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環流 虹向

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B.C.

窒死

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アルコールが大量に巡っている火照った体を見せるよう、薄暗くて硬い簡易ベッドがある小部屋で片手にカメラを持った由月さんは私に指示をしてくる。

けど、もう誰にも私の体にレンズを向けてほしくなかったので、服を脱ぐことを拒否していると由月さんが先にパンツ1枚だけになった。

由月「研修。奏乃は処女?」

奏乃「…いえ。」

由月「攻め方は知ってる?」

奏乃「ある程度は…。」

由月「やってみて。」

今さっき出会ったばっかりだけど、この人は私の好きな人。

そう自分に言い聞かせて、目にかかる邪魔そうな前髪も、私よりもきめ細かい白い肌も、ライチの味がするベタつく唇の端に出来た小さな切り傷も、愛おしいと思い込みながら自分の唇と指先で由月さんの吐息が漏れる場所を探していると、唇が脇に触れようとした瞬間頭を掴まれて由月さんの体から離された。

由月「…舐めて。」

と、由月さんは布ごしにずっと触れられていた自分の排泄器を光が差さない目で指し、指示してきた。

私はそのまま顔を向かわせずにお気に入りでお高めのワンピースを無駄に汚してクリーニング代を払わないよう服を脱ぎ、下着姿になって由月さんのパンツも脱がすと活きが良い魚肉ソーセージが飛び起きてきた。

奏乃「匂いが…」

由月「仕事で3日風呂入ってない。」

そう私に教えた由月さんは私の頭をがっちり掴むと、きつい匂いで思わず緩んでしまった私の口で掃除をするように上下に動かす。

その動きで私の頭と胃がさらに酔い、いつ食べたかも覚えていない固形物を胃から食道へ流れて口の中に戻すと思ったよりも食べていたらしく、由月さんの排泄と共に私も体の中にあったものを全て出してしまった。

奏乃「ご、ごめ…」

「新しい人?」

嘔吐をしてしまった私を上から蔑む由月さんに扉をノックしないで入ってきたまだ幼い音が混じる男っぽい声が話しかけてきた。

由月「…研修中。何の用?」

と、由月さんは近場にあったタオルで嘔吐物を拭き取りながら不機嫌そうに私の後ろにいる人と話し始める。

「なにそれ。ゲロ?」

由月「こいつが酔いすぎてゲロった。」

奏乃「…すいません。」

私は自分の口を拭く前に由月さんの体に落とした嘔吐物を拭こうと、近くにあったタオルに手を伸ばすと私よりも少し小さくて華奢な手が同じタオルを掴んだ。

「ブスじゃないじゃん。珍し。」

と、私の手からタオルを取り上げた幼い顔をしている中学生くらいの男の子は私の口元を拭きながら顔をじっと見てくる。

由月「いい歳の女なのに貯金ないから働くことになった。」

「へー、何歳?」

奏乃「24歳…。」

「じゃあ、俺と10個差じゃん。」

そう言いながら男の子は私の胸元に飛び散っていた由月さんの排泄物も拭き取ると、私の手を握った。

「今日から俺のお母さんね。」

奏乃「…え?」

「ちょ、ちょっと待って…!」

と、私の背後にある扉の向こうでずっと身を潜めていた女性が男の子の言葉を聞いて焦り出す。

「私がお母さんだって世月よづきくん言ってくれたじゃん!」

世月「お前、つまらないもん。兄ちゃんたちにあげる。」

由月「元々俺のもんだし、俺もいらない。」

世月「じゃあ強制的に会長部屋じゃん。」

由月「連絡入れとくか。」

「…嫌だ!」

女性は泣き叫びながら私に飛びかかり、爪を立てながら私の首を絞めてきた。

奏乃「…やめ、て!」

私はこれ以上他人に自分の体を傷つけられたくなくて、思いっきり蹴飛ばすと女性は頭から床に落ちてそのまま動かなくなった。

由月「それだけ力があるなら今までの世話役よりはまともかもな。」

奏乃「…世話役?」

世月「俺のお母さん役をするってこと。俺のこと、全力で世話して守んの。」

そう教えてくれた世月くんは私を立ち上がらせて、ワンピースを着させてくれた。

世月「お母さんの名前は?」

奏乃「…青葉 奏乃あおば かなの。」

世月「俺は双葉 世月ふたば よづき。仕事は?」

奏乃「……今日、なくなりました。」

私がそう言うと由月さんは狂ったように笑い、世月くんは一点を見つめて何かを考え始める。

世月「1ヶ月、20はどう?」

と、世月くんは由月さんと目を合わせてそう質問した。

由月「5。」

世月「18。」

由月「7。」

世月「16。」

由月「8。」

世月「…12。」

由月「10。」

2人で数の交渉をすると世月くんはため息をつき、私を少し見上げるように目を合わせてきた。

世月「家賃光熱費0の3食寝床付きで1ヶ月10万の家政婦として働かない?」

奏乃「…どんな家?」

世月「俺の家。ワンルーム。」

ワンルームで家賃も食事も寝床も確保されている上に10万。

隣にいる由月さんの分身のような子と一緒に暮らすことになるけど、仕事がなくて今すぐにでも風俗で働かされそうな私は首を縦に振るしか選択肢がなかった。

奏乃「……働かせてください。」

世月「じゃあ、決まり。奏乃は今日から俺のお母さんね。」

そう言って世月くんは契約を交わすように私と手を繋ぎ、しっかり握ると家へ案内すると言って由月さんから引き離してくれた。


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