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晴れた朝の微笑み
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[チリリーン]
楽しかった。
ごはん中に来たのはびっくりしたけど、とても気さくで話が合う人だった。
彼は久寿さん。
意外と気さくな方で話も合う。
関西に住んでいたけれど、仕事の都合でこちらに引っ越してきたらしい。
ごはん一緒に食べようと言われた時はびっくりしたけど、とても楽しい時間が過ごせた。
久しぶりにごはん食べてもらったな。
そういえば、陽馬さん以来作ってこなかったな。
・
・
・
もう200年くらい前になるかな。
両親が病気で早く亡くなって、1人で生きていける最低限の生計を当時は立てていた。
あの日は雪がお昼頃からふわふわ降っていて、私が街から帰る頃には風が強く吹雪になってしまっていた。
宿に泊まるべきだったけど、金銭的に余裕がなく帰るしか選択肢が見つからなかった。
その吹雪の中、帰っていると限界が来てしまったのか倒れてしまったそう。
私が目覚めたときには、暖かい布団の中にいた。
「おぉ、起きたか。体の調子はどうだ?」
「はい。この吹雪の中、助けていただきありがとうございます。」
「よかった。水炊き作ってるから待ってな。」
とても優しい笑顔の男性が鍋を具合を見ながら私の体を心配してくれる。
これが陽馬さんと出会って初めて交わした会話。
私は水炊きが出来るのを待ちながら家の様子をうかがうと、この人しか今は家にいないようだ。
ユキ「ご家族はどこかでかけているんですか?」
陽馬「ううん。私1人でここに暮らしているんだ。」
ユキ「そうなんですか…。」
なんとなく聞いてしまったが、失礼な質問だったなと後悔する。
陽馬「水炊き出来たからおいで。」
ユキ「ありがとうございます。」
体を起こし、布団から出て囲炉裏の前に座る。
とても暖かい。
ふと、目を落とすと自分の着物が男物になっていた。
服が雪でずぶ濡れになったものを着替えさせてもらったみたいだ。
恥ずかしいけれど、命には変えられないよね。
陽馬「はい。どうぞ。」
ユキ「ありがとうございます。」
水炊きが入ったお椀と箸を受け取る。
温かい。
ユキ「いただきます。」
出汁が効いている匂いがする。
ヨダレが出そう。
しっかりと煮えた白菜を口に運ぶ。
お椀の中で絡み合った、柑橘系のたれと白菜がとても合う。
ユキ「美味しいです。この柑橘系のたれは自家製ですか?」
陽馬「うん。この間取れたゆずで作ってみたら意外と美味しかったんだ。」
久しぶりに人と一緒にごはん食べたな。
そういえば、お父さんお母さんがいなくなってから一人で食べてたかも。
そんなことも気にならないぐらい忙しく毎日を過ごしてたな。
じわじわと体の中に入った水炊きが体を温めてくれている。
久しぶりに人に親切にしてもらったことがじわじわと心も温めてくれる。
大事なお父さんお母さんがいなくなった後、カラカラになってしまった心に優しくて暖かい雨が降り注いできた。
陽馬「熱かったか?」
ユキ「え?」
陽馬「目が潤んでる。」
ユキ「…美味しすぎてびっくりしているだけです。」
陽馬「そうかそうか!好きなだけ食べな。」
とても嬉しそうに笑っている陽馬さん。
優しく鈍感で真っすぐな人。
目はとても輝いていて、そんな彼に私は出会った瞬間から好きになっていたんだと思う。
温かいごはんを食べ終わると、陽馬さんから
「夜遅いし、危ないから泊っていきな。」
と言われ、甘えることにした。
布団は一つしかないみたいで陽馬さんは大丈夫と言っていたけれど、まだまだ外は吹雪いていて暖かくしないと危ないと説得した。
ちょっと気まずそうに納得してくれた陽馬さんと背中をくっつけて寝ることになった。
ユキ「おやすみなさい。」
陽馬「おやすみ。」
ひさしぶりに人肌を感じながら寝る。
冬にはいつもお母さんの布団に潜って背をくっつけて寝てたな。
私は人肌が感じることが出来る幸せを感じながらその日は眠りについた。
朝になり日差しがまぶしくて起きると、コトコトと味噌汁の香りがしてくる。
髪の毛と布団を整えて、朝食の準備をしている陽馬さんに声を掛ける。
ユキ「おはようございます。昨晩はありがとうございました。」
陽馬「おはよう!いやいや元気そうでよかったよかった。」
朝からにこやかでその笑顔が晴れた今日の朝にとても似合っていた。
陽馬「朝ごはん作ったから待っててな。」
ユキ「え!そんな…、昨日もご馳走して頂いたのに朝ごはんまではさすがに…。」
陽馬「いいんだ。私がユキさんと一緒にごはんを食べたいだけだからさ。」
そんなこと言われたら恥ずかしくて、心臓が飛び出そうだ。
陽馬「昨日干しといた着物に着替えて待ってて。そこの仕切りの裏に置いてあるよ。」
ユキ「…はい。ありがとうございます。」
そういえば着物を借りたままだった。
陽馬さんに言われた通り着替えをしようと、着物を脱ぐと左胸の少し上になにか細いもので刺されたようなかさぶたがあった。
昨日の朝着替えた時にはなかった気がするんだけど…。
気づかない間に虫に刺されたのかな?
