2 / 36
B.C.
中毒死
しおりを挟む
久しぶりに来た私の仕事場だったデスクにはたったひとつの段ボールの中に適当に詰め込まれた文房具とお気に入りだったマグ、それと宛名不明の汚らしい文字がいっぱい書いてある私宛のクレームが毎日のタスクを書くはずだった付箋を勝手に使われ、無造作に投げ込まれていた。
それを見た私は乱雑に入れられたクレームだけを段ボールの中から捨てて、自分の物だけを持ち会釈もせずにエレベーターへ乗り込むと私の恋人だった人が携帯に夢中のまま一緒に乗ってきた。
奏乃「…野上さん。」
私がエレベーター端で扉を閉めるボタンを押しながらそう声をかけると、野上さんは私を見て少し驚いた顔をしたけれど平然とした様子で声を発した。
野上「部外者が話しかけるな。」
と、もう私がこの会社の者ではないと知ってる野上さんはそう言葉を吐き捨てて、エレベーターが降下していく階数を映し出している液晶画面を見上げた。
奏乃「なんで…、動画アップしたんですか…。」
野上「なんの話だ。俺は何も知らない。」
奏乃「嘘です。私のフェラ動画に野上さんの足の付け根にある可愛いホクロが映ってます。」
野上「俺の体にホクロなんてない。」
奏乃「…右まぶたの奥にひとつ。首にふたつ。背中にみっつ。お尻にひとつ。左脚の付け根にひとつ。袋にひとつ。右脚にふたつあります。」
野上「気持ちが悪い。」
そう言って野上さんは目的階とは程遠い次に降りる階のボタンを押したので、私はそのボタンを長押しして取り消す。
奏乃「私たち、付き合ってたのになんであんなことしたんですか?」
野上「付き合ってない。何回言えば分かるんだ。」
奏乃「付き合ってないのに抱くんですか?」
野上「そういうことは誰にでもあるだろ?」
奏乃「私はないです。」
野上「お前の思い違いだ。もう話しかけるな。」
そう私を拒絶して目的階に着いたエレベーターから1番に出る野上さんの頭に私はマグを投げつけようとしたけれど、その脇を通り抜けて誰もいない地面で割れてしまった。
野上「…証拠は監視カメラに残ってる。終わったな、お前。」
奏乃「私たちは終わってない。」
野上「お前は死んでんだよ。この会社でも、この社会でも、死人同然だ。」
奏乃「私は生きてる…!」
野上「あのカップを投げた瞬間、お前はこの世でまともに生きる術を失った。だから死人なんだ。」
と、私を哀れむでも蔑むでもない野上さんは腹から声を出し、私から逃げ惑うように脚を揺らめかせて音を聞き付けてやってきた警備員の背中に立ち、私に指さす。
野上「助けてください…っ。あいつがあのカップを投げてきたんです。」
野上さんは警備員を指先ひとつで操り、私を会社の外へ追い出した。
私は追い出された時に擦りむいた膝と地面に落とした文具をしまい、そのまま最後の通勤電車に乗って家に帰り、自分を生き返させるための準備をして電車で30分の繁華街へと向かった。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
それを見た私は乱雑に入れられたクレームだけを段ボールの中から捨てて、自分の物だけを持ち会釈もせずにエレベーターへ乗り込むと私の恋人だった人が携帯に夢中のまま一緒に乗ってきた。
奏乃「…野上さん。」
私がエレベーター端で扉を閉めるボタンを押しながらそう声をかけると、野上さんは私を見て少し驚いた顔をしたけれど平然とした様子で声を発した。
野上「部外者が話しかけるな。」
と、もう私がこの会社の者ではないと知ってる野上さんはそう言葉を吐き捨てて、エレベーターが降下していく階数を映し出している液晶画面を見上げた。
奏乃「なんで…、動画アップしたんですか…。」
野上「なんの話だ。俺は何も知らない。」
奏乃「嘘です。私のフェラ動画に野上さんの足の付け根にある可愛いホクロが映ってます。」
野上「俺の体にホクロなんてない。」
奏乃「…右まぶたの奥にひとつ。首にふたつ。背中にみっつ。お尻にひとつ。左脚の付け根にひとつ。袋にひとつ。右脚にふたつあります。」
野上「気持ちが悪い。」
そう言って野上さんは目的階とは程遠い次に降りる階のボタンを押したので、私はそのボタンを長押しして取り消す。
奏乃「私たち、付き合ってたのになんであんなことしたんですか?」
野上「付き合ってない。何回言えば分かるんだ。」
奏乃「付き合ってないのに抱くんですか?」
野上「そういうことは誰にでもあるだろ?」
奏乃「私はないです。」
野上「お前の思い違いだ。もう話しかけるな。」
そう私を拒絶して目的階に着いたエレベーターから1番に出る野上さんの頭に私はマグを投げつけようとしたけれど、その脇を通り抜けて誰もいない地面で割れてしまった。
野上「…証拠は監視カメラに残ってる。終わったな、お前。」
奏乃「私たちは終わってない。」
野上「お前は死んでんだよ。この会社でも、この社会でも、死人同然だ。」
奏乃「私は生きてる…!」
野上「あのカップを投げた瞬間、お前はこの世でまともに生きる術を失った。だから死人なんだ。」
と、私を哀れむでも蔑むでもない野上さんは腹から声を出し、私から逃げ惑うように脚を揺らめかせて音を聞き付けてやってきた警備員の背中に立ち、私に指さす。
野上「助けてください…っ。あいつがあのカップを投げてきたんです。」
野上さんは警備員を指先ひとつで操り、私を会社の外へ追い出した。
私は追い出された時に擦りむいた膝と地面に落とした文具をしまい、そのまま最後の通勤電車に乗って家に帰り、自分を生き返させるための準備をして電車で30分の繁華街へと向かった。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます
下菊みこと
恋愛
私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。
見知らぬ男に監禁されています
月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。
――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。
メリバ風味のバッドエンドです。
2023.3.31 ifストーリー追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる