、通称らんちゃんに呼び止められた。

憂蘭「由季ゆうきさんは?」

幸来未「そろそろ休憩上がると思うよ。」

憂蘭「15分なのに30分休憩してたけど、なに話してたの?」

…だっるーいっ。

女の子の情報共有って1番だるいの。

だからあなたみたいに遠回しに好きな人アピールしてくる感じ、嫌いなの。

幸来未「忘年会の話だよ。行かないって伝えた。」

憂蘭「…そっか。幸来未ってなんでいつも呑み会参加しないの?」

幸来未「予定詰め詰めにしちゃうから。」

憂蘭「でも明後日はのんびりなんだ?」

幸来未「うん。相手の都合でダメになっちゃったんだ。」

憂蘭「なるほどね。お疲れ。」

幸来未「うん。お先ー。」

私はやっとのことでダンジョンを脱出し、足早に駅へと向かう。

明後日はどうしようかな。

体調不良でサボるのも手だけど、先月に好きなアーティストの新作アルバムと好きな漫画家さんの画集を買っちゃったからクレカの支払いあるんだよな…。

しかもこの間、時音とのおつまみ代とホテル代は私が払ったからいつも以上にカツカツだ。

…やっぱり出勤しないとダメか。

私は憂鬱な明後日が早く終わりますようにと、どこかの誰かにお願いしながら家に帰った。


環流 虹向/23:48
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