そのかさぶたを気にしつつも自分の着物に着替えて、陽馬さんの着物を畳み自分のかばんに入れる。
ユキ「着物洗って返しますね。」
陽馬「え!いいよ。そこら辺に置いといて。」
ユキ「これくらいやらせてください。」
陽馬「洗濯物をしてもらうより、また一緒にごはんを食べてくれる方が私としては嬉しい。」
ユキ「朝ごはんですか?」
陽馬「うん。今からもこれからも君が良ければ。」
3秒くらい時間が止まった気がする。
こんなに真っすぐ素直に気持ちを表してくれる人、初めて出会った。
そんな陽馬さんは、私の目を真っすぐ見ながら優しい笑顔で答えを待っている。
これが私の初恋で最後の恋だった。
初恋とはこの時気づけなかったけど、恋に落ちた衝撃で言葉が出なかった。
陽馬「どうかな?」
陽馬さんの言葉でハッとする。
ユキ「…はい。またごはん食べに来ますね。」
陽馬「うん。いつでも待ってるよ。…そしたら、朝ごはん食べよう!」
ユキ「はい、いただきます。」
朝ごはんを食べている時間はなんだか不思議なくらいふわふわしていて、どんな会話をしたかしっかりと覚えていないけれど、とても楽しい時間だった。
この日から陽馬さんと会えることが私の中で幸せな時間になっていった。
楽しかった。
ごはん中に来たのはびっくりしたけど、とても気さくで話が合う人だった。
彼は久寿さん。
意外と気さくな方で話も合う。
関西に住んでいたけれど、仕事の都合でこちらに引っ越してきたらしい。
ごはん一緒に食べようと言われた時はびっくりしたけど、とても楽しい時間が過ごせた。
久しぶりにごはん食べてもらったな。
そういえば、陽馬さん以来作ってこなかったな。
・
・
・
もう200年くらい前になるかな。
両親が病気で早く亡くなって、1人で生きていける最低限の生計を当時は立てていた。
あの日は雪がお昼頃からふわふわ降っていて、私が街から帰る頃には風が強く吹雪になってしまっていた。
宿に泊まるべきだったけど、金銭的に余裕がなく帰るしか選択肢が見つからなかった。
その吹雪の中、帰っていると限界が来てしまったのか倒れてしまったそう。
私が目覚めたときには、暖かい布団の中にいた。
「おぉ、起きたか。体の調子はどうだ?」
「はい。この吹雪の中、助けていただきありがとうございます。」
「よかった。水炊き作ってるから待ってな。」
とても優しい笑顔の男性が鍋を具合を見ながら私の体を心配してくれる。
これが陽馬さんと出会って初めて交わした会話。
私は水炊きが出来るのを待ちながら家の様子をうかがうと、この人しか今は家にいないようだ。
ユキ「ご家族はどこかでかけているんですか?」
陽馬「ううん。私1人でここに暮らしているんだ。」
ユキ「そうなんですか…。」
なんとなく聞いてしまったが、失礼な質問だったなと後悔する。
陽馬「水炊き出来たからおいで。」
ユキ「ありがとうございます。」
体を起こし、布団から出て囲炉裏の前に座る。
とても暖かい。
ふと、目を落とすと自分の着物が男物になっていた。
服が雪でずぶ濡れになったものを着替えさせてもらったみたいだ。
恥ずかしいけれど、命には変えられないよね。
陽馬「はい。どうぞ。」
ユキ「ありがとうございます。」
水炊きが入ったお椀と箸を受け取る。
温かい。
ユキ「いただきます。」
出汁が効いている匂いがする。
ヨダレが出そう。
しっかりと煮えた白菜を口に運ぶ。
お椀の中で絡み合った、柑橘系のたれと白菜がとても合う。
ユキ「美味しいです。この柑橘系のたれは自家製ですか?」
陽馬「うん。この間取れたゆずで作ってみたら意外と美味しかったんだ。」
久しぶりに人と一緒にごはん食べたな。
そういえば、お父さんお母さんがいなくなってから一人で食べてたかも。
