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E.I.
狭心
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「ありがとうございます。」
私は学校案内をしてくれた学生さんにお礼を言い、パンフレットや特典が入っている紙袋を腕の中に抱えている世月くんと一緒に玄関へ向かう。
世月「入りたい。」
奏乃「お兄さんたちに相談してみるよ。」
この会話は今日で23回目。
それほど世月くんはこの学校が気に入ったらしく、ずっと目を輝かせて校内見学をしていた。
奏乃「お昼ご飯食べる?それともペットショップ先に行く?」
世月「ペットショップ。」
と、世月くんは若干食い気味でペットショップを選んだので私たちは校門前で待機していた車に乗り、ナビに登録してもらったペットショップまで走ってもらう。
奏乃「新しい友達に会えるといいね。」
世月「そんなの入学出来るかも分からないのに言うな。」
私はちょっと話がずれている世月くんに改めてワンちゃんの友達がと付け加えようとすると、すぐにペットショップについてしまった。
世月「奏乃は何色が好き?」
奏乃「白かな。」
世月「へー…。ネックレスなら?」
奏乃「んー、肌はゴールドが合うけど好きなのはピンクの方かな。」
世月「そっか。」
私の好きな色を聞き終えた世月くんはやっぱりご機嫌が続いてるらしく、私の手を引いてペットショップに入ると奥にある友達候補がいっぱいるブースには行かず、先に首輪を見始めた。
世月「んー…、ちょっときついかな…。」
と、世月くんは大型犬用の首輪を少し伸ばすように動かし、私に見せてくる。
奏乃「こっちじゃないの?」
私は子犬か子猫から分からないけれど、ここにいる子には合わない首輪ばかりを手に取る世月くんにブレスレットみたいな首輪を1つ見せる。
世月「…あ。」
小型犬用の首輪を見た世月くんは何かを閃いたかのように目を見開き、初めて私の前で笑顔を見せてくれた。
その笑顔は真夜中にひとりで静かに海辺を照らす灯台のようで私は何故か胸が締め付けられた。
世月「奏乃がいいなって思うの選んで。俺もそうするから。」
奏乃「…うん。分かった。」
初めて見る笑顔に気を取られていた私は無理矢理目を逸らし、自分が良いと思った白レースに鈴と赤い紐のリボンが付いている可愛らしい首輪を選んで世月くんの元へ戻った。
奏乃「選んだよ。」
世月「こっちとこっち、どっちがいい?」
と、鎖の首輪と黒革裏に白があるツートンの首輪を世月くんは見せてきた。
奏乃「黒の方が痛くなさそう。」
私は鎖で毛が巻き込まれたりして肌が痛まないよう未来の友達のために選ぶと世月くんは一度頷いてツートンの首輪だけを手に持ち、レジへに行く。
世月「これ。」
そう言って世月くんが名刺のようなものをレジにいた店員さんに投げて渡すと、店員さんは少し慌ただしく裏へと走っていった。
奏乃「これって言って投げるものじゃないよ。しかも、由月さんの名刺じゃん。」
私は投げ出されたままの名刺をコイントレーに置き直し、何かを頼んだ世月くんと店員さんを待っていると長方形に長くて大きな箱を店員さんが持って帰ってきた。
「こちらご注文を受けていたものです。」
そう言って店員さんが平たい箱の蓋を取ると、そこには細身の鎖で出来たチェーン状のリードがシルバー、ゴールド、ピンクゴールドの3つが一直線で綺麗な平行線を描いていた。
世月「全部ちょうだい。」
そう言いながら世月くんはピンクゴールドのリードを手に取り、自分が持っていた首輪に繋げる。
世月「奏乃のも。」
奏乃「え?はい。」
私は自分の手に持っていた首輪を渡すと世月くんは持ち手と思われる場所と沿うようにレースの首輪を結んだ。
世月「請求書、後で送っといて。」
そう言うと世月くんは会計もせず、手に持っていた商品と包まれた商品を勝手に取って店を出た。
奏乃「…え、えっと、いいの?レジ通してないのあるよ?」
世月「いいの。だいふくの時と一緒だから。」
奏乃「ここ知ってるの?」
世月「知ってる。チェーン店だからそこら辺にあるじゃん。」
奏乃「チェーン店だからってああいうの出来ないと思うよ?」
世月「出来るから追いかけてこないんじゃん。」
と、世月くんはお店のガラス扉の向こうを指し、店員さんが私たちを泥棒扱いしないことを見せつける。
奏乃「そうなんだ…。さすがだね…。」
私は双葉グループの大きさをまた知り、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら車に乗り込む。
すると、車に乗った世月くんは私が選んだレースの首輪を自分の腕につけた。
世月「奏乃、髪の毛あげて。」
奏乃「うん…?」
私は世月くんに言われた通り、ロングヘアをまとめ上げると世月くんは大型犬用の首輪を私の首に少しきつめにつけた。
奏乃「えっと…」
世月「お風呂以外はつけるの絶対。だいふくは絶対自分で取らなかったよ。」
奏乃「世月くんと一緒にいられない時も…?」
世月「ずっと一緒。一緒にいない時なんてないって最初に言ったじゃん。」
奏乃「え…、でも…。家事とか勉強とか仕事とか…、お互い色々用事あるよ?」
世月「一緒なの。自分から外したら今度は包丁投げつけてやるから。」
そう言った世月くんはチェーンのリードを自分の手に巻きつけて私の全てを自分のそばへ近づける。
世月「次裏切ったら死ぬより怖いことするから。絶対裏切らない約束して。」
奏乃「裏切ってないけどするよ。」
