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B.C.
若死
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今日1日の仕事もなんとか終えられた私は仕事終わりの由月さんを2階の広間で待ちながらうたた寝していると、首が氷のストールを巻かれたように冷やされ、心臓の痛みで飛び起きると目の前には笑顔の睦さんがいた。
睦「やーちゃん、またカイロ用意してくれたんだ。」
と、睦さんは私の首を締め上げながらまた体温を高めようとするので私はまだ自由だった足2つで蹴飛ばし、離れてもらった。
奏乃「私はカイロじゃないです。由月さんに用があってここにいるんです。」
睦「由月?今日は帰ってこないって言ってたよ?」
奏乃「…え?じゃあなんでここにいるんですか?」
睦さんがいる時はいつも由月さんがいるし、この家の鍵は由月さんと世月くんしか持ってないと聞いている。
だからインターフォンを鳴らさない限り睦さんは入ってこれないはずなのになんでここにいるの?
私はさらに怖くなった睦さんから逃げるように階段を駆け下りると、その下にはいつものようにワインとグラスを持った由月さんが立っていた。
奏乃「あれ…?おかえりなさい。」
由月「あ、今日もお疲れ様です。奏乃さんも呑みますか?」
と、由月さんは仕事終わりなのにも関わらず善人モードだったので私は思わず首を傾げる。
由月「お疲れならまた今度呑みましょう。」
そう言うと由月さんは階段に1歩足をかけたので私は急いでポケットにずっと入れていた手紙を差し出す。
奏乃「サンタさんに送ってもらえますか?」
由月「…え?」
奏乃「世月くんの欲しいものが書かれてるんです。サンタさんの住所を書いて頂ければ私がポストに出してきます。」
私がそう言うと由月さんは数秒固まり、まっすぐ目を見る私から目を背けた。
由月「うちはキリスト教じゃないので。」
そう言って由月さんは小さなため息をついて私と少し話すために誰もいないキッチンに移った。
奏乃「…私の家もそうですけど、クリスマス会はしてました。」
由月「うちは毎日を同じ日にしています。食事や顔がちょっと違うだけでイベントごとなんかはやらないんです。」
奏乃「誕生日会とかもですか…?」
由月「当たり前でしょう…?なんで毎回毎回産み落とされてしまった日を祝うんですか。」
と、由月さんは若干怒っている口調で私の知らない常識を押し付けてきた。
奏乃「だって…、お誕生日っておめでたいじゃないですか…。」
由月「どこが?何がめでたくてみんな祝ってるんですか?」
奏乃「人として無事1年を生きたお祝いとこれからの1年をいい年にしようっていう節目のためにするんです。」
由月「誰にも必要とされていない人間がお祝いされるべき存在だと思います?」
奏乃「……誰のことを言ってるんですか?」
私は自分のことを言われてる気がして少し胸が痛んだけれど由月さんは私とは目を逸らしたままそう言い、少し上にある食品棚を見て誰かを思い出しているようだった。
由月「この家には祝われるべき人間はいません。無事生きたお祝いをするなら俺たちは毎日祝杯をあげてますよ。」
そう言って由月さんは私が持っていた手紙をゴミ箱に捨てて叫び声が聞こえ始めた2階に行ってしまった。
住所を聞き出せなかった私は今年も世月くんにはサンタさんのプレゼントがやってこなさそうなので、ゴミ箱から手紙を拾い上げ、願い事の効力が消えてしまうけれど手紙の中身を見てみることにした。
すると中には何時間も考えて書いてたはずの手紙には2文字だけしかない上に難題の内容だったので私は思わず声を漏らして驚いてしまう。
『心臓』
と、世月くんの字で書かれた欲しいものは私もこの世で生きている他の人も持っているものだったけれど、どうやったって渡せないものだった。
きっと世月くんは体が悪くてドナーを探してる最中でお兄さんはいろんな仕事で医療費を集めてるんだと気づいた私は明日から健康に良いことを世月くんと一緒にしていくことに決めた。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
睦「やーちゃん、またカイロ用意してくれたんだ。」
と、睦さんは私の首を締め上げながらまた体温を高めようとするので私はまだ自由だった足2つで蹴飛ばし、離れてもらった。
奏乃「私はカイロじゃないです。由月さんに用があってここにいるんです。」
睦「由月?今日は帰ってこないって言ってたよ?」
奏乃「…え?じゃあなんでここにいるんですか?」
睦さんがいる時はいつも由月さんがいるし、この家の鍵は由月さんと世月くんしか持ってないと聞いている。
だからインターフォンを鳴らさない限り睦さんは入ってこれないはずなのになんでここにいるの?
私はさらに怖くなった睦さんから逃げるように階段を駆け下りると、その下にはいつものようにワインとグラスを持った由月さんが立っていた。
奏乃「あれ…?おかえりなさい。」
由月「あ、今日もお疲れ様です。奏乃さんも呑みますか?」
と、由月さんは仕事終わりなのにも関わらず善人モードだったので私は思わず首を傾げる。
由月「お疲れならまた今度呑みましょう。」
そう言うと由月さんは階段に1歩足をかけたので私は急いでポケットにずっと入れていた手紙を差し出す。
奏乃「サンタさんに送ってもらえますか?」
由月「…え?」
奏乃「世月くんの欲しいものが書かれてるんです。サンタさんの住所を書いて頂ければ私がポストに出してきます。」
私がそう言うと由月さんは数秒固まり、まっすぐ目を見る私から目を背けた。
由月「うちはキリスト教じゃないので。」
そう言って由月さんは小さなため息をついて私と少し話すために誰もいないキッチンに移った。
奏乃「…私の家もそうですけど、クリスマス会はしてました。」
由月「うちは毎日を同じ日にしています。食事や顔がちょっと違うだけでイベントごとなんかはやらないんです。」
奏乃「誕生日会とかもですか…?」
由月「当たり前でしょう…?なんで毎回毎回産み落とされてしまった日を祝うんですか。」
と、由月さんは若干怒っている口調で私の知らない常識を押し付けてきた。
奏乃「だって…、お誕生日っておめでたいじゃないですか…。」
由月「どこが?何がめでたくてみんな祝ってるんですか?」
奏乃「人として無事1年を生きたお祝いとこれからの1年をいい年にしようっていう節目のためにするんです。」
由月「誰にも必要とされていない人間がお祝いされるべき存在だと思います?」
奏乃「……誰のことを言ってるんですか?」
私は自分のことを言われてる気がして少し胸が痛んだけれど由月さんは私とは目を逸らしたままそう言い、少し上にある食品棚を見て誰かを思い出しているようだった。
由月「この家には祝われるべき人間はいません。無事生きたお祝いをするなら俺たちは毎日祝杯をあげてますよ。」
そう言って由月さんは私が持っていた手紙をゴミ箱に捨てて叫び声が聞こえ始めた2階に行ってしまった。
住所を聞き出せなかった私は今年も世月くんにはサンタさんのプレゼントがやってこなさそうなので、ゴミ箱から手紙を拾い上げ、願い事の効力が消えてしまうけれど手紙の中身を見てみることにした。
すると中には何時間も考えて書いてたはずの手紙には2文字だけしかない上に難題の内容だったので私は思わず声を漏らして驚いてしまう。
『心臓』
と、世月くんの字で書かれた欲しいものは私もこの世で生きている他の人も持っているものだったけれど、どうやったって渡せないものだった。
きっと世月くんは体が悪くてドナーを探してる最中でお兄さんはいろんな仕事で医療費を集めてるんだと気づいた私は明日から健康に良いことを世月くんと一緒にしていくことに決めた。
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