そんなことも気にならないぐらい忙しく毎日を過ごしてたな。
じわじわと体の中に入った水炊きが体を温めてくれている。
久しぶりに人に親切にしてもらったことがじわじわと心も温めてくれる。
大事なお父さんお母さんがいなくなった後、カラカラになってしまった心に優しくて暖かい雨が降り注いできた。
陽馬「熱かったか?」
ユキ「え?」
陽馬「目が潤んでる。」
ユキ「…美味しすぎてびっくりしているだけです。」
陽馬「そうかそうか!好きなだけ食べな。」
とても嬉しそうに笑っている陽馬さん。
優しく鈍感で真っすぐな人。
目はとても輝いていて、そんな彼に私は出会った瞬間から好きになっていたんだと思う。
温かいごはんを食べ終わると、陽馬さんから
「夜遅いし、危ないから泊っていきな。」
と言われ、甘えることにした。
布団は一つしかないみたいで陽馬さんは大丈夫と言っていたけれど、まだまだ外は吹雪いていて暖かくしないと危ないと説得した。
ちょっと気まずそうに納得してくれた陽馬さんと背中をくっつけて寝ることになった。
ユキ「おやすみなさい。」
陽馬「おやすみ。」
ひさしぶりに人肌を感じながら寝る。
冬にはいつもお母さんの布団に潜って背をくっつけて寝てたな。
私は人肌が感じることが出来る幸せを感じながらその日は眠りについた。
朝になり日差しがまぶしくて起きると、コトコトと味噌汁の香りがしてくる。
髪の毛と布団を整えて、朝食の準備をしている陽馬さんに声を掛ける。
ユキ「おはようございます。昨晩はありがとうございました。」
陽馬「おはよう!いやいや元気そうでよかったよかった。」
朝からにこやかでその笑顔が晴れた今日の朝にとても似合っていた。
陽馬「朝ごはん作ったから待っててな。」
ユキ「え!そんな…、昨日もご馳走して頂いたのに朝ごはんまではさすがに…。」
陽馬「いいんだ。私がユキさんと一緒にごはんを食べたいだけだからさ。」
そんなこと言われたら恥ずかしくて、心臓が飛び出そうだ。
陽馬「昨日干しといた着物に着替えて待ってて。そこの仕切りの裏に置いてあるよ。」
ユキ「…はい。ありがとうございます。」
そういえば着物を借りたままだった。
陽馬さんに言われた通り着替えをしようと、着物を脱ぐと左胸の少し上になにか細いもので刺されたようなかさぶたがあった。
昨日の朝着替えた時にはなかった気がするんだけど…。
気づかない間に虫に刺されたのかな?
そのかさぶたを気にしつつも自分の着物に着替えて、陽馬さんの着物を畳み自分のかばんに入れる。
ユキ「着物洗って返しますね。」
陽馬「え!いいよ。そこら辺に置いといて。」
ユキ「これくらいやらせてください。」
陽馬「洗濯物をしてもらうより、また一緒にごはんを食べてくれる方が私としては嬉しい。」
ユキ「朝ごはんですか?」
陽馬「うん。今からもこれからも君が良ければ。」
3秒くらい時間が止まった気がする。
こんなに真っすぐ素直に気持ちを表してくれる人、初めて出会った。
そんな陽馬さんは、私の目を真っすぐ見ながら優しい笑顔で答えを待っている。
これが私の初恋で最後の恋だった。
初恋とはこの時気づけなかったけど、恋に落ちた衝撃で言葉が出なかった。
陽馬「どうかな?」
陽馬さんの言葉でハッとする。
ユキ「…はい。またごはん食べに来ますね。」
陽馬「うん。いつでも待ってるよ。…そしたら、朝ごはん食べよう!」
ユキ「はい、いただきます。」
朝ごはんを食べている時間はなんだか不思議なくらいふわふわしていて、どんな会話をしたかしっかりと覚えていないけれど、とても楽しい時間だった。
この日から陽馬さんと会えることが私の中で幸せな時間になっていった。
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