私は世月くんのおでこにキスをして改めて双葉グループの跡継ぎを守る契約を結んだ。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
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世月「入りたい。」
奏乃「お兄さんたちに相談してみるよ。」
この会話は今日で23回目。
それほど世月くんはこの学校が気に入ったらしく、ずっと目を輝かせて校内見学をしていた。
奏乃「お昼ご飯食べる?それともペットショップ先に行く?」
世月「ペットショップ。」
と、世月くんは若干食い気味でペットショップを選んだので私たちは校門前で待機していた車に乗り、ナビに登録してもらったペットショップまで走ってもらう。
奏乃「新しい友達に会えるといいね。」
世月「そんなの入学出来るかも分からないのに言うな。」
私はちょっと話がずれている世月くんに改めてワンちゃんの友達がと付け加えようとすると、すぐにペットショップについてしまった。
世月「奏乃は何色が好き?」
奏乃「白かな。」
世月「へー…。ネックレスなら?」
奏乃「んー、肌はゴールドが合うけど好きなのはピンクの方かな。」
世月「そっか。」
私の好きな色を聞き終えた世月くんはやっぱりご機嫌が続いてるらしく、私の手を引いてペットショップに入ると奥にある友達候補がいっぱいるブースには行かず、先に首輪を見始めた。
世月「んー…、ちょっときついかな…。」
と、世月くんは大型犬用の首輪を少し伸ばすように動かし、私に見せてくる。
奏乃「こっちじゃないの?」
私は子犬か子猫から分からないけれど、ここにいる子には合わない首輪ばかりを手に取る世月くんにブレスレットみたいな首輪を1つ見せる。
世月「…あ。」
小型犬用の首輪を見た世月くんは何かを閃いたかのように目を見開き、初めて私の前で笑顔を見せてくれた。
その笑顔は真夜中にひとりで静かに海辺を照らす灯台のようで私は何故か胸が締め付けられた。
世月「奏乃がいいなって思うの選んで。俺もそうするから。」
奏乃「…うん。分かった。」
初めて見る笑顔に気を取られていた私は無理矢理目を逸らし、自分が良いと思った白レースに鈴と赤い紐のリボンが付いている可愛らしい首輪を選んで世月くんの元へ戻った。
奏乃「選んだよ。」
世月「こっちとこっち、どっちがいい?」
と、鎖の首輪と黒革裏に白があるツートンの首輪を世月くんは見せてきた。
奏乃「黒の方が痛くなさそう。」
私は鎖で毛が巻き込まれたりして肌が痛まないよう未来の友達のために選ぶと世月くんは一度頷いてツートンの首輪だけを手に持ち、レジへに行く。
世月「これ。」
そう言って世月くんが名刺のようなものをレジにいた店員さんに投げて渡すと、店員さんは少し慌ただしく裏へと走っていった。
奏乃「これって言って投げるものじゃないよ。しかも、由月さんの名刺じゃん。」
私は投げ出されたままの名刺をコイントレーに置き直し、何かを頼んだ世月くんと店員さんを待っていると長方形に長くて大きな箱を店員さんが持って帰ってきた。
「こちらご注文を受けていたものです。」
そう言って店員さんが平たい箱の蓋を取ると、そこには細身の鎖で出来たチェーン状のリードがシルバー、ゴールド、ピンクゴールドの3つが一直線で綺麗な平行線を描いていた。
世月「全部ちょうだい。」
そう言いながら世月くんはピンクゴールドのリードを手に取り、自分が持っていた首輪に繋げる。
世月「奏乃のも。」
奏乃「え?はい。」
私は自分の手に持っていた首輪を渡すと世月くんは持ち手と思われる場所と沿うようにレースの首輪を結んだ。
世月「請求書、後で送っといて。」
そう言うと世月くんは会計もせず、手に持っていた商品と包まれた商品を勝手に取って店を出た。
奏乃「…え、えっと、いいの?レジ通してないのあるよ?」
世月「いいの。だいふくの時と一緒だから。」
奏乃「ここ知ってるの?」
世月「知ってる。チェーン店だからそこら辺にあるじゃん。」
奏乃「チェーン店だからってああいうの出来ないと思うよ?」
世月「出来るから追いかけてこないんじゃん。」
と、世月くんはお店のガラス扉の向こうを指し、店員さんが私たちを泥棒扱いしないことを見せつける。
奏乃「そうなんだ…。さすがだね…。」
私は双葉グループの大きさをまた知り、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら車に乗り込む。
すると、車に乗った世月くんは私が選んだレースの首輪を自分の腕につけた。
世月「奏乃、髪の毛あげて。」
奏乃「うん…?」
私は世月くんに言われた通り、ロングヘアをまとめ上げると世月くんは大型犬用の首輪を私の首に少しきつめにつけた。
奏乃「えっと…」
世月「お風呂以外はつけるの絶対。だいふくは絶対自分で取らなかったよ。」
奏乃「世月くんと一緒にいられない時も…?」
世月「ずっと一緒。一緒にいない時なんてないって最初に言ったじゃん。」
奏乃「え…、でも…。家事とか勉強とか仕事とか…、お互い色々用事あるよ?」
世月「一緒なの。自分から外したら今度は包丁投げつけてやるから。」
そう言った世月くんはチェーンのリードを自分の手に巻きつけて私の全てを自分のそばへ近づける。
世月「次裏切ったら死ぬより怖いことするから。絶対裏切らない約束して。」
奏乃「裏切ってないけどするよ。」
私は世月くんのおでこにキスをして改めて双葉グループの跡継ぎを守る契約を結んだ。
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