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君の笑顔

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「2人とも、美魔女過ぎ!」

タカヒロが若干怒りながら、相変わらず薄めのハイボールを飲む。

久寿「 俺は女じゃない。タカヒロが勝手に老けてってるだけだ。」

ユキ「うん!そうだと思う!」

ユキが俺の適当な返しに乗ってくれる。

確かにユキはいつまで経っても変わらない美貌の持ち主。

タカヒロは年相応…?
50代にしては若いがシワは確実に増えている。

看取ってやろうとは思っているが、この見た目で本当に最後までそばにいられるかどうか不安になってきた。

タカ「ユキにオススメされた美容液使ってもユキみたいにならないよー。」

ユキ「まあ、人それぞれ肌質があるからね。私は運命的いいのに出会えたのかもね。」

と、ユキが笑いながら、タカヒロに自慢する。

こんなのを最近はよく繰り返している。
にしてもユキは綺麗だなぁ…。

何十年も見ているその顔にまた惚れ直す。

タカ「2人は結婚しないの?」

ユキ「まあこんな歳だし、拾ってくれないよ。」

タカ「そんな事ないよ!20代って言ってもわかんないよ。」

久寿「そうだ。もっと自信もっていいと思う。」

タカ「久寿もだよ!なんでユキにアタックしないんだよ!」

まさかの言葉に2人して言葉を失う。

タカ「2人ともいい感じなのになんでかなー。」

ブツブツと言いながらまたタカヒロは薄めのハイボールを飲んだ。

久寿「俺は1人でいいんだ。2人はそれぞれ幸せであればそれでいい。」

ユキ「…私も同じこと思ってる。」

そう言ってユキが優しく微笑む。

その笑顔があの人と重なる。

俺は思わず涙ぐんでしまった。

タカ「え…?どうした?」

ユキ「久寿?」

あぁ…、もっとこの2人と一緒にいたい。

けど2人は人として生きている以上、歳を重ねるのは当たり前で見た目がどんなに若かろうが内臓は生きた分老いていく。

何千万と人の体を見てきたんだ。
それは確実に起こることで変わりようのないこと。

久寿「忠犬ハチ公…この間見て、思い出した。」

タカ「びっくりさせるなよー!」

ユキ「…。」

タカヒロは笑うが、ユキには見透かされているようで怖かった。

今日もユキのBARを出ようと酔ったタカヒロを介護していると、ユキが小さいメモを俺に見せる。

『タカヒロ送ったら、私の家に来て。』

と、その下に住所が書いてあった。

久寿「いいのか?」

何度もタカヒロが行きたいと言って断ってきたユキの家に今入れてくれようとしてる。

ユキは黙ったままコクっと頷き、俺の目を見てくる。
その目は真っすぐと俺を見て何か言いたそうだった。

久寿「…分かった。多分30分で着く。」

ユキ「うん。待ってる。」

俺はメモを貰い、ユキは店の締めを始めた。

俺はタカヒロを送るためタクシーを拾い、ヒカルさんに届けて、そのままユキの家に向かった。
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